言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

消費者物価指数

2010-09-23 | 日記
田中秀臣 『デフレ不況』 ( p.18 )

 二〇一〇年一月二九日、総務省が二〇〇九年一二月の全国の消費者物価指数 (CPI) を発表しました。結果は前年同月に比べて一・七%の下落で、基準年である二〇〇五年の水準も下回っています。消費者物価指数が前年同月を下回るのはこれで一一ヵ月連続で、二〇〇九年平均の消費者物価指数も前年比一・四%の下落となっています。
 この下落率は比較可能な一九七一年以降で最大を記録するもので、景気の悪化とデフレの加速を裏付けるものでした。
 現在の日本は、内的原因と外的原因の複合した、いわば「二段階不況」の状態にあります。
 まず内的原因とは二〇〇六年の日本銀行によるゼロ金利政策と量的緩和政策の解除、利上げという一連の「出口政策」の実施です。
 この出口政策については後にくわしく検討しますが、結論からいえば、実質的なデフレ状態の中での金融政策の転換でした。「実質的なデフレ」ということについては少し説明が必要でしょう。
 日本経済の物価を見る指標として重要視されているのは、総合消費者物価指数 (CPI) や、そこから生鮮食料品を除いた消費者物価指数 (コアCPI) 、そして生鮮食料品とエネルギー関連を除外した消費者物価指数 (コアコアCPI) 、そしてほかにはGDPデフレーター (物価変動指数) という指標があります。
 日本銀行が金融政策を転換する際に重視したと思われるもの (思われるというのも変ですが、実は何を重視して政策を決めているのか不透明なのです。これは後で見ていきます) は、生鮮食料品を除く消費者物価指数の動きでした。
 日本銀行が出口政策をとった二〇〇六年の三月では、二〇〇五年一一月と一二月のコアCPIがそれぞれ前年比〇・一%の上昇率だったということを見ての判断でした。
 ところがFRB (連邦準備制度理事会) など欧米の主要中央銀行が重視しているコアコアCPIはそれぞれマイナス〇・一%、〇%という状態でした。コアCPIもゼロ近傍、コアコアCPIはマイナスかゼロという状態で、常識的にはデフレを脱却したとはとてもいえない状態でした。
 実際にその後の推移を見てもコアCPIは石油価格の急激な上昇を受けて二〇〇八年に一時的に一~二%台に達しましたが (コアコアCPIはマイナスからゼロ近傍) 、それ以外は現在に至るまでゼロ近傍ないしマイナスです。
 このような意味から「出口政策」のときの日本経済の状態は「実質デフレ」の状態であったといえるでしょう。
 経済がこのような実質デフレ状態の中で中央銀行が引き締めに転じたことは、マクロ経済学の見地からすると、経済が減速することを意味します。これによって「二段階不況」の第一段階の準備が整うことになります。
 金融政策が実際に経済に影響を与えるまでにはタイムラグが働きますから、引き締めの効果は一年から一年半ほど後に出てきます。結果は、まさにわたしたちエコノミストが危惧 (きぐ) していた通り、日本経済は二〇〇七年の頭から減速し始めることになりました。
 つまり、二〇〇八年九月にリーマン・ショックが起きる以前から、実は日本経済は自ら景気下方局面の引き金を引いていたのです。もちろんリーマン・ショック以前の景気の減速には、日本銀行のゼロ金利・量的緩和解除以外の要因も考えられます。それは政府の行った定率減税の廃止です (二〇〇六年度と〇七年度の両方で半額ずつ実施) 。これは事実上の増税でした。この増税と日本銀行の金融引き締めスタンスへの転換の効果が重なったということは指摘してもいいでしょう。

(中略)

 さて、以上のように、ゼロインフレ近傍の中での金融引き締めという不安定な状態で、さらになんらかの外的な要因が作用すれば、日本経済はたちまちデフレに舞い戻ることになります。
 そして現実には、不幸にもわたしたちの懸念した通り、リーマン・ショックという最悪の外的要因が発生。日本ばかりか先進国経済全体を金融危機と不況が飲み込んでいくことになりました。先進国の中でも日本が最も深い不況に見舞われたのは、日本が実質デフレという脆弱な経済の体質を持ちながら、それが日本銀行と政府との同時的な緊縮政策によってさらに不安定化していたことによると思われます。


 現在の日本は、内的原因と外的原因の複合した「二段階不況」の状態にある。内的原因とは日銀によるゼロ金利政策・量的緩和政策の解除、利上げという出口政策の実施であり、外的原因とはリーマン・ショックである、と書かれています。



 日本経済の状況を見るうえで、

   総合消費者物価指数 (CPI)
   消費者物価指数 (コアCPI)    …生鮮食料品を除外 (日銀が重視?)
   消費者物価指数 (コアコアCPI)  …生鮮食料品とエネルギー関連を除外
   物価変動指数 (GDPデフレーター)

が有益である、とりわけ、日銀はコアCPIを重視し、FRBなどの欧米主要中央銀行はコアコアCPIを重視している、とのことなので、早速、調べてみます。

総務省統計局・政策統括官・統計研修所」の「平成17年基準 消費者物価指数 全国 平成22年7月分(PDF:141KB)

を見ると、たしかに「最近の」物価は下落基調であることがわかります。しかし、2006 年以降、「わずかに」物価は上昇傾向をたどっており、「当時の」日銀の判断を否定してよいものか、やや疑問があります。

 もちろん、「後から見れば」著者の指摘はもっともなのですが、「当時の」日銀の判断をいちがいに否定してよいのか、(私には) わかりません。



 とはいえ、日銀が「量的緩和を嫌い、利上げを好む傾向にある」ということはいえると思います。

 おそらく、日銀が量的緩和を嫌っているのは、「量的緩和を行ったところで、国債が買われるだけで、デフレ脱出効果はない」と考えているからではないかと思います (「「流動性の罠」 対策」参照 ) 。また、利上げを好むのは、「通常の金融政策が効果を発揮する状況、すなわちゼロ金利ではない状態に、なるべく早く戻りたい」からではないかと思います。

 まず、利上げの是非については、完全にデフレを脱出していない以上、「通常の金融政策が効果を発揮する状況」に戻ろうとすること自体が「おかしい」と考えるべきで、(本当にこのような理由であれば) 日銀の姿勢には問題がある、と考えられます。

 次に、量的緩和の是非については、「効果がないかもしれないが、試してみる価値はある」と思われますし、「打てる手は次々に打つべき」だと考えられます (「金融政策と財政政策、どちらが効果的か」参照 ) 。



 ところで、先日の為替介入のあと、介入資金を吸収しない方針が決定されました (「円売り介入の効果」参照 ) 。

 これで日本は一歩、金融緩和に踏み出したことになりますが、

 著者の主張するように、金融緩和にデフレ脱出効果があるのか、(この本を資料として) 再度、考えたいと思います。

弁護士法 56 条に定める「品位を失うべき非行」の基準

2010-09-22 | 日記
弁護士と闘う」の「もう~やけくそ! 橋下徹弁護士【大阪】

橋下弁護士の発言

(中略)

私の予測ですが誰かが橋下徹弁護士の今回の発言について
懲戒請求を出すと思います。たぶん~


では過去にこういう事例があったかどうか

東京弁護士会で1件あります

(中略)

① 公告
② 所属   東京弁護士会
③ 氏名   今井 滋雄 18396
④ 事務所  東京都板橋区高島平2-26       今井法律会計事務所
⑤ 懲戒の種別 業務停止1年6月
⑥ 処分の効力の生じた日  2002年12月26日
⑦ 処分の要旨
被懲戒者(今井弁護士)は除名になった元弁護士を使い多重債務者の 債務整理事件をさせたなどの弁護士法27条違反をおこなった

この懲戒処分に腹を立てた今井先生が東京弁護士会役員86名に
懲戒を出した、しかし逆に自分がまた懲戒処分された

    公 告
① 所属  東京弁護士会
② 氏名  今井 滋雄  18396
③ 事務所 東京都板橋区高島平2-26
      今井法律会計事務所
④ 懲戒の種別 業務停止6月
⑤ 処分の要旨

(中略)

4 被懲戒者(今井)は同年5月18日等数回にわたり懲戒請求書その他の書面を東京弁護士会に提出する際、対応した同会事務局綱紀担当職員に対して
「自分が提出した書類は一切触るな」
「お前は俺の会費で給料を貰っているのだから俺の言うことをきけ」
「お前は弁護士会の寄生虫だ懲戒免職にして首にしてやる」
「損害賠償を請求するから退職金はないと思え」
といった趣旨のことを大声で申し述べその後も数回電話を掛け同職員に対して同様の発言を長時間おこなった。

5 以上の被懲戒者の行為は弁護士法第56条に定める品位を失うべき非行に該当するものである
処分の効力の生じた日 2002年12月26日
               2003年3月1日 日本弁護士連合会


 日本弁護士連合会 (日弁連) によって、弁護士法第 56 条に定める「品位を失うべき非行」に該当すると判断された事例が示されています。



 上記は、「品位を失うべき非行」の判断基準として、参考になると思います。最初に、法令を引用します。



法令データ提供システム」の「弁護士法(昭和二十四年六月十日法律第二百五号)」 ( 最終改正:平成二一年七月一五日法律第七九号 )

(懲戒事由及び懲戒権者)
第五十六条  弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
2  懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。
3  弁護士会がその地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して行う懲戒の事由は、その地域内にある従たる法律事務所に係るものに限る。


 弁護士法第 56 条には、弁護士懲戒事由として、「品位を失うべき非行があったとき」と定めています。



 さて、日弁連は、
「自分が提出した書類は一切触るな」
「お前は俺の会費で給料を貰っているのだから俺の言うことをきけ」
「お前は弁護士会の寄生虫だ懲戒免職にして首にしてやる」
「損害賠償を請求するから退職金はないと思え」
といった趣旨のことを大声で申し述べその後も数回電話を掛け同職員に対して同様の発言を長時間おこなった。
場合には、上記、弁護士法第 56 条に定める「品位を失うべき非行」にあたる、と判断したことになります。

 とすると、私のケース、すなわち、第一東京弁護士会 (一弁) の湯山孝弘弁護士による言動、たとえば、

私の法律上の権利行使に対して
  (威張りながら) 「(法律に従うことは) で~きな~いから~あ」
  (小馬鹿にして) 「(法律に従うことは) でえっきないから~あ」

あるいは、一方的にカネを振り込んでおいて、
  (暗に要求して) カネをやったんだから、「ある事柄」 を公的機関に伝えないように

私が、カネを振り込まれても迷惑なのですが、と伝えたあと、
  (怒鳴って) 「なんだ~あ? あれは!? 迷惑だと言ってるのと同じじゃないか!!
         温情だーーーーーっ!!」

私のどういう行為が、どういう意味で問題なのか、具体的に示さず、
  (私に対して) 「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対に許されないことをした」と非難、

私が「それでは警察に行って自首しようと思いますが、かまいませんか?」と聞くと、
  (問いに答えず) 「警察に行く必要はない」の一点張り


などの場合には、まず間違いなく、「品位を失うべき非行」にあたる、と考えてよいでしょう (「弁護士による「詭弁・とぼけ」かもしれない実例」参照 ) 。



 もっとも、弁護士が弁護士会役員に対して懲戒請求した場合には、上記行為は「品位を失うべき非行」にあたるが、そうではない場合には、弁護士が上記行為を行っても「品位を失うべき非行」には「あたらない」、という可能性もあります。しかし、このようなダブル・スタンダードによって、日弁連が判断することはないだろうと思います。



 しかし、湯山孝弘弁護士によれば、

   「君は反省が足りない」
   「なんで (弁護士である俺が) あやまらないといけないのか」

とのことなので、湯山弁護士の認識では、

   湯山弁護士には問題がなく、私に問題がある、ということになるはず

ですが、上記のとおり、具体的に「私のどういう行為が、どういう意味で問題なのか」を教えてくれないので、私としては、

   反省しようにも、反省のしようがない

わけです。

 湯山弁護士におかれましては、ぜひ、「私のどういう行為が、どういう意味で問題なのか」を教えていただければ、と思います。よろしくお願いいたします。



 と、書いていると、

   「私のどういう行為が、どういう意味で問題なのか」を、「わざと示さず」に、

名誉毀損で訴えられるのでしょうか… (「表現の自由と、個人情報保護・名誉毀損について」参照 ) 。

弁護士懲戒委員会のメンバー構成には問題がある

2010-09-22 | 日記
弁護士と闘う」の「弁護士会懲戒委員会の構成・大阪・京都・日弁連

【大阪弁護士会懲戒委員会】

① 委員長 M   弁護士    元弁護士会副会長
② 委員  0    弁護士      
③ 委員  A   弁護士      
④ 委員  O   弁護士
⑤ 委員  K   弁護士
⑥ 委員  M   弁護士
⑦ 委員  S   弁護士
⑧ 委員  N   弁護士
⑨ 委員  O    弁護士 
⑩ 委員  M   憲法学者  大学
⑪ 委員  N   検察官
⑫ 委員  T   大学法学部
⑬ 委員  H   高等検察官
⑭ 委員  H   裁判官
⑮ 委員  T    地検検事

以上15名ですが大阪弁護士会はもうひと組の懲戒委員会があります

  【京都弁護士会懲戒委員会】 

①  委員長 S    弁護士
②  委員  K    弁護士
③  委員  A    弁護士
④  委員  N    弁護士
⑤  委員  T    地検検事
⑥  委員  D    大学法学部
⑦  委員  M    京都地裁裁判官
⑧  委員  U    裁判官
⑨  委員  T    弁護士 


【日弁連の懲戒委員会】

① 委員長  弁護士 東京弁護士会 
② 委員   6名の弁護士  大阪 東京 第一東京 神奈川
③ 委員   裁判官 
④ 委員   裁判官
⑤ 委員   検事   東京地検特捜部
⑥ 委員   検事   最高検
⑦ 委員   大学教授  法学部
⑧ 委員   参議院内閣法制局長 
⑨ 委員   朝日新聞 論説委員 

以上14名 議決書には署名、捺印があります
日弁連もあと何組かの懲戒委員会があります


 日弁連、大阪弁護士会、京都弁護士会における、懲戒委員会のメンバー構成が書かれています。



 上記メンバー構成が本当であるとすると (おそらく本当だろうと思いますが) 、弁護士懲戒制度には問題がある、とみてよいのではないかと思います。



 弁護士自治・弁護士懲戒制度について、以前、このブログに弁護士さんからコメントをいただいたことがあります。

   (現行の) 弁護士会への強制加入をやめて、
   弁護士懲戒権限も弁護士会から他の機関に移したほうがよい、

という趣旨のコメントです。そのとき、私は

   強制加入については、とりあえず現行制度でよいと思いますが、考えてみます。

   弁護士懲戒制度 (…の運用) の問題については、
     懲戒権限がどの機関に属しているかではなく、懲戒委員会のメンバー構成が重要であり、
     メンバー構成を改革することを優先すべきだと思います。

といった方向でご返事しました ( たとえば「弁護士増員の 「受け皿」 はあるらしい」のコメント欄など ) 。



 弁護士懲戒委員会のメンバー構成が上記引用のとおりであるとすると、

   (懲戒委員会の議決権を有する) 委員の半数以上が弁護士

であり、(弁護士同士の争いの場合はともかく) 市民が懲戒請求を申し立てた場合、

   弁護士に有利になる傾向がある (=仲間の弁護士をかばう可能性が高い) 、

と考えられます。

 実際、懲戒請求を申し立てても、弁護士に有利になる傾向がある、すなわち、「処分が甘すぎる」といった意見が (弁護士のなかにも) あります。早急にメンバー構成を見直すべきだと思います。

 弁護士会は「司法修習生に対する給費制維持」を主張したり、増員見直しを主張する前に、懲戒委員会のメンバー構成など、弁護士懲戒制度を見直すべきではないでしょうか。いまのままでは、弁護士会が「社会正義・公平」を主張していても、本音は「利益獲得・既得権維持」だろ、と誤解されかねません (「日弁連の「司法修習生に対する給費制維持」論について」・「弁護士増員に反対する弁護士の本音」など参照 ) 。



 なお、弁護士懲戒制度については、懲戒委員会のメンバー構成のほかにも「弁護士懲戒制度は不公平である」に指摘した問題点 (不服申立制度が弁護士に一方的に有利) があります。

 また、弁護士自治については、私はいまのところ、「弁護士業界は病んでいるのかもしれない」こともあり、「弁護士自治を弱めてもよいかもしれない」と考えています。つまり、弁護士自治制度を廃止すべきである、とまでは考えていません。

おそらく最善の雇用対策

2010-09-21 | 日記
日本経済新聞」の「高卒求人倍率、7月末0.67倍 就職氷河期と同水準」( 2010/9/17 20:54 )

 来春、高校を卒業する就職希望者の求人倍率は今年7月末時点で0.67倍で、前年同時期より0.04ポイント下がったことが17日、厚生労働省のまとめでわかった。低下は2年連続。0.5~0.6倍台で推移した「就職氷河期」の2000~04年ごろと同じ水準で、1984年の調査開始以来、6番目に低い。

 厚労省は「リーマン・ショック後に大きく落ち込んだ昨年より一段と低下しており、深刻だ。景気は持ち直しつつあるとされるが、先行きの不透明感が企業の採用意欲を低下させている」と分析している。

 厚労省によると、全国の求職者数は約18万7千人で前年同時期より2.3%減ったのに対し、求人数は約12万5千人と7.6%減少した。

 都道府県別で求人倍率が1倍を超えたのは東京(2.23倍)、愛知(1.21倍)、京都(1.11倍)、大阪(1.4倍)、広島(1.06倍)の5都府県だけで、最低は沖縄(0.12倍)だった。

 来春、中学校を卒業する就職希望者の求人倍率は0.21倍で0.02ポイント低下。求人数は459人で13.9%減り、調査開始以来最低だった。


 高卒の求人倍率が 7 月末時点で 0.67 倍、中卒の求人倍率にいたっては 0.21 倍となった。沖縄県の高卒求人倍率は 0.12 倍である、と報じられています。



 大卒の求人状況も同じようなものだと思います。

 現状を打開する手立てとして、自衛隊に目を向ければよいのではないか、と思います。防衛予算を増やし、自衛隊員の募集を増やす、という政策です。

 私の主張は、「軍事的安全保障の限界と、その有効性」に述べた発想、すなわち、軍事力に頼ってばかりではいけないが、それでもなお、一定の軍事力は必要である、という思考が基礎になっています。また、「非武装防衛の具体的方法」をみるかぎり、非武装防衛は非現実的であることも考慮しています。



 私とほぼ同じことを考えていらしたジャーナリストがおられます。ブログを引用します。



櫻井よしこブログ」の「二番底懸念が高まる日本に雇用と安保を両立させる策

今、大卒者の就職内定率は過去10年間で最低の80・0%、高卒者は81・1%で2004年以来の低水準にある。就職難を乗り切るには、雇用者が雇用できる環境づくりを急がなければならない。

輸出に支えられる日本経済は、円独歩高で文字どおり、悲鳴を上げている。輸出産業の基盤を揺るがす緊急事態の前で、首相はいかにも無策で意欲の欠如だと見なされる言動を慎み、為替で日本の産業力を殺ぐ事態は受け入れないとの強い政治的意思を発信しなければならない。そのために日本銀行総裁とじかに会い、意思疎通を図るのだ。

自民党時代には日銀総裁も参加する経済財政諮問会議があった。民主党は同会議を廃止したが、経済閣僚と日銀総裁が意見交換する新たな場をつくっていない。もともと、経済も金融も苦手とされる菅首相である。自身の国際社会に向けての発言力を高めるためにも、首相を支える強い構えをつくり、その基盤に立って発信することだ。

こうして円高を是正し、企業の基盤を強化し、雇用の改善につなげるとともに、政府が雇用を進める方法もある。一例が定員不足に悩む自衛隊の新規隊員を増やすことだ。日本周辺諸国がこぞって軍事予算を増やすのとは対照的に、わが国のみ国防予算を削り隊員を減らし続け、全部隊がすでに定員割れを来している。にも拘らず、来年度の新規採用は陸海空合わせて1,935人、5年前の5分の1で史上最少の採用数にとどまる。

結果、自衛隊は「ワイングラス」と呼ばれる年齢構成に向かっている。若い隊員が、中高年の隊員に比べて極端に少なく、年齢が下にいくほど、ワイングラスの脚のように細くなるのだ。これでは自衛隊は機能しなくなる。

隊員の初任給は年額320万円。1万人を新規採用しても、320億円だ。政府は2兆3,000億円の子ども手当を、来年度さらに上積みする構えだ。この兆円規模のバラまきは防衛省など他省庁の予算を一律10%削減して充当する。そのごく一部の負担で自衛隊員を増やすほうが日本のためになる。

中国の軍事的脅威への備えを、少し強化できるのが第一の意義だ。若者たちの教育機関として実績を上げてきた自衛隊で、心身共に信頼に堪える若者たちを育てる効果もある。著しく厳しい地方の就職状況を緩和し、働き口も供給できると思うが、どうか。


 自衛隊員を増やせば、中国の軍事的脅威への備えにもなり、若者たちを育てる効果もある。そのうえ、働き口の供給にもなる、と書かれています。



 まず、雇用の確保という面で、自衛隊員を増やす政策が効果的なのはいうまでもありません。

 私のいう「雇用の確保」とは、たんに (目先の) 働き口の供給、というにとどまらず、その先を見据えています。日本の場合、新卒の段階で仕事がみつからなければ、一生、フリーターを続けることになりかねません。そこで、自衛隊が一種のバッファ (緩衝材) の役割を担い、履歴に穴 (あな) があかないようにする、という意味合いを込めています。

 一生、自衛隊員として過ごす気持ちのない者であっても、「とりあえず」としてなら、自衛隊を考えるのではないでしょうか。自衛隊員は立派な国家公務員ですし、「とりあえず」としては、十分すぎるほど魅力的だと思います。

 企業としても、自衛隊員としての厳しい訓練に耐えてきた者であれば、積極的に採用したい、と考えるのではないかと思います。すくなくとも、アルバイトをして過ごしてきた者に比べれば、はるかに魅力的な若者に映るはずです。

 この方法のいいところは、自衛隊員として採用する若者が、かならずしも「新卒でなくともよい」というところです。この方法には、新卒時の社会状況によって、

   フリーターとしての暮らしを強いられている人々に、
     「正社員になる道筋、ステップを提供する」

という意味合いがあります。



 次に、(彼らが一生、自衛隊員として過ごす場合はもちろん) 彼らが「いったん」自衛隊員として過ごした後、民間企業に職を得た場合を考えると、

   国民のなかに、自衛隊に理解を示す人が増える

効果が見込めます。日本ではなぜか、「反戦平和=自衛隊反対」といった考えかたをする人が多数、おられるのですが、そのような人々のなかに、徐々に、自衛隊に理解を示す人々、自衛隊に親近感を持つ人々が増えることが期待されます。上述のとおり、私は「自衛隊は国防上、必要である」と考えていますので、自衛隊に理解を示す人々を増やす政策は、ぜひとも、行うべきだと考えます。



 上記報道記事にあるとおり、基地問題に揺れる沖縄県の求職状況がとりわけ厳しいのであれば、この政策は、なおさら行うべきではないでしょうか。沖縄県の求職状況を劇的に改善する効果があります。

 また、いまは尖閣諸島沖漁船衝突事件をめぐって、中国の軍事的脅威に対する関心も高まってきていますし、この政策は、社会に受け容れられやすいのではないかと思います。

 ( さらに、中国の圧力に対する「牽制 (けんせい)」としての効果も見込める政策だと思います )

円売り介入の効果

2010-09-20 | 日記
REUTERS」の「日銀は15日実施の為替介入資金を市場に放置、17日の吸収オペ見送り」( 2010年 09月 17日 13:13 JST )

 [東京 17日 ロイター] 日銀は17日、定例金融調節で資金吸収オペを見送った。これにより15日に政府・日銀が実施した円売り・ドル買い介入の資金が実質的に全額市場に残ることが確定した。

 15日の為替介入は決済日が17日となり、介入で売却した円が市場に供給される。日銀は16日午後、17日スタートの共通担保資金供給オペを通知したが、規模は17日に期日を迎える同オペ(8月16日スタート)と同額の1兆円で、市場では介入資金を吸収しない方針を明確にしたものと受け止められていた。17日午後の定例調節でも即日オペを見送り、介入に伴う資金を金融市場に放置する「非不胎化」を日銀が実施し、政府の為替介入に歩調を合わせるとともに、金融緩和に近い効果を目指したこととなる。

 非不胎化については、日々の国庫の資金の出入りは介入資金に限らず、さまざまなものがあることに加え、介入資金もいずれ政府が短期証券を発行して吸収することになるため、市場では「意味のない議論」との指摘が聞かれるほか、当局の間でも「神学論争の世界」という声もある。ただ、政府の介入に対して、日銀が資金吸収しない姿勢を明確にすることは、政府・日銀の協調をアピールする効果もあるとみられている。

 なお日銀は16日、金融機関の手元資金の総量を示す日銀当座預金残高が、17日は財政等要因で2兆2600億円の余剰となるとの見通しを公表。これは東京短資など民間短資会社3社が予想する余剰額4000億─5000億円と比べて1兆8000億円ほど多いため、為替介入は1兆8000億円規模にのぼったとみられる。


 15 日に実施された円売り介入の資金 ( 1 兆 8000 億円規模とみられる ) が全額市場に残ることが確定した、と報じられています。



 外国為替市場は大きいので、為替介入には効果がないという説もありますが、私は効果がある、とみています (「為替介入には効果がない?」参照 ) 。

 実際、今回の介入で、およそ 2 円 ~ 2 円 50 銭 ほど、円安に進みました。



 そこで問題は、今後、為替レートがどう動くか、になります。

 今回の報道によれば、介入資金を市場に残すことが確定した、というのですから、円安に進みやすくなる、すくなくとも円高を阻止する効果がある、と考えられます。

 為替介入には効果がないとみる論者も、金融緩和には (円安に誘導する) 効果があるとみているようですし、論理的にも、円安誘導効果があるとみるべきだと思います。



ある女子大教授の つぶやき」の「新米の大臣たち

為替介入で官房長官が82円台は防衛ラインと言ってしまった。アホな話だ。予定介入価格という手の内を相手に見せたことになる。これでは勝負にならない。介入価格は国際的な投機筋との勝負の重要な駆け引きのポイントだ。今回も政府が不意を打ったから効果がある程度はあった。首相も分かっていない。


 今回は不意打ちだったので、ある程度の効果があった。しかし予定介入価格を教えて、国際的な投機筋に手の内を見せてしまった。これでは勝負にならない、と書かれており、



 この見かたによれば、円高は依然として進む、とみることになると思います。

 たしかに、今回の為替介入は不意打ちでした。「為替介入についての日本のスタンス」を考えるかぎり、日本は為替介入しないのではないか、と考えられていましたし、意外感があります。

 しかし、「これでは勝負にならない」という状況判断には、疑問があります。



 かつて、ジョージ・ソロスなどの国際的投機筋がイングランド銀行と (為替市場で) 戦って勝利を収めたことがありました。上記見解はそれを踏まえて、のこととは思いますが、

 あのときは、英国がポンド安を阻止しようとしていた ( 英国の中央銀行は英ポンドを買っていた ) のに対し、今回は円高を阻止しようとしている ( 日本の中央銀行は日本円を売っている ) のであり、状況が決定的に違います。



 自国通貨が安くなるのを阻止しようとする場合、「外貨を売って自国通貨を買う」のであり、「手持ちの外貨」を売り切ってしまえば、それ以上、介入する手立てがありませんが、

 自国通貨が高くなるのを阻止しようとする場合、「自国通貨を売って外貨を買う」のであり、「売るための通貨」すなわち「円」は、自国通貨である以上、無限にあります ( 国内法上の制限があるなら、法改正してしまえばよいのです ) 。

 したがって、この事実 ( 日本の介入資金は理論上無限大 ) がある以上、予定介入価格を教えたことは、国際的投機筋に対し、予定介入価格に近づいたなら、さっさと円売りに転じたほうが得だよ、円買いを続けていると大損をするよ、というメッセージを発したことにほかならず、特段、円高阻止という目的にとって不利にはならないと思います。



 問題は、長期的なファンダメンタルズの観点で、日本円の適正為替レートが予定介入価格 82 円を越えて円高である場合、たとえば適正為替レートが 1 ドル= 70 円だった場合にどうなるか、ですが、

 理論的な適正為替レートがどのあたりなのか、(誰にも) わからない以上、たとえこのような場合であっても、日本円はドルに対し、しばらく円高にならず、現状の為替レートを維持すると考えられます。すなわち、

   当面、円安になるか、現在の為替レート近辺で立ち止まるか、のどちらか

であり、とりあえず、円高阻止という目標は達成されつつある (達成された) とみてよいのではないかと思います。



 なお、「為替介入についての日本のスタンス」の引用部、高橋洋一さんの解説によれば、かつては売りオペをしないことが非不胎化だったが、現在は買いオペをすることが非不胎化である、ということになると思います。とすると、上記報道にはやや疑問があることになりますが。。。 私が誤解しているのでしょうか?