言語空間+備忘録

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尖閣諸島沖漁船衝突事件の見通し

2010-09-15 | 日記
毎日jp」の「尖閣諸島沖:巡視船2隻と中国漁船接触 停止させ立ち入り」( 2010年9月7日 22時07分 )

 沖縄県・尖閣諸島の久場島(くばじま)北北西約12キロの日本領海内で7日午前10時15分、操業中の中国漁船を海上保安庁の巡視船「よなくに」(1349トン)が発見、領海外へ退去するよう警告した。漁船は逃走し、よなくにに接触後、56分には同島北西約15キロの領海内で、巡視船「みずき」(197トン)にも接触した。その後、領海外へ逃走したが、みずきが強行接舷し、乗組員が停船させた。第11管区海上保安本部(那覇市)は、海上保安庁法(立ち入り検査)に基づき立ち入り検査し、船長について検査を妨害した公務執行妨害容疑で逮捕する方針。

 海保によると、立ち入り検査を受けているのは大型トロール漁船「※晋漁5179」(166トン)。同日午後0時56分、同島の北北西約27キロの日本の排他的経済水域(EEZ)で停船させた。

 よなくに船尾付近の左舷側に漁船の左舷の船首が接触。よなくには、ヘリコプターが着船する甲板の支柱が折れた。みずきは停船を求めて並走中、漁船が接触し、右舷にへこみ(高さ約1メートル、幅約3メートル)ができるなどした。

 漁船の船籍は中国・泉州で、船員は男15人。全員中国人と話しているという。

 外国籍の漁船による不法操業は、日本の領海内では外国人漁業の規制に関する法が、EEZではEEZにおける漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法が適用される。

 現場海域はカワハギやカツオの漁場で、第11管区は巡視船4隻、ヘリコプター1機で不法操業の事実確認を進めている。海保によると09年までの過去5年に、東シナ海を含む日本の領海・EEZで中国籍の漁船3隻、台湾の漁船6隻が不法操業で検挙されている。【石原聖】

 ※は門がまえの中に虫


 尖閣諸島沖での漁船衝突事件について、詳しい状況が報じられています。



 すこし古いニュースですが、「尖閣諸島での漁船衝突事件について」に述べた主張、すなわち、「おそらく中国側からぶつかったのではないか」を補強する資料として、この記事をとりあげます。



 報道によれば、巡視船「よなくに船尾付近の左舷側に漁船の左舷の船首が接触」とあります。

   巡視船の「船尾付近」と漁船の「船首」が接触しているのですから、
   どう考えてみても、「中国側からぶつかった」と考えるのが自然です。

 巡視船が「バックしていた」のなら、「日本側からぶつかった」といえるかもしれません。しかし、巡視船が「(高速で) バックしていた」など、常識的にありえません。したがって、

   中国側からぶつかったとみて、間違いない

と思います。



 ところで、当然、「ぶつかった傷痕」が残っているはずです。傷痕は、(嘘かもしれない) 証言に比べ、客観性が高いことはあきらかです。記事には、
よなくには、ヘリコプターが着船する甲板の支柱が折れた。みずきは停船を求めて並走中、漁船が接触し、右舷にへこみ(高さ約1メートル、幅約3メートル)ができるなどした
とあります。したがって、

   中国政府も「中国側からぶつかった」ことを「知っている」はずである

と考えられます。とすれば、



毎日jp」の「中国漁船衝突:乗員帰国を「外交勝利」…中国が宣言」( 2010年9月14日 0時51分 )

 沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近で海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突して船長が逮捕された事件で、中国の強硬姿勢が際立っている。中国は今月中旬に予定されていた東シナ海ガス田開発の条約交渉を延期。12日未明に戴秉国(たい・へいこく)国務委員(副首相級)が丹羽宇一郎中国大使を呼び出し、漁船と乗組員を直ちに引き渡すよう要求した。丹羽大使への抗議は4回目、未明の呼び出しは極めて異例だ。一方、法律に基づいて処理を進めるとする日本側は同日、漁船の検証と中国人船員14人の参考人聴取を終了。14人は13日に石垣空港からチャーター機で帰国し、漁船も返還された。【野口武則、石原聖、北京・浦松丈二】

 中国外務省の姜瑜(きょう・ゆ)副報道局長は13日午後に談話を発表し、船員14人の帰国について「中国側は日本側と厳しい交渉をし、領土と主権を守る断固とした決意を示した」と中国外交の勝利を宣言。船長についても即時釈放を要求した。

(中略)

 ◇大使呼び出し…日本、対抗措置否定

 一方、武正公一副外相は13日の定例会見で、中国側が何回も丹羽大使を呼び出し、しかも12日の呼び出しは午前0時から1時間におよんだ点に対して「遺憾」だと表明した。

 ただ、同時に「わが国としては冷静に対応していく」と強調。程永華駐日大使を深夜に呼び出すような対抗措置を考えているのかという質問には「にわかに大使を呼び出すという対応はない」と否定的な考えを示した。

 海保によると、逮捕された船長の容疑を裏付けるデータは漁船から取得済み。「船長以外の捜査は終わった」として、船員14人の任意捜査終了と同時に漁船を返還した。


 何回も丹羽大使を呼び出すなど、中国側の強硬姿勢が目立っており、日本が船員14人の帰国を許可し漁船を返還したことについて、「中国側は日本側と厳しい交渉をし、領土と主権を守る断固とした決意を示した」と中国外交の勝利を宣言したうえで、さらに船長についても即時釈放を要求した、と報じられていますが、



 このような中国側の態度は、「おかしい」と考えなければならないと思います。

   本来、日本側が駐日大使を呼び出すのが当然

であるはずです。深夜はともかく、(日本側が)「にわかに大使を呼び出すという対応はない」と否定的な考えを示した、というのもどうかとは思いますが、中国政府の態度は、さらに「おかしい」。そして、傷痕という物理的な証拠が残っていることを考えると、

   中国政府は、「あとで中国のメンツが丸つぶれ」になることを覚悟している、

ということになりますが、これも「おかしい」。



 この「謎 (なぞ)」を解く鍵になるかもしれない見解があります。引用します。



産経ニュース」の「石平氏寄稿 焦る中国に応じた日本

 沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近で中国漁船と海上保安庁の巡視船が接触した事件をめぐり、中国の戴秉国(たい・へいこく)国務委員が12日未明、丹羽宇一郎駐中国大使を緊急に呼び出し、日本側の対応に抗議したことが注目を集めている。強硬姿勢をさらにエスカレートさせた無礼千万の呼び出しには実は、自らのメンツを保つ形で早急に事態の収拾を図ろうとする中国政府の思惑が見え隠れしている。背景には、中国国内で高まりつつある「政府の弱腰」に対する批判があろう。

 戴国務委員は抗議の中で、中国政府の最大の要求として「漁民と漁船の即時送還」を求めた。しかし、注意深くみると、それは、2日前の10日に中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)外相が丹羽大使を呼び出して突きつけた要求とは全然違うことが分かる。楊外相が「船長を含めた乗組員全員」の即時送還を求めたのに対して、戴国務委員の要求からは「船長」という言葉が消え、「漁民と漁船」だけが残ったのである。戴国務委員と楊外相の要求の違いは、中国外務省の公式サイトでも確認できる。

 実はそれこそが、思惑を伴う中国政府の小細工なのである。事件への処理に当たり、日本側は領海侵犯事件としてではなく、逃亡するため日本の巡視船に体当たりした中国船を拿捕(だほ)し、公務執行妨害で船長だけを逮捕した。

 つまり、船長の処分とは別に、一般乗組員と漁船の早期送還は最初から日本側の既定方針であり、それは中国側もよく承知していたはずである。あるいは日本政府は12日前の時点で、乗組員と漁船の早期送還を中国側にすでに伝えていたのかもしれない。

 だとすれば、12日未明に大変なけんまくで丹羽大使を呼び出して「漁船と漁民の即時送還」を求めた戴国務委員の行動は、むしろ国内の目を意識した一種の芝居だったといえるだろう。焦点の船長への言及を意図的に避け、日本側の既定方針であるはずの漁民と漁船の「早期送還」を強く求めて見せた「芝居」の真意はおそらくそういうことだ。

 船長の処分という最大の争点を避けて日本側との「落としどころ」を見つけ、事態の沈静化を図ろうとする一方、日本側が既定方針通りに漁船と漁民の送還を決めることを見据え、それが実現した際には、あたかも「中国政府の圧力の成果」であるかのような印象を国内に与え、国内で先鋭化しつつある政府への「弱腰批判」を払拭(ふっしょく)することができるのである。

 大した緊急性もないのに、わざと未明に丹羽大使を呼び出した戴国務委員の奇怪な行動もまさに、「中国政府が強い態度に出たことで日本側がひれ伏した」との宣伝効果を高めるための演出とみることができよう。

 そして、あたかも中国側のろうした小細工に呼応したかのように、日本政府は13日午前、船長以外の一般船員の送還を正式に発表し、彼らは中国政府のチャーター機で帰国したのである。

 同時に、事件に抗議するため、12日に中国福建省アモイから尖閣諸島へ出航する計画だった中国の民間団体がアモイにとどまっていることが、13日になって分かった。彼らを足止めしたのが中国政府であることはいうまでもない。

 この一連の動きからは、中国と日本の両国政府が水面下において「事態収拾」のシナリオを描き、それを実行に移したのではないかとの見方も浮かび上がる。もし、そうだとすれば、日本の領土保全にかかわる重大な問題で中国側との妥協に安易に応じた日本政府の姿勢こそが問題なのである。


 中国側には、国内で先鋭化しつつある政府への「弱腰批判」を払拭する狙いがあるのではないか、日中両政府は水面下で「事態収拾」のシナリオを描き、それを実行に移したのではないか、との見かたが紹介されています。



 石平氏は、中国政府は国内の「弱腰批判」をかわしつつ、「メンツ」を保つかたちでの解決を模索しているのではないか、というのですが、

 それなら始めから、(中国) 国内の報道を「日本側からぶつかった」に統一しなければよいはずです (「尖閣諸島での漁船衝突事件について」参照 ) 。そうすれば、「弱腰批判」など生じなかったはずです。



 とすると、

   中国側は、「途中から意図的に」強硬な態度に出ることにしたが、
        その後、やや態度を軟化させた

ということになります。中国政府の意図が、

   国内の不満を解消するためのガス抜きを狙っているのか
         (「中国の労働問題と、予想される当局の対策」参照 ) 、

   尖閣問題で日本側の出かたを量る (はかる) ために揺さぶりをかけたのか、

そのあたりのことはわかりませんが、

 日本としては、物理的証拠がある以上、法に則って (政治的な特別扱いをせずに) 対処すれば、長引くかもしれないけれども、収まるところに収まるのではないかと思います。つまり、今回の件は大問題にはならないだろう、と予想されます。