言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

尖閣諸島についての台湾のスタンス

2010-09-18 | 日記
日本経済新聞」の「「尖閣諸島で中台連携なし」 台湾・国民党幹事長」( 2010/9/17 18:52 )

 来日している台湾の与党・国民党の金溥聡秘書長(幹事長)は17日、都内の日本外国特派員協会で記者会見し、沖縄県の尖閣諸島について「(同諸島を巡る対応で)台湾が中国と連携(して日本に対処)することはない」と語った。ただ、「同諸島の主権が台湾にあるとの従来の主張に変わりはない」とも述べた。

 香港とマカオの活動家に尖閣諸島への上陸を許可しなかったことを挙げ、日本国内で懸念が強まっている中台の連携を強く否定した。中国漁船の船長を逮捕したことに抗議する台湾の船舶が当局の巡視船とともに同諸島に近づいた問題については「彼らは漁民のライセンスを持っており、出船を禁じることはできない」と正当性を強調した。

 12日に発効した中国との経済協力枠組み協定(ECFA)については「台湾は輸出産業を重視しており、台湾の経済発展につながる」との見方を示した。


 台湾の国民党秘書長 (幹事長) は、尖閣諸島について、「同諸島の主権が台湾にあるとの従来の主張に変わりはない」と述べつつも、「(同諸島を巡る対応で)台湾が中国と連携(して日本に対処)することはない」と語った、と報じられています。



 「主権が台湾にあるとの従来の主張に変わりはない」のであれば、台湾にしてみれば、「中国漁船によって台湾の領海が侵害された」ことになるはずです。したがって、

   なぜ、台湾は中国に対して領海侵犯を抗議しないのか

という疑問が浮かんできます。

 このあたりの台湾の対応 (…のおかしさ) が、記事中にある「日本国内で懸念が強まっている中台の連携」の根拠にもなっているのだと思います。



 台湾が中国に対して抗議しない理由は、
 12日に発効した中国との経済協力枠組み協定(ECFA)については「台湾は輸出産業を重視しており、台湾の経済発展につながる」との見方を示した。
とあることから察するに、

   対中関係をこじらせて、台湾の輸出産業にダメージを与えたくない

ということなのかもしれませんが、この問題は、輸出産業の保護に比べはるかに重要な問題であると考えられますので、やや疑問の残るところだと思います。



 ところで、



世界日報」の「尖閣問題「第三国と何ら連携とらない」台湾外務次官」( 2010/9/17 19:19 )

 【台北・岩崎哲】台湾の沈呂巡外交部政務次官は16日、本紙と会見し、尖閣諸島で日本巡視艇と中国漁船が衝突した事件に関連して、尖閣諸島の「領有権は歴史的に見ても、法律的に見ても、中華民国(台湾)に属していることは明白である」とした上で、「この件について、第三国とは何ら連携していない」と強調し、中国などと連携した対応をとる考えがないことを強調した。
 また、沈次官は尖閣諸島問題で日本と台湾の間には食い違いはあるものの、両国関係は、「馬英九政権発足以来良好であり、さらに協力関係を増進させていきたい」と期待感を示し、漁業問題について「操業ルール」作りの必要性を訴えた。

 沖縄の米軍普天間基地移転について、沈次官は「注意深く見守っている」とし、「日米安保は東アジアの安全保障のキーストーンであり、支持している」と述べた。


 台湾の外交部政務次官は日米安保について、「日米安保は東アジアの安全保障のキーストーンであり、支持している」と述べたと報じられています。



 日米安保を支持しているというのですから、台湾にとって、中国が脅威たりうるということだと思います。すなわち、(政治的に) 台湾は中国と一定の距離を保ちたい (=中台統一を望んでいない) 、との意志表明とみられます。

 したがって、台湾が中国に対して抗議しないのは、中台連携への一歩ではなく、

   (台湾が) 政治的に難しい立場である状況を反映した行動 (沈黙) にすぎない

と考えるべきだと思われます。

ロシアの地政学的特徴

2010-09-18 | 日記
曽村保信 『地政学入門』 ( p.194 )

 最後にソ連ハートランドの地政学的な特徴について、マッキンダーがその論文のなかでほとんど強調しなかった、ひとつの重要な点にふれておきたい。それは、およそ世界中でソ連だけに特有な "水運 (ヴォードヌイ・トランスポルト)" の概念である。ロシア建国の昔から、ドニエプルやヴォルガ、ドンのような大きな河川が、国土の形成に大きな役割を果たしてきたことはよく知られている。しかし、まだあまりよく知られていないのは現代の国際政治におけるその役割である。
 ソ連は、しばしば大陸国家だといわれる。が、とくにその中心部についてみるとき、白海とバルト海、そして黒海という周辺部の海は、ことごとく運河または上記のような河川の体系によって互いに結ばれている。もとより大型の船舶はこれらを航行できない。しかしながら三千トン内外の、優に外洋の航海にたえられるだけの艦船が、内陸を自在に往来できるのは、この国だけである。したがって、このことは戦略的にみて、大変重要な意味をもっている。
 たとえばモスクワ近在の工場の製品を積載した船は、まず黒海に出てから、さらに地中海を経て、世界の各地に物を運ぶことができ、その間に荷物を積み替える必要がない。あらゆる商業用船舶が軍の統制下にあるソ連では、武器の積み出しももちろん同時にできる。そして場合によっては、アマゾン川をさかのぼってキト (エクアドル) の近辺まで行くこともある。こうしてソ連国内の水系は、南米のアンデス山脈まで切れることなくつながっているわけだ。このような国内の河川航運と外洋における海運とをひとつなぎにしてみたのが、つまりソ連の "水運" である。
 ロシア人の感覚からすれば、いわゆる国際海峡や運河もまた、このような航路の延長の一部に過ぎない。かつて国連の第三次海洋法会議において、米ソ両国が互いに情報を交換しながら、国際海峡の自由な通過権を維持するために協力し合ったのも、むろんそれぞれの世界戦略にもとづいた行為だった。けれどもソ連の場合には、ことに周辺の海はその領土の外延であるという潜在的な意識が強くはたらいており、このことがロシア人の海洋法にたいする解釈に常に独特な趣 (おもむき) をあたえている。かつてローマ人が、地中海のことを "われらの海 (マーレ・ノストルム)" といったように、ロシア人達は、北極海や太平洋の一部をも "歴史的な海" と称して、国際法上も何となく特別の扱いにしようとしてきた。また白海やバルト海、黒海等も、しばしば閉鎖海と称せられ、したがって沿岸国だけが自由に出入りできるという学説がとなえられてきた。
 少なくとも、事、海に関する限り、ソ連はローマ帝国の完全な承継者であろうとしている。それは、一九六八年に黒海艦隊の一部が地中海に常駐を始めた際に、タス通信が、「ソ連は、黒海――したがってまた地中海における一大勢力として、この地域におけるプレゼンスの当然な権利を行使する」(前掲ゴルシコフの論文より引用)と、声明したことによっても知られる。


 ロシアの地政学的な特徴が書かれています。



 ユーラシア大陸の中心部は、海とは隔てられた領域であると考えるのが通常ですが (「マッキンダー理論の背景」の引用部参照) 、実際には、

 こと、ロシア中心部にかぎっては、三千トン内外の外航船が内陸部を自在に航行しており、内陸部と外洋とが一体となっている。

 とすれば、ロシア人の感覚としては、国内河川に対するのと同様、外洋 (沿海) についても、「国土の一部」すなわち「領海」であると捉える傾向にある、と考えられます。



 しかし、ここでわからないのは、このように船舶による航行が自在であるなら、

   なぜ、ロシアでは製造業等の産業が (さほど) 発達していないのか、

です。製造業であれば基本的に屋内で可能ですから、「寒い」ということも問題にならないでしょう。ロシアは石油・鉱物資源も豊富ですし、製造業の発達には向いているのではないかと考えられます。

 原因は封じ込め政策にある、とも考えられますが (「地政学の概要」参照 ) 、

 なんらかの内在的な要因も影響しているとみられます。その原因を推測するには、ロシアについて、詳細な知識が必要になると思われます。機会をみて、ロシアの歴史・産業等についても調べたいと思います。