「YOMIURI ONLINE」の「司法修習生の給与継続、「貸与制」取りやめへ」( 2010年9月14日03時04分 読売新聞 )
民主党は司法修習生に対する「給費制」を維持する方針 (に転換すること) を確認した、と報じられています。
司法修習生が経済的に大変なのはわかりますが、それをいうなら、医学生なども同様でしょう。これについては、すでに「なぜ司法修習生に給与を支払う必要があるのか」に述べています。
日弁連の「富裕層しか法律家になれなくなる」という反対理由は、一見、もっともらしいですが、これに対しては
「富裕層しか医師になれなくなる」のはよいのか、
「富裕層しか大学院生・研究者になれなくなる」のはよいのか、
という疑問があります。つまり、
日弁連は、「富裕層しか法律家になれなくなる」と正論を説いているようでいて、
じつは、「法律家」の利益 (既得権?) を主張しているだけではないのか、
と思われるのです。日弁連が、医学部生・(理工系等の) 大学院生に対しても同様の措置をとるべきだ、と主張しているならまだしも、「司法修習生についてのみ」主張されているところが、ひっかかります。
もっとも、国会で決まったわけではありませんし、いまだ流動的なのもたしかです。もしかすると民主党は世間の反応を見ているのかもしれない、と思い、とりあえず私の意見 (この記事) を公開します。
民主党は13日、政策調査会の法務部門会議を開き、司法修習生に国が給与を支給する「給費制」を維持する方針を確認した。政策調査会の了承を経て、議員立法による裁判所法改正を目指す。給費制については、10月末で廃止し、11月から国が資金を貸与し無利子で返還させる「貸与制」に切り替わる予定で、立法措置もされていた。
現在、司法修習生には1年間の修習期間中、国から毎月約20万円の給与が支払われている。しかし政府は司法制度改革で法曹人口の増加が打ち出されたことなどから貸与制に切り替えることを決め、2004年に裁判所法を改正した。
これに対し、今年4月以降、日本弁護士連合会は法科大学院の学費などで借金を抱えている人が多い現状を踏まえ、「富裕層しか法律家になれなくなる」として、国会議員に給費制の継続を働きかける動きを強め、最高裁が、主張の根拠を具体的に示すよう求める異例の質問状を日弁連に送る事態になっていた。
民主党は司法修習生に対する「給費制」を維持する方針 (に転換すること) を確認した、と報じられています。
司法修習生が経済的に大変なのはわかりますが、それをいうなら、医学生なども同様でしょう。これについては、すでに「なぜ司法修習生に給与を支払う必要があるのか」に述べています。
日弁連の「富裕層しか法律家になれなくなる」という反対理由は、一見、もっともらしいですが、これに対しては
「富裕層しか医師になれなくなる」のはよいのか、
「富裕層しか大学院生・研究者になれなくなる」のはよいのか、
という疑問があります。つまり、
日弁連は、「富裕層しか法律家になれなくなる」と正論を説いているようでいて、
じつは、「法律家」の利益 (既得権?) を主張しているだけではないのか、
と思われるのです。日弁連が、医学部生・(理工系等の) 大学院生に対しても同様の措置をとるべきだ、と主張しているならまだしも、「司法修習生についてのみ」主張されているところが、ひっかかります。
もっとも、国会で決まったわけではありませんし、いまだ流動的なのもたしかです。もしかすると民主党は世間の反応を見ているのかもしれない、と思い、とりあえず私の意見 (この記事) を公開します。
法曹一元制度のもとでは、弁護士も公務員である検察官、裁判官と同じ法曹の一員であり、法曹の「卵」の段階でも公務員に準ずる立場である以上、国家から給与を支給されるべきと考えられます。
修習生の最初の段階では、まだ検察官、裁判官になるか弁護士になるかは決定していないので、とりあえずは国が給与を与えるということではないでしょうか。
返納した人はおそらくいないと思いますが、もし、弁護士だけ民間の立場だからといって給費を返還しなければならないとすると、同じ法曹であるのに裁判官、検察官との間に待遇の差が生じることになり法曹一元制度と矛盾することになると思います。
司法修習制度は、裁判官、検察官のOJT、研修期間でもあります。一般の企業でも、新卒者採用直後にOJT、研修期間がありますが、通常は、給与が支払われます。
公務員でも研修期間中は給与が支払われます。たとえば、警察官の場合、採用後、警察学校に行きますが、その間にも給与が支払われると思います。
それと同じように考えると、司法修習中であっても給与が支払われるべきであると思います。
研修ではありますが、それも「仕事」である以上、給与が支払われてもいいと思うのですが・・・
給費制と法曹一元制度の関連は、私なりに考えたことなのですが(ひょっとして既に他の方が言ってるかもしれませんが)、たしかにわかりにくく、理由として苦しいかもしれません。
次に、司法修習期間は、OJT・研修期間でもあるので、給与を支給するべきではないか、との点についてですが、
一般に、OJT・研修期間中に給与が支払われる場合には、即戦力となっているか否かはともかく、すくなくとも形式上は、なんらかの責任を負っていると思います。研修医についても同様で、医師としての責任を負っています。しかし司法修習生は、なんらの責任も負っていません。修習期間中、たとえば裁判修習の際に裁判官会議(という名称でよいのでしょうか)に出席する場合にも、司法修習生が判決に影響を及ぼすことは禁じられています。
なんらかの責任を負っているなら、その代償として給与を支給すべきだと考えられますが、なんらの責任も負っていない以上、つまり司法修習生が完全に「学生」である以上、給与の支給は「おかしい」のではないか、と考えます。
この問題について個人的には貸与制・給費制以前に,法曹になるために必要な費用がかかりすぎる点にあると思っています。
当初の理念とかけ離れた法科大学院・新司法試験など廃止し,旧司法試験を維持して貸与制にするのが一番よかったのではないでしょうか。
増員に反対であれば、法科大学院・新司法試験を廃止し、旧司法試験に戻す、という選択もありうるとは思います。
ここのコメント欄でも既に他の方が論じられていますが話の流れを見ていると、あなたには司法修習に対する基本的な理解が欠けているように見受けられます。そこで、まず司法修習について争点ごとに説明します。
1.司法修習の内容について
新司法試験の司法修習は、10か月の実務庁修習と、2か月の集合修習に分けられます。
実務庁修習では、検察・弁護・裁判所(民事・刑事)で2か月ずつ修習を行います(残り2か月は修習生の希望に応じて修習先が決定されます。)
この内、修習生は、検察では警察から送致されてきた事件の捜査を行います。指導係の検事の判断を仰ぐことも多いですが、捜査のかなりの部分を修習生が担当します。裁判所においては、裁判官の下で法廷傍聴をする傍ら、記録を検討して、事案の概要や問題点を裁判官に報告します。弁護では、指導弁護士について法廷や打ち合わせ、法律相談に立会い、指導弁護士の指示の下で答弁書・準備書面等の文書を起案します(もちろんその全てが採用されるわけではありません)。
このように、実務庁修習には、OJTの部分と研修の部分が混在しています。
この点について、あなたは責任を負っていない以上「学生」と同じjであるかのように答えていますが、補助的業務とはいえ、実際に意味のある業務をやっている以上、「学生」と同視することはできません。実際もし最終的な決定権限を有していないから「学生」であるとすると、一般の仕事のかなりの部分が仕事ではないということになりかねません。
2.修習専念義務について
実務庁によって異なりますが、基本的に修習生は月曜から金曜日の9時から5時まで修習することになっています。ただ、これはあくまで原則であり、残業も多く遅いときには9時を過ぎることもあります。これに加えて、指導担当の実務家から課題が出されルこともありますし、二回試験に向けた勉強もかなりしなくてはいけません。このように、修習生は全体的に見て一般のサラリーマンと同レベルの時間的拘束を受けています。従って、たとえ修習専念義務をなくしたとしても十分な収入を得るだけの副業を行うことは困難です。逆に、副業ができる程度に修習時間を制限すれば、ただでさえ1年に短縮された司法修習がさらに少なくなります。それでは、修習の実をあげることが困難になり、弁護士を含めた法曹の質の低下につながる可能性が高いでしょう。
3.その他
また、司法修習は、修習場所を自由に選択することはできません。一応希望は出せますが、多数の修習生が希望と異なる土地に配属され引っ越しを余儀なくされます。加えて、就職希望地が配属地と離れている場合、週末ごとに就職活動のため移動しなければならず、この出費も馬鹿になりません。
(2) 修習専念義務については、もともと司法修習は「期間が長すぎた」ものを、適度な長さに短縮したのではないでしょうか。
(3) 修習地の問題については、それなら貸与金額を増額すればよい、ということになると思います (修習生は増額を選べます) 。ただちに給費制でなければならない、ということにはならないと思います。
基本的に、「お金持ちしか法律家になれなくなる」というのが問題の要点であるなら、自民党が検討すると言っている「返済免除」でよいのではないでしょうか。