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金融政策と財政政策、どちらが効果的か

2009-11-17 | 日記
リチャード・クー&村山昇作 『世界同時バランスシート不況』 ( p.109 )

 大恐慌の権威だというクリスティン・ローマーが言い出して、バーナンキもそれに乗っている議論は次のようなものである。
 一九三三年から三六年までの間にアメリカの景気は回復していったが、それはFRBが三三年に政策を変えて、マネーサプライが増えたからである、という主張である。
 いまのアメリカの主流派経済学者のなかで、アメリカの大恐慌後の回復はニューディールの財政政策によるという人は本当に少数である。大半はこのクリスティン・ローマーから始まった、FRBがマネーサプライを増やしたから景気が回復したという理解になっている。
 確かにアメリカでは三三年から三六年までにマネーサプライが増えるが、マネーサプライの大半は銀行預金である。銀行預金は銀行の負債であるから、ここが増えるには同時に銀行の資産である貸し出しが増えなければならない。そこで銀行の貸し出しでどこが増えたのかを見てみると、図 14 にあるようにこれが全部、政府向けなのである。つまり、あのときは政府がニューディール政策で国債をたくさん発行して、それを銀行が買ったからマネーサプライが増えたのであって、実はこの間の民間向けの貸し出しは減っていたのである。政府向けの貸し出しは増えていたが、民間向けは四一年まで全然増えていない。なぜかと言えば、民間はみんな必死で借金返済をやっていたからである。
 一九二九年に株価が暴落し、借金でこれらを購入していた人たちが一斉に借金返済に回ったにも拘わらず、当時のフーバー大統領は財政出動に慎重だった。その結果、バランスシート不況に陥ったアメリカでは毎年毎年民間の貯蓄と借金返済を合計した金額が借り手不在のなかで経済の所得循環から漏れ、米国のGDPは急速に縮んだ。その結果、同国のGDPは四年間で四六%減少し、みなが借金返済に回った結果、同国のマネーサプライは三三%減少した。借金返済は人々が銀行預金を取りくずしていくため、人々が同時にこの方向へ走り、お金を借りる人がいなくなれば預金は減少してマネーサプライも減少してしまうのである。その結果、失業率は全米で二五%、都市部では五〇%を超えるところも出てくるという悲惨な結果になったのである。
 一九三三年にルーズベルト大統領が誕生しニューディールという積極財政に走った結果、政府という有力な借り手が現れた。その政府が発行した国債を民間銀行が購入することで政府にお金が回り、政府がそのお金を使ったことで銀行システムには預金が増えた。その預金が増えた銀行は、民間の借り手が不在なままで増えた預金を政府に貸し、また政府がこれを使うことで再び銀行の預金が増えた。これがずっと繰り返された結果、銀行の預金は増え続け、それがマネーサプライが増えるということになった。しかしそれはマネーサプライが増えたから景気が回復したのではなくて、政府がニューディール政策でお金を借りて使ったからこそ、景気とマネーサプライの両方が増えたのである。
 そうなると単純にマネーサプライが増えたから景気が良くなったというクリスティン・ローマーやバーナンキの議論はまったくデタラメということになってくる。ところが不可解なことに、私が大恐慌時の銀行の資産サイドがどうなっているのかを見るまで、経済学界のなかで当時の銀行の資産サイドに目を向けた学者はほとんどゼロだったのである。つまり彼らは銀行の負債サイドだけ見て、マネーサプライが増えたことから金融政策万能論を展開していたのである。ましてやこの二人の大恐慌の権威がいるからアメリカは大丈夫だなどという竹中氏の言い分は、ナンセンスきわまりない話である。


 金融政策万能論は、ナンセンスである。なぜなら、その根拠となる大恐慌の研究が、銀行の負債サイドだけを見ており、資産サイドを見ていないからである。資産サイドを見れば、当時、民間の借り手は不在であり、銀行は政府にお金を貸していたことがわかる、と書かれています。



 最初に、「リフレ政策のまとめ」 をご覧ください。

 金融政策を重視する考えかたをとった場合、「大量にお金を供給すれば、景気は回復する」 と考えることになると思いますが、著者 ( リチャード・クー ) は、大恐慌のときの資料を調べ、

   当時、民間の借り手は不在であり、銀行は政府にお金を貸していた

ことがわかった、と述べています。と、すると、

   大量にお金を供給すれば、景気が回復する、というわけではない、
   金融機関の ( 民間に対する ) 貸し付けは増えず、国債が買われるにすぎない、

ということになり、金融政策万能論 ( リフレ政策 ) は機能しない、と考えられます。



 結局、必要なのは、国債の増発 ( 財政政策 ) である、かとも思われるのですが、

 「ルーズベルトの政策 ( 公共投資 )」 で紹介したデータ、すなわち、「経済成長率が回復した 『あとで』 、( 経済成長率に対する ) 政府支出の寄与度が上昇した」 のはなぜか、という疑問は、残ります。



 そこで考えてみるに、

 国債の増発 ( 財政政策 ) にしろ、大量の資金供給 ( 金融政策 ) にしろ、流通するお金を増やす、という点では、共通しています。景気がよい、というのは、売買が盛んな状態、すなわち、お金が一か所にとどまらず、スムーズに流れている状態です。そして、景気が悪い、というのは、お金が一か所にとどまり、動かなくなっている状態です。そこで、

   いかにして、お金の動きをよくするか、

が目標になり、お金が動かなくなっているなら、お金の量を増やす ( 金融政策 ) 、民間に借り手がいなければ、国が借りるしかない ( 財政政策 ) 、ということなのだろうと思います。つまり、

   「金融政策と財政政策、どちらが効果的か」 を論じても意味がなく、
   「状況に応じて、両者を併用、または使い分ければよい」 のではないか

と思います。



 この観点から考えると、

 現在、アメリカには、一定の借り換え需要はあると思われますので ( 「商業用不動産価格の暴落」 参照 ) 、「「貸し渋り」 ではなく、「借り渋り」」 が発生していたバブル崩壊後の日本や、大恐慌当時のアメリカとは、やや、状況が異なっているのではないかと思います。

 もちろん今後、アメリカでも 「借り渋り」 が進む可能性は高い、とも考えられますが、

 いまのところは、金融政策が効果的な状況であり、「金融政策万能論を展開して」 いる 「二人の大恐慌の権威がいるからアメリカは大丈夫だなどという竹中氏の言い分は、ナンセンスきわまりない話である」 とまでは、言えないのではないかと思います。
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3 コメント

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まず (通行人)
2011-07-02 18:40:11
中銀が金融政策によってコントロールできるのはマネタリーベースだけです。マネタリーベースを幾ら増やしても貨幣需要(政府・企業)が増えなければマネーサプライは増えず景気は良くなりません。マネタリーベースを増やしても公定歩合を下げても貨幣需要が増えずマネーサプライが増えない現象を『流動性の罠』と言います。
追記 (通行人)
2011-07-02 18:58:23
マネーサプライが増えたから景気が良くなったという彼らの認識は正しいですよ。誰かが銀行からお金を借りて消費や投資に使うからマネーサプライが増えるのです。マネーサプライが増えている国は、つまり銀行融資を原資とした企業主体の消費や投資が活発で資産効果の高い、要は資産バブルに沸いている国なのです。対照的にバブル崩壊後の日本は企業の貨幣需要の減少によりマネーサプライ伸び率は激減しています。
Unknown (memo26)
2011-07-06 17:26:10
 コメントありがとうございます。

「単純にマネーサプライが増えたから景気が良くなったというクリスティン・ローマーやバーナンキの議論はまったくデタラメということになってくる」

 というリチャード・クーの主張が間違っている、と考えてよいでしょうか? (これはたんに、言葉の定義の問題にすぎないとも考えられますが)

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