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葛飾応為「吉原格子先之図」 -光と影の美

2014-02-01 21:30:00 | 美術
見てきました

太田記念美術館

会期は2014年2月1日から2014年2月26日。

今回は葛飾応為の「吉原格子先之図」を中心に、様々な絵師が光と影を表現した作品が展示されています。
で、葛飾応為って。。。というのは後にして。
まずは肉筆浮世絵から。

作者不詳「室内遊興図」
18世紀に入ると透視図法を用いて劇場内や室内を描いた作品が多く生み出されました。
この作品も透視図法を用いた作品の一つ。
広々とした室内に話をする男女、奥には双六に興じる女性たち、さらにその奥に野外の景色も見え帆船が描かれています。
とても広く奥行きを感じる作品です。
が、この時代の透視図法、消失点に線が収束していないため、ちょっとずれた感じか。。。
この作品もそういった違和感を抱え不思議な作品となっています。

宮川長亀「吉原格子先の図」
吉原遊郭の妓桜と行き交う人々を描いた作品。
引き手茶屋からの客を店に案内する花魁道中。
室内では書を読む、三味線を弾く、客を眺める、などくつろぐ様子の遊女が描かれています。
こちらも変わっています。

《Ⅰ.葛飾応為「吉原格子先之図」》
さて、今回のメインです。
葛飾応為「吉原格子先之図」
以前に一度見ているのですが、そのときに"こんな作品を生み出す人が江戸時代にいたなんて"と驚いたものです。
その光と影の表現に。
吉原遊郭の妓桜、和泉屋の張見世の様子を描いたもの。
暗闇に浮かぶ明るい室内、シルエットとなる外の人々。
提灯の明かりとそれに照らされる人周辺。
こんなにも光と影を表現できるのか、と。
そして明暗もさることながら色彩も美しくずっと見ていても飽きない作品。
さて、作者の葛飾応為。
残された作品も少なく、確認されている作品は世界でも10数点。
生没年不詳。
一説には1801年に生まれ1866年に亡くなったとされています。
が、安政4(1857)年の夏、家を出たまま行方不明という話も。
確かに分かっていることは葛飾北斎の三女ということ。
本名は「お栄」ということ。
北斎曰く、「美人画は自分より上」
そんな絵師なのに謎だらけ。。
堤等琳の門人、南沢等明に嫁ぎますが程なく離婚。
男勝りの正確が災いしたとか。。
自分より拙い等明の絵を笑ったとか。。。
それはさすがに、とも思うけど、あんな作品生み出す人だもの。
仕方ないのかな。笑
離婚後は北斎と生活したそうで、晩年の北斎の制作活動を助けたとも。
晩年の北斎作品、実は応為の作品では、とも言われているそうです。
なるほど、それなら作品が少なくても理解できる。
代表作としては他にメナード美術館所蔵の「春夜美人図」、ボストン美術館所蔵の「三曲合奏図」が紹介されています。
先日の「大浮世絵展」では「夜桜図」を見ています。
見れて嬉しい!!
また作品に名前が入れられていないということも作品の少なさに関係しそうです。
この「吉原格子先之図」には提灯が3つ描かれているのですが、それぞれに小さく「應」「為」「栄」という文字が。
応為を示す字です。
こういった遊び心もおもしろい。
もっとたくさん見てみたい。
研究が進んだらいいな、と思います。

《Ⅱ.葛飾派の洋風表現》
北斎はしばしば西洋の作品から影響を受けたものを作画していました。
それは一門の作品にも見受けられます。
ここにはそういった作品が並んでいます。

葛飾北斎「新板浮絵忠臣蔵 初段 霞ヶ岡」
浮絵とは透視図法を用いて極端な遠近を表現したもの。
人物の向こうに水辺があり、さらにその先には富士山が。
奥行きをすごく感じる作品です。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 深川万年橋下」
鮮やかな青と緑が美しい作品。
川に架けられた橋には人々が行き交います。
左右に建物が描かれ、こちらも奥には富士山。
上記の作品と構図はとても似ています。
水平線が下げられ、空は広く安定感ある作品です。

昇亭北寿「武州千住大橋之景」
こちらも上記と似たような景色です。
水辺に架かる橋とその周辺。
水平線は画面の中央より下で空が広く取られています。
水の青と空の青、たなびく雲も綺麗。

昇亭北寿「浮絵 浪花天満天神夜祭之図」
こちらも画面中央より下に水平線を持ってきています。
暗い空には白抜きの星。
奥までずっと続くような感覚です。

《Ⅲ.夜と美人》
ここでは夜の情景に描かれた美人図が展示されています。

歌川国貞(三代歌川豊国)「月の陰忍逢ふ夜 月見る美人」
窓辺で手すりにもたれるように月を眺める女性。
着物にグラデーションで陰影表現がなされています。
肌の白さが際立ち、艶っぽい作品です。

歌川国貞(三代歌川豊国)「深川新地の月」
茶屋の2階、月見の情景です。
室外から見えるのは佃島、石川島。
ぼかしで島の木立に陰影をつけています。
水面には月明かりで生まれた島や舟の影。
月見の女性は華やかですが、静かな雰囲気漂う作品です。

歌川広重「隅田の寮月の宴」
料理やお酒の準備された室内。
これから宴かと思われます。
白抜きの満月に照らされ、木々や建物の影が室内に伸びてきています。
草花などは障子越しにシルエットで表現され風情あります。

歌川広重「雪月花の内 月の夕部」
月明かりに照らされた3人の女性。
月の夕部ですが、月は描かれていません。
影によってその存在を示しています。
とても素敵です。

《Ⅳ.夜の風景 -江戸の町を中心に》
ここでは夜の江戸の町が展示されていました。

歌川広重「名所江戸百景 猿わか町よるの景」
茶屋や芝居小屋が立ち並ぶ芝居町の夜景。
空高くに月、芝居帰りの客の足元に影をつくります。
柔らかな月明かりが優しい印象を与えます。

歌川広重「名所江戸百景 真乳山山谷堀夜景」
上空部分は雲母摺で星のまたたきを表現しています。
水面にも星が映りこみ幻想的で美しい夜です

《Ⅴ.江戸の影 -多彩なシルエット》
ここでは影に重点がおかれています。

菊川英山「当風三美人」
料亭の2階での遊興が描かれています。
中庭をはさんで向こうの部屋の障子に映るのは騒ぐ人々のシルエット。
手前にいる女性3人は手すりに腰掛けたり頬杖ついたりとめんどくさそうな空気をぷんぷんに匂わせています。
なんだかくすっと笑えます。

渓斎英泉「岐阻路ノ駅河渡 長柄川鵜飼船」
鵜飼の様子を描いたもの。
篝火の周りだけが明るく、水中の鵜はシルエットで表現されています。
水が深くなるほど色も深く暗くなっていました。

《Ⅵ.閃光をとらえた絵師たち》
光といっても様々です。
ここでは太陽の光や神仏や妖術使いが発する光などちょっと変わった光の表現の作品が展示されています。

歌川国貞(三代歌川豊国)「豊国揮毫奇術競 蒙雲国師」
派手な見た目で目立ちます。
蒙雲国師は滝沢馬琴の「椿説弓張月」に登場する妖術を使う妖僧。
岩に座った蒙雲国師が中央に描かれ、そこから黄色い光を発しています。
周りには岩が飛び散り迫力あります。

歌川豊国「両国花火之図」
大きく描かれた橋には花火見物の人がぎっしり。
花火の図とはいっても花火は上部にひょろりと。
暗い夜空に赤い閃光で描かれています。
花火より人にどうしても目がいってしまう作品

《Ⅶ.新時代の表現》
時代は江戸から明治へ。
光源も表現方法も変わっていきます。
ここでは小林清親とその門人の井上安治、清親の影響を受けたといわれる小倉柳村の作品が展示されています。

小林清親「池の端花火」
大好き、清親。
上野の不忍池のほとりから花火を眺める人々が描かれています。
暗い夜空に打ち上がる花火。
それを眺める人々はシルエットで表現されています。
華やかな花火が見えるのに、なぜか静かな印象。

小林清親「今戸橋茶亭の月夜」
月に照らされた水面の揺らぎが繊細に表現されています。
茶亭の明りも少し洩れ、周りをほのかに照らします。
やはり、清親の表現は好きだなぁ。

井上安治「銀座商店夜景」
明るい店内にぎっしり詰まれたものは、缶!!
果物の缶詰の製造販売をしていた中川幸七の商店とのこと。
当時としてはかなり珍しいお店だったそうです。
中の明るさと外の暗さが劇的です。
この時代に缶詰があったことを初めて知りました。。
私はまた一つ、知識を得ることができました。

小倉柳村「日本橋夜景」
日本橋を歩く人々が描かれています。
橋の両脇にあり暖かな光を出しているのはガス灯。
時代が移り変わっていきました。

以上です。
大好きな清親も、そして待ち焦がれた応為の作品も見れ、大満足の展示です。



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