身辺
大地はことばをもたない。
春になって 萌えでる草 咲き出す花は大地のことばであろうが
寒いさなかの今 萌えいずる時を待つ命を護って
苦闘している辛さを語ろうとするとき
・・・ 何であらわしたらいいのか。
それが ・・・ 霜だったのだ。
霜は 大地の汗かもしれない。
先に ( 気凛 1.大地 ) 荒涼といったが ・・・
これは 今や冬の景色ではなくて
物質が暴威をふるい
人間さえも ・・・ 間に合う 合わぬで測られる
物質になり終わった現代の世相そのものが
・・・ 荒涼ではないか。
大地に命を感じ 大地に心を見た彼 ( 高見氏 ) こそは
・・・ 人間らしい人間だった。
彼の短い詩は
大地が身をしぼって出した霜のような
・・・ きびしさと美しさをもっている。
( 再掲 )
霜 ( しも )
八木 重吉
地はうつくしい気持をはりきって
耐えていた
その気持を草にも花にも
吐けなかった
とうとう肉をみせるように
はげしい霜をだした