goo blog サービス終了のお知らせ 

超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

科学と悪霊を語る

2006-12-17 | 読書ガイド
96番目には、久しぶりに懐疑論の本を。

●カール・セーガン『科学と悪霊を語る』青木薫訳、新潮社(1997)

著者のセーガンは宇宙物理学者で、科学の啓蒙活動で数々の賞を受賞し
日本でもかなり知名度が高かった。本書は彼の最後の著作であり、翻訳は
亡くなった後すぐの出版となった。サイコップの重要メンバーでもあった。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/1-4.htm

第12章のトンデモ話検出キットが役に立つ。次のような議論は疑えとのこと。
 説でなく人に関する論証/そうじゃないと具合が悪い式の論証/無知に訴える
/手前勝手の議論/論点回避/観測結果の選り好み/統計の誤解/無定見
/前提とつながらない結論/因果関係のこじつけ/無意味な問い/真ん中の
排除/相関と因果の混同/架空の論敵に吠える/証拠隠し/逃げ口上

科学的方法論のエッセンスを具体的な例で学べる良書である。超心理学自体は
すでにサイコップの鉾先から外れているから、セーガンの批判対象ではないと
思う。どこかにガンツフェルト法と乱数発生器の一連の実験については一目おく
という記述があったように思うのだが、今見た限りでは見つからない。記述場所
がわかる方、ご一報ください。

英国心霊主義の抬頭

2006-12-16 | 読書ガイド
95番目は、心霊研究の黄金期の社会文化背景を描く書。

●ジャネット・オッペンハイム『英国心霊主義の抬頭』
 和田芳久訳、工作舎(1992)

英国を席巻した心霊主義を、その最盛期であるヴィクトリア朝と
エドワード朝時代の期間(1850-1914)に限って取り扱っている。

最初の2章で霊媒や交霊会について触れ、次の章でキリスト教と
のかかわりを述べる。自然科学の勃興により、キリスト教の危機
感が高まったところで、心霊主義はキリスト教の擁護にも、宗教色
のうすい死後の世界観を通した反キリスト教の動きにも、共に利用
されたという指摘は興味深い。

次の4章ではSPRについて述べており、前項の著者ベルグソンは
本書が注目する最後期の会長である。後続の章では、オカルト、
心の概念、進化、物理学と心霊主義のかかわりをそれぞれ解説し
ており、当時の時代背景がよくわかる。

さて、
超心理学が現われるのは本書の後の時代で、行動主義心理学と
あいまって自然科学化を指向したのである。心霊主義を捨てた見
返りは十分ないまま、科学と宗教の間でコウモリの状態なのだ。

精神のエネルギー

2006-12-15 | 読書ガイド
94番目は、宇宙の統一的見方を唱える講演・論文集。

●アンリ・ベルグソン『精神のエネルギー』宇波彰訳、レグルス文庫
 第三文明社(1992)

この本で、フランスの思想家ベルグソンの描く世界観がよくわかる。

第1章「意識と生命」(1911)では、意識は過去の記憶作用と未来への
予期であり、生への注意によって成立するが、脳が必ずしも必要でない
という趣旨の議論をしている。

第2章「魂と身体」(1912)では、自我は空間と時間の両面で身体を
はみだし、エネルギー保存則を破っている、唯物論にこだわる科学は
限界があると主張する。

第3章「<生者の幻>と<心霊研究>」(1913)は、英国心霊研究協会
(SPR)の会長就任記念講演である。近代科学は研究対象領域を小さく
したことで力をもったなど、科学に関する貴重な指摘が多くあり、逆に
心霊研究の可能性を訴えている。

以下の章は、夢/現在の記憶内容と誤った再認/知的な努力/脳と
思考―哲学の錯覚、と続く。


ソ連圏の四次元科学~赤い国の霊的革命

2006-12-14 | 読書ガイド
93番目は、前項と同じ著者の本をもうひとつ。

●シーラ・オストランダー+リン・シュローダー『ソ連圏の四次元科学
 ~赤い国の霊的革命(上・下)』寺洲みのる訳、たま出版(1973-74)

シーラとリンはジャーナリストで、かつての東側「鉄のカーテン」の向こう
で超能力研究が進んでいるという、当時ではセンセーショナルなルポ。
アメリカのスターゲート計画などの超能力諜報計画が発足するきっかけ
となったと言われている。

じつは、この本は今、私の手元にはない。原著と翻訳本をセットにして
電気通信大学の超常現象研究会に寄贈してしまったのである。この学生
サークルはまだ続いているのだろうか。ご存知の方、教えて欲しい。

経営者の意志決定と直観力

2006-12-13 | 読書ガイド
92番目は、通俗本まがいをもうひとつ。

●ディーン+ミハラスキー+オストランダー+シュローダー
 『経営者の意志決定と直観力』田中孝顕訳、たま出版(1987)

ニューワーク工科大学のジョン・ミハラスキーとダグラス・ディーン
の、経営者に関するサイ実験研究がもとになっている。経営者の
能力というと、ビジネス本のターゲットとなりやすいのだが、この
本も、翻訳者によってかなり異色な読み物へと加工されている。

しかし、57番の創造性や、58番のスポーツ選手の超能力での
議論と同様に、この経営者の超能力は、社会で成功している人
たちが知らず知らずのうちに、サイを利用している可能性を示唆
する。ワイズマンは「あえて」否定するだろうが、運のいい人も
同様かもしれない。

補足だが、前項のワイズマンの本に続編があり、
 『運のいい人にはワケがある~運を鍛える<ゴリラ>の法則』
  矢羽野薫訳、角川書店(2005)
なのだが、内容はほとんど「頭の体操」状態であり、前編を読ん
でないと幸運との関係もよく理解できない。前編を読んだあとに
さらに興味がある方のみに限り、お薦めである。

運のいい人、悪い人~運を鍛える四つの法則

2006-12-12 | 読書ガイド
91番目は、通俗本と見まごうばかりの意味深い本。

●ワイズマン『運のいい人、悪い人~運を鍛える四つの法則』
 矢羽野薫訳、角川書店(2004)

著者は81番でお知らせした、来日中だったリチャード・ワイズマン。彼の
本だと知らなければ、決して読まない種類のタイトルだ。「幸運の要因」が
原題である。

私は、彼の来日中の講演を2つ聞きに行ったが、その講演で紹介があり、
この本の存在を知った。2001年のPA(超心理学協会大会)以来じつに
5年ぶりにお会いしたのだが、奇術の実演を交えた楽しい講演だった。

本書の内容は、運がいいと言う人と、悪いと言う人に対して大規模に調査
した研究成果。まず、両群にナンバーズくじを予想させて、どちらも当たら
ないことから、運の良し悪しは超能力じゃない、と断言する。そして、その
結果得られた違いとは:

法則1)チャンスを最大限に広げる…外交性・好奇心・リラックス
法則2)虫の知らせを聞き逃さない…直感を高める・瞑想
法則3)幸運を期待する…楽観性・挑戦・想像
法則4)不運を幸運に変える…プラス指向の学び

これらは87番の超能力開発法と酷似している。ワイズマンは懐疑論者を
自称するが、背後には超心理学のノウハウが息づいている。ナンバーズくじ
の予想で超能力じゃないと断言でき「ない」ことは、彼が一番よく知っている
はずだ。彼は確信犯的議論を弄し、科学の境界領域で活動する道化師
トリックスターだ。

でもこの本は、おもしろいし役に立つ。



サイ・テクノロジー~気の科学・気の技術

2006-12-05 | 読書ガイド
90番目は、87-89の訳者の著書。

●井村宏次『サイ・テクノロジー~気の科学・気の技術』工作舎(1984)

1972年に著者が始めた、生体エネルギー研究所の活動成果の記録。
1978-82年に雑誌『遊』に連載した「超感覚と超技術」を加筆したもの。
オーラや気にかんする先駆的研究が満載。キルリアン写真の成果に
ついては、前項の本のあとがきに詳しい。

生体エネルギー研究所には、私も25年ほど前に訪問したことがあるが、
そこは、「知」と「技」がぎっしりと詰め込まれた「仙人の庵」と言えそうな
異空間であり、奇妙な現象が起きてもおかしくない、独特の雰囲気に
包まれていた。

サイは理論を追究するより、テクノロジーを実践することに意義がある、
それを身をもって示した成果が本書であると言えよう。それに公共性を
いかに付与するかが、次の課題であろう。


生体エネルギーを求めて~キルリアン写真の謎

2006-12-04 | 読書ガイド
89番目は、異色の超心理学者の伝記。

●セルマ・モス『生体エネルギーを求めて~キルリアン写真の謎』
 井村宏次・西岡恵美子訳、日本教文社(1983)

女優であったセルマが、神秘体験をきっかけに(超)心理学者になる
ことを決意し、UCLAで科学の方法を学び、大学で研究室を構える
までなる。しかし、本流科学との対峙に苦労し、結果として大学を
去ることになる。研究者としての人生に触れる読み物になっている。

私は、本書を20年ぶりに改めて読み直した。セルマと同様に研究者
として歩むようになった今では、考えさせられる点が多くあった。異端
派の科学分野では、単純に研究を推し進めるだけでは不十分であり、
本流科学や社会に対して適切に働きかける「戦略」が必要であるのだ。

ドリーム・テレパシー

2006-12-03 | 読書ガイド
88番目は、もっとも確実にESPを検出したとされる実験について。

●M・ウルマン/S・クリップナー/A・ヴォーン『ドリーム・テレパシー』
 井村宏次監訳、神保圭志訳、工作舎(1987)

マイモニデス医療センター(の地下)に設置された夢研究所において、
ウルマンらが行なった、ドリーム・テレパシー実験が、その前段階から
歴史を踏んで描かれている。現在活躍する年長の超心理学者の多くが、
このプロジェクトから直接大きな影響を受けている。

彼らが開発した方法は、夢見に現われる内容にESPを検出する実験で、
1晩に1実験しかできない代わりに、能力の高い被験者が集中して行なう
ので、高い成功率をあげていた。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/3-1.htm

第11章「千里眼のプリンス」で記述されている優秀な被験者ヴァン・デ・
キャッスル博士は、心理学者で厳格な論文も多数出しているのだが情熱
家で、感性が鋭く、ふっと湧いたイメージを驚くべき速度で刻銘に描写して
見せる。私も直接目にしたが、ESP実験が成功するより、そちらのほうが
むしろ不思議でもあった。

サイ能力開発法

2006-12-02 | 読書ガイド
87番目は、超能力開発法?に間する本。

●D・スコット・ロゴ『サイ能力開発法』井村宏次監訳、
 久保博嗣訳、工作舎(1989)

サイ能力(超能力)は訓練できるのだろうか?

巷には怪しいハウツー本があふれており、これもそのひとつかと思いきや、
まったく違う。超心理研究を、超能力実験でスコアがアップする方法という
観点で整理した、的確な超心理学の紹介となっている。

技法1:夢のチャンネル
技法2:メンタル・イメージのチャンネル
技法3:リラクセーションのチャンネル
技法4:暗示のチャンネル
技法5:フィードバックのチャンネル

という5つの方向から解説しているが、どれも超能力を開発しているよりも、
潜在意識と意識の間の風通しをよくする手法に見える。まさにその通り。

超心理学者の努力に反して、超能力自体の増進法はわかっていない。今の
ところ、潜在的に存在する力を意識で制御できるようにしようというわけだ。
言ってみれば、潜在能力開発法である。それでも十分意義深いのだが。。。



心霊研究~その歴史・原理・実践

2006-12-01 | 読書ガイド
86番目は、心霊研究の決定版。

●I・グラッタン=ギネス編『心霊研究~その歴史・原理・実践』
 笠原敏雄監訳、和田芳久訳、技術出版(1995)

英国の心霊研究協会(SPR)の100周年記念として1982年に出版
された論文集。分野を網羅するかたちで30以上の論文が掲載されて
いる。半分以上は超心理の分野と重なっている。

扉には、ユングが1919年のSPR講演で残した次の言葉がある。
 私は、自分で説明できないものをすべて、インチキと見なすという
 昨今の愚かしい風潮に与することはしない。

論文をひとつだけあげるとすると、13章のスタンフォードのPMIRに
関する解説に注目したい。ESPは潜在意識レベルで合目的的に働く
とする理論である。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/5-3.htm

監訳者の笠原さんは心理カウンセラーで「心の研究室」を主宰している。
http://www.02.246.ne.jp/~kasahara/

 

ユング オカルトの心理学

2006-11-30 | 読書ガイド
85番目は、再度ユングの著書。

●カール・グスタフ・ユング『ユング オカルトの心理学』
 島津彬郎訳、講談社+α新書(2000)

サイマル出版会より、1989年に刊行された単行本の第一部を再版したもの。
ユングの著作集から、オカルトや超心理学に関する7つの論文を訳出した
かたちになっている。それらがユング心理学の重要要素であることがわかる。

第1章:心霊的現象(1905)
第2章:無意識の心理学(1920)
第3章:魂と死(1934)
第4章:超心理学 「あの世とは(1948)」「幽霊論(1950)」
    「人間の直観力(1950)」「深層心理学を深める(1957)」
    「超心理学のこれから(1963)」

最後の論文で超心理学の興味深い定義が提案されている。
「超心理学は、物質、空間、そして時間の(それゆえ因果性の)範疇が自明で
ないことを示す、生理的もしくは心理的出来事を扱う科学である。」
http://www.isc.meiji.ac.jp/~ishilec/infocom/semi16.html


脳と心の正体

2006-11-29 | 読書ガイド
84番目は、心身二元論者として有名な脳神経外科医の著書。

●ワイルダー・ペンフィールド『脳と心の正体』塚田裕三・山河宏訳
 文化放送(1977)/法政大学出版局(1987)

ペンフィールドは、てんかんの治療のために開頭状態にした覚醒状態の
患者の大脳皮質に電気刺激を与えることで、さまざまな心的現象を生じ
うることを発見した。なかでも身体の各部位に対応する感覚・運動領域の
地図を描いた成果は注目される。また、側頭葉の刺激によって、記憶の
フラッシュバックや、憑依のような自動症が引き起こされる発見も名高い。

本書第21章「人間―この未知なるもの」では、テレパシーの可能性に
ついて、証拠が欠けている現時点では否定せざるをえないとしながらも、
「心の本体はまだ神秘であり、そのエネルギー源も明らかにされていない
のだから、心と心の間の直接的な交信が人生を通じて絶対に起こらない
と言い切ることはできない」と述べている。

また、死後存在の可能性についても「心の脳以外のエネルギー源との
結びつき問題」と言い換えて、「心を活動させるエネルギーの本体が
明らかにされたあかつきには(私はそうなると信じている)、さらに進んで、
科学者が人間の霊とは別の霊の本質を確かな根拠をもって研究できる
ようになる日が来るかもしれない」と期待を寄せている。


心理学への情報科学的アプローチ

2006-11-28 | 読書ガイド
83番目は、認知科学のパイオニアの著書。

●ジョージ・A・ミラー『心理学への情報科学的アプローチ』
 高田洋一郎訳、培風館(1972)

認知革命に貢献した、記憶のモデル研究で著名なミラーの論文集。
第2章が、その端緒となった「マジカルナンバー7プラスマイナス2」
で、1956年の論文である。

注目すべきは第4章の「心霊研究について」であり、サイエンティフィック
アメリカンに1963年に掲載された論文の再録である。ミラーは超心理
学者のブロードの次の意見を引用し、
 正常な人から超正常能力を引き出し、そしてそれをかなりの長期間に
 わたって高い水準で維持することができるような方法をだれかが発見
 しないかぎり・・・超正常現象の研究に進歩はおぼつかない、と私には
 思われる。
以下の記述で論文を結んでいる。
 もし、このような方法が発見されれば、それこそ、心霊研究において
 持ち望まれることすでに久しい真の突破口となることであろう。私は、
 そのような発展がありうるとは思う。しかし、それに賭けることはあえて
 しない。

ブロードの主張も、ミラーのとってきたスタンスも、40年経過した今日の
視点から見ても妥当であったようだ。しかし、ブロードが期待した方法に
ついては、最近開発された予感実験に、新しい可能性が見えてきている。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/3-4.htm


マインズ・アイ~コンピュータ時代の「心」と「私」

2006-11-27 | 読書ガイド
82番目は、心の哲学の論文集。

●D・R・ホフスタッター&D・C・デネット(編著)『マインズ・アイ~
 コンピュータ時代の「心」と「私」』坂本百大監訳、TBSブリタニカ
 (1984/1992)

第4章の「計算機械と知能」では、コンピュータの原理を示したアラン・
チューリングが1950年に書いた、人工知能の達成基準であるチュー
リング・テストを提案する論文が収められている。

そこでは、チューリングが、「少なくともテレパシーに対しては、統計的
証拠は圧倒的である。・・・われわれの身体は、いまだ発見されては
いないが、いくぶん類似した他のいくつかの法則と共に、物理学の
既知の法則に従って運動するにすぎないという考え方は、最初に捨て
去られる考え方のひとつであろう。」と書いている。

それに対して編者は、「超感覚的知覚が、人間の創造する機械と人間
との究極的な相違であることが判明するかもしれないと、チューリングが
明らかに信じる気でいることについて、われわれは簡単なコメントを行な
いたい。・・・物理学の法則は、それらに適応させるように簡単に修正
できるというわけにはいかないのではないかと思う。・・・科学のすべてを
そのもっとも根本的な仮定から考え直してみるという仕事は大きな知的
な冒険ではあろう。が、しかし、われわれがそれをする必要があるだろう
という証拠は、これまで何年にもわたってまったく蓄積されてはこなかった
のである。」と述べている。

超心理学がたんなる心理学の一分野(そこに入れてもらえてはいないが)
でなく、科学自体にかかわる大問題を提起しているのがよくわかる。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/8-2.htm