見てきました
江戸東京博物館
会期は2014年1月2日から2014年3月2日。
「その1」で第1章から第3章までを書いたので、今日は残りの第4章から第6章を書いていきます。
《4章 浮世絵の黄金期》
浮世絵の黄金期は18世紀の後期を中心とした頃。
この時代に制作された浮世絵は、江戸の長い風俗画の歴史の中でもひときわ目立ちます。
優れた絵師が続々と輩出され、錦絵版画全盛の浮世絵の黄金期となりました。
この時期、美人画や役者絵は大型化し、さらに浮世絵の人気を高めました。
美人画の鳥居清長、青楼の絵師と謳われた喜多川歌麿、短期間の活躍で役者を残した東洲斎写楽、浮世絵界を席巻する歌川派を主導した歌川豊国、その門人たち。。
これらが展示されています。
鳥居清長「雛形若菜の初模様 あふきや内 遠路 里次 浦次」
早期の本格的な大判錦絵シリーズ。
雛形とは見本帳で、若菜初模様は正月に初めて着る着物の柄。
これは新作着物を描いたもの。
ファッション雑誌的なものなのです。
すらりとした遊女と禿2人。
着物が艶やかで新年に相応しいです。
鳥居清長「美南見十二候 六月」
品川は吉原よりも気楽ということでくつろいだ様子が見て取れます。
海を見渡せる室内で男女が様々なポーズをし、のんびりしています。
全体的に青く爽やかな印象です。
鳥居清長「大川端夕涼」
八頭身のスタイルのいい美人たちが大川端で夕涼みをしています。
清長は部屋の中に描かれていた女性たちを外に登場させました。
川からの涼しい風を感じられる作品。
鳥居清長「吾妻橋下の涼船」
大判3枚の作品。
納涼楽しむ男女の姿が描かれています。
手前の料理舟では江戸っ子の大好物、かつおが捌かれています。
船で納涼しながらかつお食べるとか楽しそうでいいなぁ。。
私も夏にやってみたい。。気がする。。。
左の女性の着物の袖が風でなびく様に季節を感じます。
喜多川歌麿「難波屋おきた」
これ、大注目の1枚。
両面に刷られている大変珍しい作品なのです。
私も初めて見たよ。
描かれているのは寛政三美人の一人、難波屋おきた。
有名ですな。
彼女の全身の姿の正面が片面に、その反対側に後姿が刷られています。
前と後ろで寸分違わぬ刷りの技術はため息もの。
前を見て、後ろを見て。
ぐるぐる何度も見てしまいます。
鳥居清長「駿河町越後屋正月風景図」
日本橋、駿河町の通りの景色。
道の両側には呉服商の越後屋。
大きな門松が飾られ正月のめでたい雰囲気が出ています。
道の向こうには富士山が真正面に。
この作品は越後屋の依頼で描かれたものと推測されているようです。
所蔵は三井記念美術館。
ですよね~。
喜多川歌麿「青楼十二時 続 子ノ刻」
吉原の遊女の生活を描いたシリーズ物。
フランスの個人所有だったものですが、最近日本が買い戻しました。
着物、髪飾りの鮮やかさが見事です。
保管状態の良さもうかがい知れます。
遠い国で大切にされていたんだね。。。
喜多川歌麿「画本虫撰 下」
版元は蔦谷重三郎。
歌麿のほかにも写楽を手がけるなど、江戸時代の名プロデューサーです。
(蔦谷重三郎についてはこちらの記事もどうぞ→「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」サントリー美術館)
これは虫を描いた作品ばかりが並んでいる本。
珍しい。。
非常に細やかで歌麿の観察眼と画力に驚きです。
喜多川歌麿「当時三美人 冨本豊ひな 難波屋きた 高しまひさ」
先ほど、おきたさんだけの作品がありましたが、寛政三美人が揃った作品です。
浮世絵の女性ってどれも同一人物なんじゃないかってぐらい同じ顔に見えますが、これを見ると3人とも描き分けられています。
目の形や眉、鼻筋なんかは分かりやすいかも。
うーん、、難しい。。。
喜多川歌麿「錦織歌麿形新模様 白打掛」
墨の線を極力なくそうとし、色の面だけで表現された作品。
黄つぶしの地、淡い紅色と緑色の組み合わせがとても美しい。
優美な印象です。
東洲斎写楽「3代目市川高麗蔵の志賀大七」
写楽デビュー作28枚のうちの1枚。
刀の柄を握る手に力がこもっています。
これまでの作品と違い、上半身だけを大きく取り扱ったことにより表情の迫力が増した気がします。
東洲斎写楽「市川蝦蔵の竹村定之進」
この作品、江戸博的には重要な作品でしょう。
江戸博のロゴマーク。
これはこの作品の左目をもとにデザインされたもの。
うん、下にこの作品があるけれどそっくり!!
大げさに表現された表情もおもしろい。
175勝川春英「2代目中村野塩の腰元お軽」
無背景のねずみつぶしに立ち姿。
ピンク色の着物に内側の緑が映えます。
可愛らしい印象です。
《5章 浮世絵のさらなる展開》
19世紀に入ると多くの浮世絵師が登場。
制作される数も増えます。
そして美人画、役者絵という2大分野に風景画が加わります。
色彩はさらに豊かになり、構図も誇張、強調されたものが増えるなどさらなる進化を見せます。
ここでは葛飾北斎が革新し、歌川広重がそれに続いた風景画および花鳥画、また歌川国芳の発想の豊かな作品が展示されています。
渓斎英泉「仮宅の遊女」
仮宅とは吉原が火事で焼けた際の仮営業所。
目の覚めるような青一色の作品。
これはベロ青(化学染料のベロ)を使用したもの。
青一色の濃淡で表現した世界は幻想的でもあります。
菊川英山「両国涼之図」
歌麿より現実的なプロポーションの人物。
料亭の2階で涼む人。
遊女の華やかさがまさに目立ちます。
渓斎英泉「江戸日本橋ヨリ富士ヲ見ル図」
周りをアルファベットのような文字で囲んだ不思議なもの。
日本橋を北西から見下ろした光景です。
江戸城とが見え、遠くには富士山も。
周りの文字の印象からかオリエンタルな感じがします。
葛飾北斎「紫陽花に燕」
紫陽花の花の色の微妙なグラデーションがとっても美しい。
燕は勢いよく描かれ動きを感じます。
こういった作品は新鮮。
でもとっても好き。
葛飾北斎「百物語 さらやしき」
有名なシリーズもの。
これは番長更屋敷から。
井戸から首を出すお菊さん。
その表情はこの世への未練と悔しさでいっぱい、、、、
ということはなく。
なんだか笑っているようなふっとぬけたような表情に見えます。
これは怖くなくなんとなく楽しい作品。
葛飾北斎「百物語 しうねん」
「しうねん」は「執念」
ぐるりと蛇が描かれています。
よく見ると卒塔婆の梵字は顔になっています。
恐ろしい情景は描かれていないけど、静かな恐怖が漂っています。
葛飾北斎「百物語 お岩さん」
お岩さんとは日本で最も有名な幽霊の一人、四谷怪談のお岩さんです。
こちらも恐ろしい感じはなく、全体的にこのシリーズは親しみやすさがあるかと。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
これも知らぬ人はいないというぐらいの有名なもの。
朝焼けで真っ赤にそまる富士山です。
シンプルながらに力強さを感じる名作です。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
これも有名かと。
大きな波と船。
その向こうに見える富士山。
ゴッホはこれを見て"あの波は爪だ。船がその爪につかまれているのだ"と言ったとか。
海外にも影響を与えた偉大な1枚です。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 甲州三嶌越」
でも、このシリーズなら私はこれが好き。
三島越は甲州から籠坂峠を越え、三島へ抜ける道のこと。
中央には大きな木。
旅人が手を繋いでその木の周りを囲んでいます。
その向こうに見えるは富士山。
優しい色使いでほのぼのとした印象です。
葛飾北斎「墨堤三美人」
墨田川に涼を求めた女性3人。
1人は水に入り、他の2人は縁台に座っています。
水の表現のなんと素晴らしいことか。
まったりとした空気が流れています。
葛飾北斎「端午の節句」
兜に花菖蒲。
艶やかな色使いで細密に描かれています。
北斎が85歳のときの作品。
この歳でもこれほどの作品を作り上げるのか、進化していくのかと驚かされる作品です。
葛飾応為「夜桜図」
暗闇が広がり星が輝く夜。
灯篭の灯りを頼りに一種思案の女性。
灯りに照らされた着物の鮮やかなこと。
紫陽花の花の可憐なこと。
おぼろげに浮かぶ桜の儚げなこと。
明暗、色使いなど全てにおいて美しい。
細かいところまで丁寧でその仕事っぷりに惚れ惚れです。
応為は北斎の三女。
北斎が「美人画は自分より上手い」と言ったほど。
この人の作品、覚えている中では今までに1つしか見たことがありません。
作品数が世界でも数点しか確認されていないという絵師。
太田記念美術館で見た「吉原格子先之図」
光と影の表現が素晴らしかったのです。
驚きしかなかった。
もっと見たいと思っていたから今回見れて嬉しい。
そして、その太田記念美術館で応為の「吉原格子先之図」が再び見れます。
「葛飾応為「吉原格子先之図」-光と影の美」
楽しみじゃ~!!!!!
歌川広重「木曽海道六拾九次之内 三拾弐 洗馬」
空には丸い月。
川には舟が浮かび人影も。
川岸の柳、葦がそよいでいます。
夕暮れが迫っていることをひしひしと、、冷たい風も感じられるような作品。
情緒あります。
歌川広重「名所江戸八景 大はしあたけの夕立」
ゴッホが油彩で模写したことでも有名な作品でこのシリーズの中でも傑作と言われるもの。
降りだした夕立に、傘や蓑をつけて足早に急ぐ人々の姿が描かれています。
橋の向こうはぼやけた景色。
雨の激しさを物語っています。
夕立の一瞬を描きとめる、広重の才能と発想が素晴らしいです。
歌川広重「近江八景之内 比良暮雪」
描かれているのは琵琶湖とその周辺、そして彼方の山。
山が比良山で雪景色です。
濃淡のみで描かれていますが、唯一、琵琶湖だけが青く描かれ美しい。
旅人などはシルエットで描かれ幻想的な感じです。
歌川国芳「八犬伝之内芳流閣」
滝沢馬琴(曲亭馬琴)の「南総里見八犬伝」の大物獲りの場面です。
舞台は利根川に面する3層の物見櫓芳流閣。
ですが、一番上の屋根だけを大きく描いています。
これだけでいかに高所であるか、などを伝えてくる構図は素晴らしい。
迫力があり国芳らしさ満点の作品。
歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」
三枚続きの作品。
画面いっぱいに描かれているのは鰐鮫という想像上の生き物。
うろこの描写が生々しくまた丁寧に描かれています。
こちらの作品も滝沢馬琴(曲亭馬琴)の「椿説弓張月」に取材したもの。
画面下方には白抜きの天狗。
行く手を阻まれた為朝一行を救うべく、讃岐院(崇徳上皇)が遣わしたもの。
白抜き天狗が目立ちます。
春好斎北洲「3代目坂東三津五郎の大判事清澄 4代目嵐小六の久我之助 3代目中村松江の娘ひな鳥 3代目中村歌右衛門の後室狭高」
歌舞伎役者が3人描かれている作品。
なぜこれを撰んだか。
目です。
なんだか不安感があるのです。
怖いのです。。。
《6章 新たなステージへ》
幕末から明治維新。
混乱の時代の中、浮世絵師も描く主題を模索し、迷走しました。
が、素晴らしい絵師は生まれています。
歌川国芳の門人である月岡芳年や西洋画を学んで独習したと伝えられる小林清親。
また大正から昭和にかけて、版元渡辺庄三郎による新版画の試みが登場。
橋口五葉や伊東深水、川瀬巴水などが活躍し、時代とともに変化していきます。
落合芳幾「東京両国川開之図」
花火が上がりそれを眺める人々。
「東京」と書かれた提灯。
「江戸」から「東京」に変わったときの様子です。
にぎやかで華やかで艶やか。
色使い多くて目が疲れる気もしますが。。笑
月岡芳年「東京名勝高輪 蒸気車鉄道之全図」
明治5年、新橋・横浜間に鉄道が開通するのに先んじて描かれたもの。
なので若干突っ込まずにはいられないのですが。。
橋の上から汽車を眺める人も汽車に乗る人洋装で華やかに着飾った人々が眩しいくらい。
たくさんの色で華やかです。
月岡芳年「奥州安達がはらひとつ家の図」
猿轡を噛まされ、半裸で逆さ吊りにされた妊婦とその下で刃物を研ぐ老婆。
恐ろしいこの作品、過去にも見ていてストーリーはそちらに詳細を書いているのでご参照下さい。
あ、手抜きじゃないよ!!
(記事はこちら→「没後120年記念 月岡芳年 (後期)」太田記念美術館)
なんど見ても恐ろしいのですが、平然と咲く夕顔が怖さを増しているようにも感じます。
小林清親「日本橋夜」
大好き、清親。
ガス灯の明かりでぼんやりと夜に浮かぶ日本橋。
そこを歩く人々はシルエット。
レトロな明かりが作り出す幻想的な光景です。
いいね、清親。
この作品、何度も見たことあるけれど、何度見ても好きだ。
楊州周延「千代田の大奥」
カルタに興じる女性たちが描かれています。
江戸城、、別名、千代田城。
その大奥の年中行事やそこで暮らす女性たちの姿を描いたシリーズもの。
こちらにも新しい時代が忍び寄っている様子が見えます。
楊州周延「欧州管弦楽器合奏之図」
洋装の男女が部屋の中で合奏をしています。
中央には楽器を引く人々、左端に歌う人々が描かれています。
部屋のなかの絨毯や幕など細かなところまで描かれ、その流行を知れます。
皆、洋装でその色使いは華やかです。
月と桜が見えるところに日本的な情緒を感じます。
橋口五葉「化粧の女」
ここまで来ると浮世絵というより大正モダンに入ってきます。
地は雲母潰し。
鏡を見ながら白粉をつける女性が色っぽいです。
雰囲気あります。
伊藤深水「対鏡」
鏡を見ながら髪を整える女性が描かれています。
白い肌に黒い髪。
なにより目立つ赤い襦袢。
背景には馬簾の跡を残しているのですが、逆におもしろく素敵です。
山村耕花「踊り 上海ニューカルトン所見」
上海ニューカルトンはレストラン、映画館、ダンスホールなどを備えた娯楽施設。
華やかな服装でカクテルを飲む女性が描かれています。
これぞ「モダン」といった感じです。
川瀬巴水「日本橋(夜明)」
夜明けのピンク色に染まる雲が印象的。
石造りの日本橋。
水面に映りこむ橋もまた素敵です。
以上、第6章まで見てきました。
とても疲れました。
そして人が多くてびっくり。
本当に有名な作品だらけでまだまだ書きたりないぐらいです。
浮世絵は品質管理などのため展示期間が短いのは知っていましたが。
今回、なんと、8つの期間に分かれています。
見たいものがある方は、HPなどでしっかり確認してから行ったほうがいいかと。
ぜひぜひ見に行ってください。
とってもおすすめです。
ブログランキングよかったらお願いします
江戸東京博物館
会期は2014年1月2日から2014年3月2日。
「その1」で第1章から第3章までを書いたので、今日は残りの第4章から第6章を書いていきます。
《4章 浮世絵の黄金期》
浮世絵の黄金期は18世紀の後期を中心とした頃。
この時代に制作された浮世絵は、江戸の長い風俗画の歴史の中でもひときわ目立ちます。
優れた絵師が続々と輩出され、錦絵版画全盛の浮世絵の黄金期となりました。
この時期、美人画や役者絵は大型化し、さらに浮世絵の人気を高めました。
美人画の鳥居清長、青楼の絵師と謳われた喜多川歌麿、短期間の活躍で役者を残した東洲斎写楽、浮世絵界を席巻する歌川派を主導した歌川豊国、その門人たち。。
これらが展示されています。
鳥居清長「雛形若菜の初模様 あふきや内 遠路 里次 浦次」
早期の本格的な大判錦絵シリーズ。
雛形とは見本帳で、若菜初模様は正月に初めて着る着物の柄。
これは新作着物を描いたもの。
ファッション雑誌的なものなのです。
すらりとした遊女と禿2人。
着物が艶やかで新年に相応しいです。
鳥居清長「美南見十二候 六月」
品川は吉原よりも気楽ということでくつろいだ様子が見て取れます。
海を見渡せる室内で男女が様々なポーズをし、のんびりしています。
全体的に青く爽やかな印象です。
鳥居清長「大川端夕涼」
八頭身のスタイルのいい美人たちが大川端で夕涼みをしています。
清長は部屋の中に描かれていた女性たちを外に登場させました。
川からの涼しい風を感じられる作品。
鳥居清長「吾妻橋下の涼船」
大判3枚の作品。
納涼楽しむ男女の姿が描かれています。
手前の料理舟では江戸っ子の大好物、かつおが捌かれています。
船で納涼しながらかつお食べるとか楽しそうでいいなぁ。。
私も夏にやってみたい。。気がする。。。
左の女性の着物の袖が風でなびく様に季節を感じます。
喜多川歌麿「難波屋おきた」
これ、大注目の1枚。
両面に刷られている大変珍しい作品なのです。
私も初めて見たよ。
描かれているのは寛政三美人の一人、難波屋おきた。
有名ですな。
彼女の全身の姿の正面が片面に、その反対側に後姿が刷られています。
前と後ろで寸分違わぬ刷りの技術はため息もの。
前を見て、後ろを見て。
ぐるぐる何度も見てしまいます。
鳥居清長「駿河町越後屋正月風景図」
日本橋、駿河町の通りの景色。
道の両側には呉服商の越後屋。
大きな門松が飾られ正月のめでたい雰囲気が出ています。
道の向こうには富士山が真正面に。
この作品は越後屋の依頼で描かれたものと推測されているようです。
所蔵は三井記念美術館。
ですよね~。
喜多川歌麿「青楼十二時 続 子ノ刻」
吉原の遊女の生活を描いたシリーズ物。
フランスの個人所有だったものですが、最近日本が買い戻しました。
着物、髪飾りの鮮やかさが見事です。
保管状態の良さもうかがい知れます。
遠い国で大切にされていたんだね。。。
喜多川歌麿「画本虫撰 下」
版元は蔦谷重三郎。
歌麿のほかにも写楽を手がけるなど、江戸時代の名プロデューサーです。
(蔦谷重三郎についてはこちらの記事もどうぞ→「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」サントリー美術館)
これは虫を描いた作品ばかりが並んでいる本。
珍しい。。
非常に細やかで歌麿の観察眼と画力に驚きです。
喜多川歌麿「当時三美人 冨本豊ひな 難波屋きた 高しまひさ」
先ほど、おきたさんだけの作品がありましたが、寛政三美人が揃った作品です。
浮世絵の女性ってどれも同一人物なんじゃないかってぐらい同じ顔に見えますが、これを見ると3人とも描き分けられています。
目の形や眉、鼻筋なんかは分かりやすいかも。
うーん、、難しい。。。
喜多川歌麿「錦織歌麿形新模様 白打掛」
墨の線を極力なくそうとし、色の面だけで表現された作品。
黄つぶしの地、淡い紅色と緑色の組み合わせがとても美しい。
優美な印象です。
東洲斎写楽「3代目市川高麗蔵の志賀大七」
写楽デビュー作28枚のうちの1枚。
刀の柄を握る手に力がこもっています。
これまでの作品と違い、上半身だけを大きく取り扱ったことにより表情の迫力が増した気がします。
東洲斎写楽「市川蝦蔵の竹村定之進」
この作品、江戸博的には重要な作品でしょう。
江戸博のロゴマーク。
これはこの作品の左目をもとにデザインされたもの。
うん、下にこの作品があるけれどそっくり!!
大げさに表現された表情もおもしろい。
175勝川春英「2代目中村野塩の腰元お軽」
無背景のねずみつぶしに立ち姿。
ピンク色の着物に内側の緑が映えます。
可愛らしい印象です。
《5章 浮世絵のさらなる展開》
19世紀に入ると多くの浮世絵師が登場。
制作される数も増えます。
そして美人画、役者絵という2大分野に風景画が加わります。
色彩はさらに豊かになり、構図も誇張、強調されたものが増えるなどさらなる進化を見せます。
ここでは葛飾北斎が革新し、歌川広重がそれに続いた風景画および花鳥画、また歌川国芳の発想の豊かな作品が展示されています。
渓斎英泉「仮宅の遊女」
仮宅とは吉原が火事で焼けた際の仮営業所。
目の覚めるような青一色の作品。
これはベロ青(化学染料のベロ)を使用したもの。
青一色の濃淡で表現した世界は幻想的でもあります。
菊川英山「両国涼之図」
歌麿より現実的なプロポーションの人物。
料亭の2階で涼む人。
遊女の華やかさがまさに目立ちます。
渓斎英泉「江戸日本橋ヨリ富士ヲ見ル図」
周りをアルファベットのような文字で囲んだ不思議なもの。
日本橋を北西から見下ろした光景です。
江戸城とが見え、遠くには富士山も。
周りの文字の印象からかオリエンタルな感じがします。
葛飾北斎「紫陽花に燕」
紫陽花の花の色の微妙なグラデーションがとっても美しい。
燕は勢いよく描かれ動きを感じます。
こういった作品は新鮮。
でもとっても好き。
葛飾北斎「百物語 さらやしき」
有名なシリーズもの。
これは番長更屋敷から。
井戸から首を出すお菊さん。
その表情はこの世への未練と悔しさでいっぱい、、、、
ということはなく。
なんだか笑っているようなふっとぬけたような表情に見えます。
これは怖くなくなんとなく楽しい作品。
葛飾北斎「百物語 しうねん」
「しうねん」は「執念」
ぐるりと蛇が描かれています。
よく見ると卒塔婆の梵字は顔になっています。
恐ろしい情景は描かれていないけど、静かな恐怖が漂っています。
葛飾北斎「百物語 お岩さん」
お岩さんとは日本で最も有名な幽霊の一人、四谷怪談のお岩さんです。
こちらも恐ろしい感じはなく、全体的にこのシリーズは親しみやすさがあるかと。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
これも知らぬ人はいないというぐらいの有名なもの。
朝焼けで真っ赤にそまる富士山です。
シンプルながらに力強さを感じる名作です。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
これも有名かと。
大きな波と船。
その向こうに見える富士山。
ゴッホはこれを見て"あの波は爪だ。船がその爪につかまれているのだ"と言ったとか。
海外にも影響を与えた偉大な1枚です。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 甲州三嶌越」
でも、このシリーズなら私はこれが好き。
三島越は甲州から籠坂峠を越え、三島へ抜ける道のこと。
中央には大きな木。
旅人が手を繋いでその木の周りを囲んでいます。
その向こうに見えるは富士山。
優しい色使いでほのぼのとした印象です。
葛飾北斎「墨堤三美人」
墨田川に涼を求めた女性3人。
1人は水に入り、他の2人は縁台に座っています。
水の表現のなんと素晴らしいことか。
まったりとした空気が流れています。
葛飾北斎「端午の節句」
兜に花菖蒲。
艶やかな色使いで細密に描かれています。
北斎が85歳のときの作品。
この歳でもこれほどの作品を作り上げるのか、進化していくのかと驚かされる作品です。
葛飾応為「夜桜図」
暗闇が広がり星が輝く夜。
灯篭の灯りを頼りに一種思案の女性。
灯りに照らされた着物の鮮やかなこと。
紫陽花の花の可憐なこと。
おぼろげに浮かぶ桜の儚げなこと。
明暗、色使いなど全てにおいて美しい。
細かいところまで丁寧でその仕事っぷりに惚れ惚れです。
応為は北斎の三女。
北斎が「美人画は自分より上手い」と言ったほど。
この人の作品、覚えている中では今までに1つしか見たことがありません。
作品数が世界でも数点しか確認されていないという絵師。
太田記念美術館で見た「吉原格子先之図」
光と影の表現が素晴らしかったのです。
驚きしかなかった。
もっと見たいと思っていたから今回見れて嬉しい。
そして、その太田記念美術館で応為の「吉原格子先之図」が再び見れます。
「葛飾応為「吉原格子先之図」-光と影の美」
楽しみじゃ~!!!!!
歌川広重「木曽海道六拾九次之内 三拾弐 洗馬」
空には丸い月。
川には舟が浮かび人影も。
川岸の柳、葦がそよいでいます。
夕暮れが迫っていることをひしひしと、、冷たい風も感じられるような作品。
情緒あります。
歌川広重「名所江戸八景 大はしあたけの夕立」
ゴッホが油彩で模写したことでも有名な作品でこのシリーズの中でも傑作と言われるもの。
降りだした夕立に、傘や蓑をつけて足早に急ぐ人々の姿が描かれています。
橋の向こうはぼやけた景色。
雨の激しさを物語っています。
夕立の一瞬を描きとめる、広重の才能と発想が素晴らしいです。
歌川広重「近江八景之内 比良暮雪」
描かれているのは琵琶湖とその周辺、そして彼方の山。
山が比良山で雪景色です。
濃淡のみで描かれていますが、唯一、琵琶湖だけが青く描かれ美しい。
旅人などはシルエットで描かれ幻想的な感じです。
歌川国芳「八犬伝之内芳流閣」
滝沢馬琴(曲亭馬琴)の「南総里見八犬伝」の大物獲りの場面です。
舞台は利根川に面する3層の物見櫓芳流閣。
ですが、一番上の屋根だけを大きく描いています。
これだけでいかに高所であるか、などを伝えてくる構図は素晴らしい。
迫力があり国芳らしさ満点の作品。
歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」
三枚続きの作品。
画面いっぱいに描かれているのは鰐鮫という想像上の生き物。
うろこの描写が生々しくまた丁寧に描かれています。
こちらの作品も滝沢馬琴(曲亭馬琴)の「椿説弓張月」に取材したもの。
画面下方には白抜きの天狗。
行く手を阻まれた為朝一行を救うべく、讃岐院(崇徳上皇)が遣わしたもの。
白抜き天狗が目立ちます。
春好斎北洲「3代目坂東三津五郎の大判事清澄 4代目嵐小六の久我之助 3代目中村松江の娘ひな鳥 3代目中村歌右衛門の後室狭高」
歌舞伎役者が3人描かれている作品。
なぜこれを撰んだか。
目です。
なんだか不安感があるのです。
怖いのです。。。
《6章 新たなステージへ》
幕末から明治維新。
混乱の時代の中、浮世絵師も描く主題を模索し、迷走しました。
が、素晴らしい絵師は生まれています。
歌川国芳の門人である月岡芳年や西洋画を学んで独習したと伝えられる小林清親。
また大正から昭和にかけて、版元渡辺庄三郎による新版画の試みが登場。
橋口五葉や伊東深水、川瀬巴水などが活躍し、時代とともに変化していきます。
落合芳幾「東京両国川開之図」
花火が上がりそれを眺める人々。
「東京」と書かれた提灯。
「江戸」から「東京」に変わったときの様子です。
にぎやかで華やかで艶やか。
色使い多くて目が疲れる気もしますが。。笑
月岡芳年「東京名勝高輪 蒸気車鉄道之全図」
明治5年、新橋・横浜間に鉄道が開通するのに先んじて描かれたもの。
なので若干突っ込まずにはいられないのですが。。
橋の上から汽車を眺める人も汽車に乗る人洋装で華やかに着飾った人々が眩しいくらい。
たくさんの色で華やかです。
月岡芳年「奥州安達がはらひとつ家の図」
猿轡を噛まされ、半裸で逆さ吊りにされた妊婦とその下で刃物を研ぐ老婆。
恐ろしいこの作品、過去にも見ていてストーリーはそちらに詳細を書いているのでご参照下さい。
あ、手抜きじゃないよ!!
(記事はこちら→「没後120年記念 月岡芳年 (後期)」太田記念美術館)
なんど見ても恐ろしいのですが、平然と咲く夕顔が怖さを増しているようにも感じます。
小林清親「日本橋夜」
大好き、清親。
ガス灯の明かりでぼんやりと夜に浮かぶ日本橋。
そこを歩く人々はシルエット。
レトロな明かりが作り出す幻想的な光景です。
いいね、清親。
この作品、何度も見たことあるけれど、何度見ても好きだ。
楊州周延「千代田の大奥」
カルタに興じる女性たちが描かれています。
江戸城、、別名、千代田城。
その大奥の年中行事やそこで暮らす女性たちの姿を描いたシリーズもの。
こちらにも新しい時代が忍び寄っている様子が見えます。
楊州周延「欧州管弦楽器合奏之図」
洋装の男女が部屋の中で合奏をしています。
中央には楽器を引く人々、左端に歌う人々が描かれています。
部屋のなかの絨毯や幕など細かなところまで描かれ、その流行を知れます。
皆、洋装でその色使いは華やかです。
月と桜が見えるところに日本的な情緒を感じます。
橋口五葉「化粧の女」
ここまで来ると浮世絵というより大正モダンに入ってきます。
地は雲母潰し。
鏡を見ながら白粉をつける女性が色っぽいです。
雰囲気あります。
伊藤深水「対鏡」
鏡を見ながら髪を整える女性が描かれています。
白い肌に黒い髪。
なにより目立つ赤い襦袢。
背景には馬簾の跡を残しているのですが、逆におもしろく素敵です。
山村耕花「踊り 上海ニューカルトン所見」
上海ニューカルトンはレストラン、映画館、ダンスホールなどを備えた娯楽施設。
華やかな服装でカクテルを飲む女性が描かれています。
これぞ「モダン」といった感じです。
川瀬巴水「日本橋(夜明)」
夜明けのピンク色に染まる雲が印象的。
石造りの日本橋。
水面に映りこむ橋もまた素敵です。
以上、第6章まで見てきました。
とても疲れました。
そして人が多くてびっくり。
本当に有名な作品だらけでまだまだ書きたりないぐらいです。
浮世絵は品質管理などのため展示期間が短いのは知っていましたが。
今回、なんと、8つの期間に分かれています。
見たいものがある方は、HPなどでしっかり確認してから行ったほうがいいかと。
ぜひぜひ見に行ってください。
とってもおすすめです。
ブログランキングよかったらお願いします
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます