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「流動性の罠」 対策

2009-10-29 | 日記
安達誠司 『恐慌脱出』 ( p.101 )

 危機克服策として、一連の金融システム安定化策だけで十分かと言われると、そうではない。その理由は、いったん金融システム機能の毀損が原因で深刻な景気悪化に見舞われた場合、企業倒産の増加等によって、新たな不良債権が金融機関内に蓄積され、それが金融機関の自己資本を毀損させ、さらに金融システムの機能を低下させるという負のスパイラルに入ることが多いためである。
 この局面では、金融システムの機能回復のために金融機関に資本を注入したり、不良債権を政府が買い取ったりしても、金融機関にとっては、新たな投融資案件のほとんどが、わざわざ不良債権を拡大させるような案件になっているケースがほとんどである。そのような状況では、金融機関は積極的に貸し出しを増やそうとはしないだろう。
 金融機関がなるべくリスクを回避しようと考え、しかも、少額でもいいからリターンを稼ごうと考えたなら、投資先は国債(国の借金)しかない。このため、金融機関は国債を選好し、長期金利(国債の利回り)は急低下する。しかし他の投資案件には資金が回らない状況が続き、国債の利回りだけがどんどん低下していく。これがいわゆる「流動性の罠」である。
 この場合、政策当局が景気浮揚のためにできることは、財政支出である。ところが、生半可な財政支出(国の事業)では景気は浮揚しない。この段階に入ってしまうと、借り手である家計や企業も、借金の返済を優先させるためである。
 財政支出が景気を浮揚するのは、財政支出として出したおカネを受け取った企業や従業員(家計)が、そのおカネを支出することで、資金が流通するからである。ところが、借金返済を優先させると、財政支出として支給されたおカネは、早い段階で借金の返済として金融機関に戻ってしまう。筆者はこれが、1990年代の日本で、公共投資の乗数効果が低下した主な理由であると考える。
 重要なことは、これまでの常識を覆すレベルでの財政支出を行い、そのための資金を中央銀行が積極的に供給することである。「流動性の罠」の状況では、金利水準はもはや関係ない。できるだけ大量の資金を市中に供給して、これを支出するように仕向けることが必要である。

(中略)

 前述のスウェーデンやフィンランドのケースでも、金融システム安定化のための措置と同時に大胆な金融緩和を進めており、この結果、両国の為替レートは大きく下落している。これは、金融緩和が両国の経済にとって有効であると市場に認識されたためである。もし、有効でないと解釈されたならば、デフレ的な状況の継続から為替レートは上昇するか、あまり動かないはずである。


 「流動性の罠」 の状況においては、金融機関は国債を選好し、他の投資案件には資金が回らない。したがって、政策当局による財政支出しかないが、生半可なレベルの公共投資では、景気は浮揚しない。できるだけ大量の資金を供給しなければならない。その際、為替レートが大きく下落するレベルが、供給資金量の目安となる、と書かれています。



 これはその通りだろうと思います。

 しかし問題は、日本の場合、(1) 経済成長の余地があるのか、(2) 国債発行余力があるのか、です。



 (1) 経済成長の余地があるのか、については、

 「構造改革否定論の概要」 で紹介した、成長の余地はある、という楽観的な見解もありうるとは思いますが、

 「雇用問題の根源 ( 転職は可能か )」 で引用した、すでに成長の余地はない ( 低い ) という悲観的な見解のほうが、説得的だと思います。

 すなわち、日本経済については、「動学的効率性の条件」 が満たされていないのではないか、と思います。



 (2) 国債発行余力があるのか、については、

 私は、まだ日本には余力がある、と思っていましたが、このところ、金利が上昇しつつあり、すこし怪しくなってきています ( 下記報道記事参照 ) 。

 やっぱり 「マンデル・フレミング理論」 は正しかったのか、とも思わされます。

 しかし、日本には、国債のほかには、めぼしい投資先はほとんどないと思います。したがって、金利は大幅には上昇せず、比較的低い水準に留まるのではないかと思います ( 「マンデル・フレミング理論と動学的効率性の条件」 参照 ) 。



 結局、日本の場合、国債発行余力はあるものの、経済成長の余地に乏しいために、一時的な景気浮揚効果しか見込めないのではないかと思います。たんなる、金融危機による景気後退であれば、著者の対策は有効かとは思いますが、日本の状況は異なっており、効果に乏しいのではないかと思います。

 もっとも、効果に乏しいからといって、しなくてよい、ということではありません。雇用確保なども考慮しなければなりません。私としては、

   新しい産業を生みだす方向で公共投資を行うのが、いちばんよいのではないか、

と思います。



 本文中にて言及した報道記事を引用します (↓) 。



NIKKEI NET (日経ネット)」 の 「市場での国債増発、最大8兆円超に 長期金利上昇、1.4%台」 ( 2009/10/28 10:07 )

 市場での新規国債の増発が2009年度に最大8兆円超にのぼる見通しになった。税収の落ち込みが6兆円にのぼることに加え、個人向けの国債販売が予定を約2兆円も下回るためだ。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは27日、約2カ月半ぶりに1.4%台に上昇。歯止めのかからない財政拡大とそれに伴う国債発行の急増が、長期金利に上昇圧力をかけている。

 企業収益の悪化を背景に、09年度の国税収入は当初見通し(46兆1000億円)から6兆円以上落ち込みそう。財務省は落ち込み分の多くを償還までの期間が1年以下の国庫短期証券の増発で補う方向で検討する。10年物など国債の主要年限の発行量が飽和状態に近づいているうえ、市場関係者からも流動性の高い短期債の増発で対応するよう求める声が多いためだ。

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