RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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世紀の日本画 (前期)

2014-02-09 21:30:00 | 美術
見てきました

東京都美術館

会期は2014年1月25日から2014年4月1日。

今回の「世紀の日本画展」
東京国立博物館で開催の「クリーブランド美術館展」「人間国宝展
この3つの展示で『日本美術の祭典』とされています。
クリーブランド美術館展」「人間国宝展」を書いたので、今日は「日本美術院再興100年 世紀の日本画」を。
こちらはトーハクの2つより会期が長く、前期と後期に分かれています。
【前期】2014年1月25日 - 2月25日
【後期】2014年3月1日 - 4月1日
今回、前期を見てきましたのでその感想を。
なお、前期と後期ですべての作品が入れ替わります。
後期も見に行く予定です。

昨年、横浜美術館で開催された「横山大観展」「下村観山展(その1)、(その2)」
どちらも日本美術院の創設から立ち会い、再興もした日本美術院にとって重要な画家です。
日本美術院絡みの展示が続くな、と思いきや。
今年は日本美術院の再興から100年。
今回の展示はこれを記念し、前史としての東京美術学校設立から現在に至るまでの約130年の活動を振り返るものです。
狩野芳崖、横山大観、小林古径、安田靫彦、平山郁夫など、近代日本画の巨匠たちの代表作約120点が展示されています。

《第1章 名作で辿る日本美術院の歩み》
日本美術院は岡倉天心が1898(明治31)年に設立したもの。
その後様々な理由からいったんは事実上の解散状態に。
その後、1914(大正3)年に横山大観、下村観山らによって再興されました。
ここではまず院展のハイライトとも言うべき作品たちが展示されています。

狩野芳崖「不動明王」
口をきゅっと結び岩に座る不動明王。
がっしりとはしていないのですが、全身から力がみなぎっているような作品。
彩色も鮮やかで、背景は金色で空間表現も見られます。
狩野芳崖はその名からも分かるとおり狩野派の画家。
ですが、近代日本画の父とも称されております。
芳崖がアーネスト・フェノロサと出会ったのは1882(明治15)年。
日本美術を高く評価していたフェノロサは、岡倉天心らと日本画革新運動を繰り広げます。
新・日本画の創生を託された芳崖じゃ鮮やかな西洋顔料を取り入れた「仁王捉鬼図」で鑑画会大会で一等。
人気画家となりますが、フェノロサはこの作品を、当時の総理、伊藤博文に見せて日本画の可能性を示し、東京美術学校(後の東京藝術大学)設立の契機としました。
肺を病み、すでに54歳であった芳崖はさまざまな試行錯誤の結果、「悲母観音」を生み出します。
なお、この作品は後期で展示される予定です。
楽しみ。
芳崖は東京美術学校の教官に任命されますが、「悲母観音」を書き上げた4日後の1888年11月5日、同校の開学を待たずに亡くなります。
日本美術院の展示で日本美術院に参加していない画家の作品が一番最初、ということが不思議かもしれませんが、近代日本画の父としての業績は疑いようもありません。
日本美術院が再興された際には、院の原点を築いた一人として、岡倉天心とともに敷地内の霊社に合祀されています。

橋本雅邦「白雲紅樹」
とても大きな掛け軸です。
渓谷にたなびく白い雲。
白い筋となった滝。
岩場には小さく猿も描かれています。
川には落ちた紅葉が流れ、季節を感じる美しさを添えています。
スケールが大きく、滝の轟音が聞こえてきそうですが、落ち葉から静寂も漂う作品です。
雅邦は芳崖亡き後、東京美術学校の教授として大観や春草ら若手を育成しました。

菱田春草「四季山水」
四季の情景を描いたもの。
桜、滝、紅葉に雪景。
丁寧に描かれた作品を見ていると日本の美しさを思い知らされます。

平櫛田中「鏡獅子」
六代目尾上菊五郎をモデルとした作品。
大胆に形作られ力強さを感じます。
国立劇場には同名の作品が展示されています。
見に行きたい。

下村観山「弱法師」
謡曲"弱法師"に取材したもの。
父を求めて摂津の天王寺にさまよう俊徳丸が、日輪を拝している場面。
画面構成など全てにおいて隙がない。
横浜美術館でも見た作品。
でも、こちらで見たほうがより素晴らしい。
展示空間が広いこと、また、鑑賞スペースも広いからかな。。
横浜は全体を見ようと後ろに下がるとすぐに壁となってしまいましたが、今回はどこまでも(ってことはないけど)後ろに下がって見れる!!
スケールの大きさがより伝わります。
じわっと感動する作品。
やばいな、、私、観山好きだ。

小林古径「楊貴妃」
楊貴妃といえば美人で名高いですが、この楊貴妃は無表情。
能の「楊貴妃」の一場面です。
能面つけているから無表情なのですが。。
玉簾のひそかな動きや役者の仕草などがミステリアスな雰囲気を出しています。
その一方で色は明るく美しい。

安田靫彦「飛鳥の春の額田王」
万葉歌人としても有名な額田王を描いたもの。
背景の大和三山には霞がたなびき、そこに凛と佇んでいます。
鮮やかな色彩も美しく、たおやかな雰囲気が素晴らしいです。

奥村土牛「閑日」
白い画面に赤い絨毯のようなものが描かれ、そこに座るペルシャ猫。
左側には赤い実の付いた枝。
ここまでに展示されている日本画の中では明らかに変わっています。
モダンな印象を与える作品。

《第2章 院展再興の時代 大正期の名作》
ここでは再興日本美術院展の日本画、洋画、彫刻から代表作が展示されています。

横山大観「遊刃有余地」
再興美術院展第1回出展作。
2幅の掛け軸です。
左は包丁を持った料理人の丁。
右は梁の主、文恵君。
牛をさばいたときのその技を褒めたところ、
"私の好むところは道であって技以上のものである"と丁が答えた場面。
再興美術院へのメッセージがこめられた作品です。

下村観山「白狐」
二曲一双の屏風です。
こちらも再興院展第1回出展作。
そして横浜美術館でも見ています。
琳派的な作品ですが、金泥、銀泥を使い自然を描写している様子は素晴らしい。
林に佇む白い狐。
周りには亡くなった岡倉天心や菱田春草をイメージできるモチーフを配置。
偲ぶ心が狐の寂しげな様子かな。。
天心は亡くなる直前に英文によるオペラ「白狐」を書いていたそうで、観山の師を思う気持ちが伝わってきます。

安田靫彦「五合庵の春」
背の高い木々が並ぶ道。
奥には庵があり、和尚の姿が見えます。
手前の道には少女が2人。
霞かかる、、というより湿っているかのような空気感があります。

川端龍子「佳人好在」
京都の老舗料亭「瓢亭」の室内とそこから見た庭の景色が描かれています。
人はいませんが、畳の上に膳が既に据えられています。
庭が美しいです。
池の様子や光の様子など。

小杉未醒「飲馬」
少年が馬に水を飲ませる情景が描かれています。
目を瞑り座り込む少年と静かに水を飲む馬。
明るい金色のような背景に黒い馬が映えます。
静かな祈りのような景色です。

足立源一郎「チューリップ」
セザンヌ的な作品。
白いクロスの上に置かれた青い花瓶。
そこには萎えかけたチューリップ。
明るい色彩なのに落ち着いて見えます。

戸張狐雁「虚無」
彫刻です。
背を丸め座り込む老人。
顔を下に向けていますが、考えているのか寝ているのか、、はたまた別なのか。。

《第3章 歴史をつなぐ、信仰を尊ぶ》
ここからは日本画のテーマ別に展示されています。
歴史画や信仰をメインとしています。

小林古径「竹取物語」
竹取物語の6つの場面が描かれています。
大伴御行が龍の首にかかる玉を取りにいった場面は遭難しそうになっているのに丁寧に描かれた波に見とれてしまいます。
月に帰ってしまうと知ったときの侍女が泣く場面も華やかです。
でもなんといってもクライマックスの「昇天」
華やか。
彩りもきれいです。
金色で囲まれているのですが、オーラのよう。

安田靫彦「卑弥呼」
噴煙をあげる阿蘇山を背景に玉枝を持つ卑弥呼が描かれています。
壮大な古代ロマンです。
色彩豊かで華やか。

平山郁夫「祇園精舎」
緑茂る森の中。
釈迦とその弟子たちが金色の光の中に影として浮かび上がります。
後光がさしているかのようで幻想的。

小山硬「天草(礼拝)」
天草の協会で祈る人々を描いた作品。
黒く太い輪郭線で描かれています。
祈るために組んでいる手は大きく祈りの強さを表しているかのよう。

《第4章 花。鳥。そして命を見つめて》
ここでは花鳥風月といったものが展示されています。

平山郁夫「天堂苑樹」
先ほどの作品に似ていますが。
深い緑の森の中。
金色に輝く釈迦と白い象。
静かで荘厳な雰囲気です。

那波多目功一「うすれ日」
満開の白い牡丹。
かすんだ太陽に照らされ、色彩は少ないのですが、美しさが際立ちます。
静かで気品のある作品。

横山大観「紅葉」
六曲一双の屏風。
とにかく色鮮やかで華やか。
左から右へ水が流れ、それを背景にした紅葉は真っ赤。
群青の上にプラチナで描かれた波が美しい。

須田�桝中「篝火」
四曲一隻の屏風。
激しい雨の中、暗闇に浮かび上がる篝火。
火の粉を撒き散らしながら空間を明るくしています。
鵜は暗い水の中を浮き沈みしています。
迫力あります。

小茂田青樹「虫魚画巻」
その名の通り、虫や魚を描いたもの。
銀地の水中を泳ぐ金魚や黒い背景に浮かび上がる蜘蛛と蜘蛛の巣。
赤紫のあざみやどくだみの白い花も映えます。
とても写実的で丁寧に描かれています。

《第5章 風景の中で》
ここには風景画が展示されています。

今村紫紅「熱国之巻(熱国之朝・熱国之夕)」
バンコク、シンガポール、ラングーンに寄港し、カルカッタに15日間滞在した紫紅。
その際に見聞きした光景を架空の風景として描いたもの。
点描で描かれ、金砂子が撒かれています。
牛車や椰子の木、海にかかる虹など装飾的です。

速水御舟「洛北修学院村」
群青の森の中。
描かれた村の家は童話の世界のよう。
木々や田畑は細密に描かれています。
色彩も美しく静かでのどかな景色です。

吉田喜彦「霧氷」
四曲一双の屏風。
全体が灰色に覆われ、ぼんやりとした世界です。
シルエットで表現された木々は元気がなさそうです。

小松均「雪の最上川」
とてもとても大きな作品。
壁一面を覆いつくしています。
雪景色の中を流れる最上川。
雄大な山々と水面に映る自然。
迫力あります。

後藤純男「淙想」
どこかで見たことある、と思って思い返したら根津美術館。
「那智瀧図」を連想させます。
この景色は那智ではなく北海道の層雲峡。
北海道に行ったときに後藤純男美術館に行ったことを思い出しました。
構造はちょっとキュビズム的な印象も与えます。
流れ落ちる滝の白さが目をひきます。
この作品は1969年、再興第54回院展で日本美術院賞・大観賞を受賞しました。

宮廻正明「天写田」
ウブドに一度は行ってみたい。
バリの棚田を描いた作品。
柔らかな曲線が美しい田園景色を作り上げています。
全体的にぼかされ、おぼろげな光が温かい。
静かな情景です。

村上裕二「市」
所狭しとテントが張られ、人がぎっしり。
少ない色彩でにぎやかな市を描いています。
活気あります。

大野百樹「谷川岳」
点描で描かれた山。
空にさす明るみは黄色とピンクで表現され、あたたかい景色を作り出しています。

大野逸男「水溜りの道」
雑木林の中の道に出来た水溜り。
太陽の光を反射し、金色に輝いています。
夕暮れの美しい一瞬を描いた作品。

《第6章 幻想の世界》
ここでは画家の心眼に映った幻想の世界が展示されています。

中村岳陵「婉膩水韻」
エメラルドグリーンの水の中、全裸で泳ぐ女性。
日本画で全裸の女性とは珍しいのではないでしょうか。
色彩はとても美しい。
泳いでいる周辺の景色も不思議です。

岩橋英遠「神々とファラオ」
エジプトの壁画と、画面下にはラクダの一群がシルエットで表現されています。
かすれ具合といい、壁画そのもの。
ゆっくりとした時が流れています。

郷倉和子「真昼」
燃えるように咲く芥子と枯れた芥子。
お辞儀をしたつぼみ。
その3つが一緒に描かれ不思議な世界を織り成しています。

荘司福「風化の柵」
これが日本画なのか、と驚く作品。
暗い背景に白く浮かび上がるのは壊れた仏像たち。
防人の柵近くに作られたお寺。
役目が終わると捨てられるか朽ちるかとなっています。
これはそういったものを描いた作品。
悲しい祈りの景色です。

松尾敏男「樹梅」
白い木、金の枝、梟、赤い丸い月。
作者は戦時中に成年を迎え、徴兵検査を受けました。
"これが絶作になるかもしれない"
毎日そのようなことを考え、自分の余命を考えるようになったそうです。
その気持ちは平和な世を迎えても消えずそのまま。
この作品は死を覚悟した記憶を巡るもの。
光を求めて影を描いたものだとか。
静寂の世界が逆に生を感じさせるのかもしれません。

《第7章 人のすがた》
最後です。
人を描いたものが展示されています。

小林古径「異端(踏絵)」
爽やかな色使いでピンクの蓮の花が目に付きます。
にこやかな3人の少女がしているのは"踏絵"の現場。
"踏絵"といえば暗いイメージですが、この作品の色使いからはそういった雰囲気は感じられません。

速水御舟「京の舞妓」
祇園の茶屋、吉はなの君栄を描いたもの。
"彼女の着ている群青の絞りの着物が描きたかった"
という作品。
その着物のみならず、九谷焼の壷までも細密に描かれています。
"美しく見せたいという醜態を舞妓に託した"
というなかなか深い作品です。

竪山南風「大観先生」
ゆったりとくつろぐ大観の姿が描かれています。
慕っていた様子が見て取れます。
竪山南風は大観に師事して43年。
70歳のときの作品です。

安田靫彦「風神雷神」
風神雷神と聞けば、国宝の俵屋宗達の屏風が思い浮かびます。
が、この描かれた風神と雷神
なんて軽快なんだろう。
現代風な若者の姿で描かれ、風袋も太鼓も持っていません。
こういって進化していくことが、これからの日本画を変えていくのかもしれません。

小倉遊亀「舞妓」
貝模様の着物が爽やか。
真っ白の空間に座っているのですが、プラチナ箔押しだそう。
胡粉を200回もかけたという背景は人物を美しく引き立てています。

菊川多賀「文楽」
文楽の舞台裏です。
人形のみが鮮やかに描かれ、黒子は見えず。
あくまで影の存在である黒子を、舞台裏でも暗く描き、その存在を徹底させています。
太い線で描かれ力強さを感じます。

西田俊英「プシュカールの老人」
腰をかけ、まっすぐにこちらを見つめる老人が描かれています。
その眼差しは温かくも冷たくも感じられ、長老として周りをまとめる不思議な求心力を感じました。
背景の深い緑に溶け込みそうです。

小倉遊亀「径」
母親、娘、犬が並んで歩く姿を描いています。
その構図はリズミカル。
人物の服は白でまとめられ、明るくモダンな印象を与えます。

以上になります。
盛りだくさんな内容で楽しめました。
後期も期待です。



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