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超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

テレパシー実験の始まり

2008-03-16 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(6)>
第6章:テレパシー実験の始まり

ESPの強制選択実験に代わり、1970年代には自由応答実験が
始まる、としてドリーム・テレパシー実験とガンツフェルト実験を解説
している。この章には懐疑論の話は書かれていない。

これらの実験はもうおなじみだろうが、念のため:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/3-1.htm
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/3-2.htm


PKの実験的証拠:サイコロ実験

2008-03-13 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(5)>
第5章:ミクロPKの実験的証拠

著者のカーターは次の2点を解説している。
・サイコロによるPK実験について、ラディンとフェラーリのメタ分析
⇒からみあう心たち(23)
・乱数発生器によるPK実験について、ラディンとネルソンのメタ分析
⇒『量子の宇宙でからみあう心たち』219ページ

※このブログで問題になっているロバート・アーリックの指摘(『怪しい
 科学の見抜き方』第5章)のような議論の紹介はなく、懐疑論の観点
 からは物足りない内容である。

PKがあるとするとカジノが倒産してしまうのではないか、という批判に
対しては、今の検出されている効果の100倍くらいのPK効果がない
とダメで、それくらいカジノはマージンを確保していると説明している。


ESPカードによる実験的証拠への批判

2008-03-12 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(4)>
第4章:ESPカードによる実験的証拠への批判

ESPカードによる実験的証拠をラインが1934年に発表した
ところ、40年までに60の批判的記事が40人の著者によって
発表されている。主要な批判は統計の使用に関してだったが、
1937年数理統計研究所所長のバートン・キャンプによって、
「ラインの実験に問題があるとすると統計以外の部分である」
と報告され、一応の収束をみる。

次の批判は、なんらかのターゲット情報のもれがあるというもの
であり、当時流行に乗じて発売された非公式ESPカードに裏
から見えるずさんなものが相次ぎ、批判に拍車をかけた。しかし、
実験には、不透明な封筒に入れたものや、スクリーンを隔てた
もの、遠隔実験や予知実験までもあり、情報のもれだけでは
説明ができない。ラインは批判に対して『60年後のESP』を
1940年に出版して実験的証拠を総括した。

40年以降の批判は、被験者のインチキや、実験者のでっちあげ
に焦点が移る。たとえば英国の心理学者ハンセルは、どのように
うまく詐欺的行為ができるかを論じた。詐欺の可能性が残されて
いるのであれば、証拠に値しないという観点により、初期の膨大
なESPカード実験が、今日まで過小評価されている。


逸話的証拠―超心理体験報告

2008-03-11 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(3)>
第3章:逸話的証拠―超心理体験報告

著者のカーターは十数例の歴史的な報告事例を載せたうえで、
次のように言う。

体験報告事例には、それに関連した多数の変数がかかわって
おり、分析が難しい。加えて、そうした体験は、偶然の一致、
誤解釈、脚色、記憶の欠陥、幻覚、詐欺などの説明も可能で
ある。だから、実験的証拠が必要なのだ。


サイコップの実態

2008-03-10 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(2-3)>
第2章:現代の懐疑論争
(3)サイコップの実態

団体サイコップは数人のノーベル賞受賞者を含む著名学者を
メンバーにして、超常信奉撲滅のための十字軍を形成している。

サイコップの主要メンバーの多くは手品師である。しかし、手品師
がみな懐疑的であるわけではない。調査結果によると、手品師
の超常信奉率は、逆に一般人よりも高い。

議長のポール・カーツは無神論者であるようだ。彼が代表を務める
プロメテウス・ブックス社は、無神論の本を多く発刊している。他の
メンバーも無神論の主張をする者が多い。

サイコップは疑うのではなく、否定する団体となっている。それは
皮肉なことに逆効果のようだ。たとえばシカゴ大学の調査では、
一般人の67%がESPを体験したと言っている。サイコップのような
議論を聞くと一般人はむしろ、「科学者」は視野狭窄に陥っていると
笑っているのではないだろうか。


火星効果スキャンダル

2008-03-08 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(2-2)>
第2章:現代の懐疑論争
(2)火星効果スキャンダル

団体サイコップは「科学的探究」を会の名称にかかげているものの、
その唯一の「科学的探究」は、設立当初のとんだスキャンダルになった。

現代占星術師のゴクランが、調査データにもとづいて、誕生時に火星
が天の12宮のうち特定の2宮にあると強いアスリートになりやすい
と発表していた。カーツが『ヒューマニスト』の占星術批判特集を組んだ
ところ、その中のゴクラン説の批判が紛糾した。

ゴクランの統計では、強いアスリートのうち22%が該当宮に当たり、
偶然期待値の17%を上回って、百万分の1程度の有意性であった。

カーツは後のサイコップの仲間うちに呼びかけ、統計の問題を探した。
ローリンズが「地球から見た火星の軌道は変則的なので、宮が不均等
なのでは」という指摘をし、ゼレンが比較対照の問題をあげた。そこで、
カーツは『ヒューマニスト』にゴクランへの「挑戦」を載せたのである。
「強いアスリートのうち22%が該当しても、弱いアスリートも22%
該当するのではないか、それならば火星効果はないことになる。」

ゴクランは再度多数のデータで再調査し、弱いアスリートは偶然期待
どおり17%であったのだ。この論文に対してゼレンは、女性アスリート
の扱いの問題、サンプリング地域の問題を指摘した。「挑戦」によって
論争は決着どころか、いっそうの混迷を深め、『スケプティカル・
インクワイアラー』へと引き継がれたのである。

ところが、混迷のなかで、当のローリンズがサイコップを脱会して、
『フェイト・マガジン』に内部暴露した。ローリンズによると、22%に
固執する挑戦は危ない、という彼自身の指摘を、主要メンバーが無視
し、ゴクランの再調査データが17%で出てきたところで、なんとか、
22%になるように、あとづけで「あら捜し」をした、というのである。
同様の指摘は、サイコップのフェローで心理学者のリチャード・カマン
からもあり、彼もサイコップを脱会するのである。

サイコップはその後、個別の「科学的探究」は行わないという方針を
公言し、超常信奉をあざ笑う『スケプティカル・インクワイアラー』は、
販売部数をどんどん伸ばしたのである。

※ゴクランについては『きわどい科学』(読書ガイド81)の第8章にも
 解説あり。


現代の懐疑論争:組織化の始まり

2008-03-07 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(2-1)>
第2章:現代の懐疑論争
(1)組織化の始まり

1970年代までは、組織的な懐疑論の運動は見られなかった。
マーチン・ガードナーなどが、単発的に懐疑的な著作を発表して
いた。⇒読書ガイドの60番

1975年に当時ニューヨーク州立大学の哲学教授ポール・カーツ
が、自らが編集者を務める雑誌『ヒューマニスト』に占星術の批判
を掲載した。占星術には科学的基盤がないという記事に、多くの
科学者が共同署名した。合理性に欠けた反啓蒙主義の勢力を
撲滅しようという「ヒューマニスト」の動きは、批判の対象を宗教的
オカルト主義から、超心理学の学術的成果までに拡大させた。

一方『ゼテティック』を発刊する科学社会学者マルチェロ・トルッチィ
は対照的に、超常現象に懐疑的ではあるものの、『ゼテティック』を
多様な見解が公平に意見を戦わせる場として運営した。

カーツは、批判に好意的なメディアの助けもあって、トルッチィを
巻き込んで、1976年批判団体サイコップ(CSICOP)を設立する。
『ゼテティック』が機関誌となるが、強硬な批判路線を強めるカーツ
に反発してトルッチィは脱退する。カーツは、機関誌を『スケプティック
・インクワイアラー』と改名、ケンドリック・フレイザーを編集長とした。

参考:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/1-4.htm


懐疑論争の発端に遡る

2008-03-06 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(1)>
第1章:懐疑論争の発端に遡る

18世紀にいたるまで、学者たちは精神界をもとにした現象の説明を
普通に受け入れていた。それがガリレオからニュートンまでの業績を
もとにした科学的な啓蒙思想の勃興に伴って、世界を機械的に見る
見方が広まったのである。

啓蒙思想は、宗教的迷信の暗黒から開放したとされる。その代表的な
哲学者であるヒュームは、奇跡への批判を展開する。主には宗教上の
奇跡を対象としたが、テレパシーなどの超常現象も批判の対象となった。

超常現象は依然として報告され続けるが、ヒュームの機械的世界観
には受け入れられない現象となった。19世紀に心霊研究から発した
超心理学は、超常現象を科学的に追究する学問分野であるが、科学が
機械的世界観を前提にしているのであれば、すでに矛盾を含んだ営み
と言えよう。

参考:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/8-2.htm


シェルドレイクによる懐疑論争の位置づけ

2008-03-05 | 懐疑論争
<超心理学と懐疑論者たち(0-2)>
序文:シェルドレイクによる懐疑論争の位置づけ

生物学者で超心理学者でもあるルパート・シェルドレイクは、
本書に序文を寄せて、この本が現代の懐疑論がひとしく前提
としなければならない「過去の論争の歴史」を提供している
と評している。懐疑論争が、事実のあるなしの水準ではなく、
それを解釈する水準(トマス・クーンが指摘した水準)でなさ
れている点を明らかにしたと、本書を評価して、次のように言う。

私(シェルドレイク)は、「電話が鳴るのを予感する超心理実験」
について英国の学会で発表したところ、タイムズ新聞がオックス
フォードの化学教授による「テレパシーなど幻想にすぎない」
という記事を掲載した。当該教授とラジオの対談に臨んだところ、
私のことを「統計とたわむれている」と評するので、「実験データ
を見たのですか」と問うたところ「いや、私は信じていないから」
と答えるのであった。

しかし、今日の科学界はいろいろな思想をもった多様な科学者
が増え、頑固な懐疑論者は少数勢力となりつつある。多くの
科学者は、じつは好奇心にあふれオープンマインドであるのだ。
たんに、今のところタブー視して、興味を心にしまい込んでいる
だけなのだ。意識の研究が超心理学の知見と接続し始めている
現在は、変革の諸条件が整いつつあるのかもしれない。

※シェルドレイクについは、読書ガイド69-71を見よ。


超心理学と懐疑論者たち

2008-03-04 | 懐疑論争
さて次に懐疑論争をとりあげよう。オックスフォード大学で
経済学と哲学を専攻したクリス・カーターによる次の本である。

Parapsychology and the Skeptics: a Scientific Argument
for the Existence of ESP (PAJA Books, 2007)

<超心理学と懐疑論者たち(0-1)>
副題:ESPの存在をめぐる科学的議論

この本の執筆を、カーターは「あとがき」で次のように振り返る。

あるとき死後生存の信念に対するデバンキング(撲滅)議論を
ホームページで見た。そのテーマについて真摯に取り組んだ
複数の文献を読んでいた私は、ホームページの議論が過去の
文献を無視した粗雑な議論であることに気づき、メールで再検討
をお願いした。ところが、意に反して「反論」が寄せられたのだ。

数週間のやりとりで分かったことは、その方の「懐疑的精神」は、
形而上学的な仮定を、議論の余地のない「事実」として鵜呑みに
するところから出発していること、そして、そうした仮定を否定する
ような事実にたいしては積極的に目をつぶることだった。こうした
「懐疑的精神」の持ち主は、すでに決意を固めており、議論は
無益である、と知ったのだった。

その後、こうした方は「学歴のある人」の中に少なからずいると
感じて私は、偏見に凝り固まった立場への果敢な挑戦として
本書を企画した。膨大な資料が集まったが、それを全部掲載する
分厚い本を出版してくれる業者はいなかったので、とりあえず
今回は、死後生存関係を除いて超心理関係のみで1冊にした。

※日本語で読める懐疑論争には笠原編の『サイの戦場』がある。
20年前の出版でちょっと古くなってしまっているが⇒読書ガイド32