リチャード・L・アーミテージ ジョセフ・S・ナイJr 春原剛 『日米同盟 vs. 中国・北朝鮮』 ( p.75 )
台湾問題について、台湾が中国の一部になることは米国の利益にはならないが、中国が武力を行使しないかぎり、米国は介入しない。長期的にみれば、中国は台湾問題について緊張を弱めていく。なぜなら中国にとって、台湾の優先順位は下がっているからである、と書かれています。
台湾が中国の一部か否かについて、アーミテージ氏は「台湾の人たちが決めることです」と答えています。これが米国の考えかたなのでしょう。
じつは、私も同じ考えかたをしています。
日本では、「台湾の人たちが決めること」だと言いつつも、「台湾の人々は台湾は中国の一部ではないと考えている」はずだ、という前提が置かれているかのような意見がみられます。つまり、
このような主張をする人々が、台湾で「台湾は中国の一部だ」という声が強くなったときにどう考えるのか、すこし興味があります。彼らは、
台湾人の多くが反日・親中になった場合にも、彼らは、台湾が中国の一部か否かは「台湾の人たちが決めること」だと主張するでしょうか?
私には、「台湾が好き」だという人々(日本人)が、「本当に」台湾が好きなのかどうかについて、疑問があるのです。彼らは「本当に」台湾人の幸福を望んでいるのでしょうか?
あなたが誰かに恋しているとします。当然、あなたはその人を「手放したくない」と思っています。あなたは、その人といつも一緒にいたい、と望んでいます。
そのとき、相手が「ほかの人」を好きになったら、あなたはどうしますか?
「本当に」愛していれば、別れますよね。自分の幸福ではなく、相手の幸福を優先するはずです。すくなくとも、私はそうです。
台湾問題も、これと同じです。
「本当に」台湾が好きなら、「本当に」台湾を大切に思っているなら、台湾の人々が「中国の一部になりたい」と望んだときには、当然、それを「肯定し、認めなければなりません」。
たとえば、「台湾は日本の生命線!」というブログがありますが、私には、その背後に「台湾を日本のために利用しよう」という思惑があるのではないか、と思われてなりません。ブログ主の永山英樹さんは「親台」派のようですが、「本当に」親台なのか、やや疑問があります。
なお、アーミテージ氏は、中国の優位順位が「台湾、チベット、新疆ウイグル」から、「チベット、新疆ウイグル、台湾」に変わったと述べています。これは意外な感じがします。にわかには信じがたい話です。
中国はいまや、「南シナ海」のほか、「東シナ海」をも「核心的利益」に位置づけていますし、さらに進んで、「中国、沖縄県・尖閣諸島を「核心的利益」に位置付け」という報道や、「中国は「2012年の台湾統一」を目指している」という情報もあります。
したがって、中国にとっての「台湾の重要度・優先順位」については、アーミテージ氏の話をただちには信用せず、疑いをもっておくべきだと思います。
■関連記事
「台湾人のアイデンティティー」
「台湾人か中国人か」
「台湾問題についての台湾人の考えかた」
「台湾の五大都市市長選結果」
「李登輝の馬英九分析」
「台湾問題についての米中台の姿勢」
「WHOによる台湾の呼称、「中華台北」と「中国台湾省」」
「中国人民解放軍総参謀長の発言(台湾問題)」
「台湾人の対日感情」
「「中国を特別扱いするな、台湾を特別扱いしろ」という「偏った」主張」
春原 ところで米中関係と言えば、台湾問題ですが、最近の台湾情勢はひところに比べると随分、落ち着いているようにも見えますが、どうでしょう?
アーミテージ まだ、陳水扁氏が総統だった時、彼は私に「台湾が中国の一部になることは米国、そして日本の利益にかなっていると思いますか」と尋ねてきました。私が「いえ、そうは思いません」と答えると彼は「(日米両国は)それを止めなければならない」と畳みかけてきました。それに対して、私は「それは台湾の人たちが決めることです」と答えた。「確かに台湾が中国の一部になることは我々の利にはかなっていませんが、中国が武力を行使しない限り、我々は介入しません」と明言したのです。
ナイ 台湾情勢はだいぶ改善されました。馬英九氏が陳水扁氏に代わって総統になって以来、台湾が一方的に独立を宣言する可能性は減り、かつ馬政権は中国との両岸交流を経済、社会面で改善しました。それはすべて前向きな動きだと思います。
春原 台湾による一方的な独立宣言の可能性は、中国人民解放軍に軍備近代化の口実を与えていた側面もありますよね。
ナイ もし、台湾が一方的に独立を宣言していたら、中国は武力を行使していたと思います。だから、人民解放軍がそれを軍備増強の言い訳というか、論理としていたのは間違いありません。しかし、今は状況も改善し、事態は沈静化していると思います。
アーミテージ 長期的に見れば、中国は台湾問題について緊張を弱めていくでしょう。かつて中国に「あなた方の利益の核心はいずこにあるか」と問えば、「台湾、チベット、新疆ウイグル」と答えました。ところが、今は「チベット、新疆ウイグル、台湾」という順番になります。そのリストの最後には今、「南シナ海」も入るのですが。いずれにせよ、彼らがその順番を変えたのは過去二年でのことです。
台湾問題について、台湾が中国の一部になることは米国の利益にはならないが、中国が武力を行使しないかぎり、米国は介入しない。長期的にみれば、中国は台湾問題について緊張を弱めていく。なぜなら中国にとって、台湾の優先順位は下がっているからである、と書かれています。
台湾が中国の一部か否かについて、アーミテージ氏は「台湾の人たちが決めることです」と答えています。これが米国の考えかたなのでしょう。
じつは、私も同じ考えかたをしています。
日本では、「台湾の人たちが決めること」だと言いつつも、「台湾の人々は台湾は中国の一部ではないと考えている」はずだ、という前提が置かれているかのような意見がみられます。つまり、
- 台湾は中国の一部ではない、と主張したい。
- 台湾の人々は、台湾は中国の一部ではないと考えている。
- そこで、「建前として」台湾が中国の一部か否かは、台湾の人たちが決めることだと主張する。
このような主張をする人々が、台湾で「台湾は中国の一部だ」という声が強くなったときにどう考えるのか、すこし興味があります。彼らは、
- 「台湾の人々が決めること」である以上、台湾は中国の一部である、と主張し始めるのでしょうか?
- それとも、台湾の民意は本当の民意ではない、などの「建前」を持ちだして、台湾は中国の一部ではない、という主張を続けるのでしょうか?
台湾人の多くが反日・親中になった場合にも、彼らは、台湾が中国の一部か否かは「台湾の人たちが決めること」だと主張するでしょうか?
私には、「台湾が好き」だという人々(日本人)が、「本当に」台湾が好きなのかどうかについて、疑問があるのです。彼らは「本当に」台湾人の幸福を望んでいるのでしょうか?
あなたが誰かに恋しているとします。当然、あなたはその人を「手放したくない」と思っています。あなたは、その人といつも一緒にいたい、と望んでいます。
そのとき、相手が「ほかの人」を好きになったら、あなたはどうしますか?
「本当に」愛していれば、別れますよね。自分の幸福ではなく、相手の幸福を優先するはずです。すくなくとも、私はそうです。
台湾問題も、これと同じです。
「本当に」台湾が好きなら、「本当に」台湾を大切に思っているなら、台湾の人々が「中国の一部になりたい」と望んだときには、当然、それを「肯定し、認めなければなりません」。
たとえば、「台湾は日本の生命線!」というブログがありますが、私には、その背後に「台湾を日本のために利用しよう」という思惑があるのではないか、と思われてなりません。ブログ主の永山英樹さんは「親台」派のようですが、「本当に」親台なのか、やや疑問があります。
なお、アーミテージ氏は、中国の優位順位が「台湾、チベット、新疆ウイグル」から、「チベット、新疆ウイグル、台湾」に変わったと述べています。これは意外な感じがします。にわかには信じがたい話です。
中国はいまや、「南シナ海」のほか、「東シナ海」をも「核心的利益」に位置づけていますし、さらに進んで、「中国、沖縄県・尖閣諸島を「核心的利益」に位置付け」という報道や、「中国は「2012年の台湾統一」を目指している」という情報もあります。
したがって、中国にとっての「台湾の重要度・優先順位」については、アーミテージ氏の話をただちには信用せず、疑いをもっておくべきだと思います。
■関連記事
「台湾人のアイデンティティー」
「台湾人か中国人か」
「台湾問題についての台湾人の考えかた」
「台湾の五大都市市長選結果」
「李登輝の馬英九分析」
「台湾問題についての米中台の姿勢」
「WHOによる台湾の呼称、「中華台北」と「中国台湾省」」
「中国人民解放軍総参謀長の発言(台湾問題)」
「台湾人の対日感情」
「「中国を特別扱いするな、台湾を特別扱いしろ」という「偏った」主張」