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WHOによる台湾の呼称、「中華台北」と「中国台湾省」

2011-05-18 | 日記
時事ドットコム」の「WHOに厳重抗議=内部文書で「中国台湾省」-台湾」( 2011/05/10-18:23 )

 【台北時事】世界保健機関(WHO)事務局が昨年9月、台湾を中国の一部とみなす「中国台湾省」と呼称するよう求める内部文書を加盟国に送っていた事実が分かり、馬英九政権が激怒している。馬総統は10日、総統府で記者会見し「WHOは著しく(台湾の)主権と尊厳を傷つけた」と批判、外交部(外務省)を通じ同事務局に口頭で厳重抗議したことを明らかにした。
 問題は台湾紙の報道で表面化。馬総統自らの会見でこれを確認した格好で「中国がWHOに圧力をかけた結果だ」と総統の怒りは収まらない。中国当局にも抗議するとともに「このような形で台湾の人々の感情を傷つけるのは双方の利益にならない。これまで進めてきた関係改善の成果を大事にしてほしい」と訴えた。
 WHOは台湾が2009年から「中華台北」名義で年次総会にオブザーバー参加することを許可している。しかし、裏では加盟国に「中国台湾省」という呼称を求める二枚舌を使っていたことになる。台湾当局は16日に開幕する年次総会でも抗議文書を提出する方針だ。


 世界保健機関(WHO)事務局が昨年9月、台湾を中国の一部とみなす「中国台湾省」と呼称するよう求める内部文書を加盟国に送っていた事実が分かり、馬英九政権が激怒している、と報じられています。



 上記報道では、WHOは二枚舌を使っていたことになる、とされていますが、状況は「もっと」複雑なようです。



毎日.jp」の「台湾:「中国台湾省」名称 WHOに抗議」( 2011年5月10日 19時39分 - 最終更新 5月10日 20時31分 )

【台北・大谷麻由美】台湾野党・民進党は9日、世界保健機関(WHO)が昨年9月に加盟国に対し、台湾の名称について中国の一部であることを意味する「中国台湾省」を使うよう求める内部文書を配布したことを明らかにした。台湾外交部(外務省)は同日中にWHOに「台湾の主権をないがしろにしている」と抗議した。

 さらに馬英九総統は10日、「我々を矮小(わいしょう)化する名称だ」とWHOに強い不満を表明。中国にも「WHOに圧力をかけたのは明らかで、台湾人の感情を傷つけた」と批判した。

 この内部文書には、WHOと中国との間で05年に「中国台湾省」の名称を使う密約が交わされていたことが記されていた。文書には名称のほか「台湾を中国とは別の国と見なすべきでない」とも書かれていたという。

 馬総統は08年の就任後、対中関係の改善を進めてきた。中国とWHOとの協議の末、09年からWHO年次総会へのオブザーバー参加を果たした。公式の場では、中国が台湾に配慮する形で、五輪参加の際の「中華台北」という名称が使われてきた。しかし、中国は各国に「一つの中国」を認めるよう圧力をかけ続けてきた。

 一方、馬政権は内部文書の配布を当初から知っていたが、WHOへの参加を「国際社会での孤立から脱却する成果」と評価しており、公表しなかったようだ。民進党の暴露を受け、馬総統がすぐに抗議を決定した背景には、来年1月の総統選を控え、台湾人にとって最も敏感な主権問題に絡んで「中国に対して弱腰だ」との批判をかわす狙いとみられる。


 馬政権は内部文書の配布を当初から知っていたが、WHOへの参加を「国際社会での孤立から脱却する成果」と評価しており、公表しなかったようだ、と報じられています。



 「ようだ」と書かれているので、完全に事実であると考えてよいのか、やや疑問がありますが、

   (WHOへの参加を)
     評価している(事実)ので、公表しなかったようだ

ということですから、「ようだ」と書かれてはいるものの、「事実」であると考えてよいと思います。

 馬英九政権はこの事実 (=WHO内部文書による「中国台湾省」表記の要請) を「あえて」公表せず、「あえて」抗議しなかった、ということです。

 したがって、
民進党の暴露を受け、馬総統がすぐに抗議を決定した背景には、来年1月の総統選を控え、台湾人にとって最も敏感な主権問題に絡んで「中国に対して弱腰だ」との批判をかわす狙いとみられる。
という判断は、まず間違いなく、真相を的確に捉えていると考えてよいと思います。



 とすれば、世界保健機関(WHO)のみならず、馬英九政権も「二枚舌」を使っていたことになります。

 つまり、台湾の現政権は「親中政策」をとっていますが、有権者の支持を失わないために「中国には距離を置かざるを得ない」ということです。

 「台湾の五大都市市長選結果」で述べた私の予想は「的中していた」とみてよいのではないかと思います。



 今後の動向が気になりますが、昨日の段階では、次のように報じられています。台湾の世界保健機関(WHO)への抗議は、「口頭」での抗議から、「文書」での抗議に切り替わったようです。



日本経済新聞」の「台湾がWHOに抗議文 「中国台湾省」の表記で」( 2011/5/17 2:41 )

 台湾の邱文達・衛生署長(衛生相)は16日、訪問中のジュネーブで記者会見し、世界保健機関(WHO)が内部文書で台湾を「中国台湾省」と表記した問題に関して「この用語は現実を反映しておらず、我々はそのように呼ばれることを受け入れない」と語った。台湾は同日、チャンWHO事務局長に抗議文を提出したという。

 邱衛生署長は会見で「間違った用語は台湾を尊重しないばかりか、WHO職員に混乱や誤解を招く」と訴え、WHOの全文書で「中国台湾省」の用語使用を停止するよう求めた。

 台湾は16日に開幕したWHOの年次総会にオブザーバーとして参加し、邱衛生署長は17日に演説する予定。参加は2009年以来3回目となる。(ジュネーブ支局)




 なお、馬英九は「自分は中国人である」と考えているようです (「李登輝の馬英九分析」参照 ) 。



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 「「中国を特別扱いするな、台湾を特別扱いしろ」という「偏った」主張

9 コメント

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問題は事務局長の中立性 (四葉のクローバー)
2011-05-18 13:36:27
素晴らしい。
今回は、私の見解と完全に一致しております。

民進党や自由時報、台北タイムス、などの野党系メディアを中心に、来年1月の総統選を控え、この類の暴露合戦は更に激しさを増すでしょう。

また、馬総統が、内心ではやりたくもない抗議を、激怒の表情でやらなければならないことは同情を越えて、哀れと言ってよいでしょう。

しかしそれでも、馬総統は、鳩山や菅などに比べれば、はるかに賢く、国のリーダーとして相応しいです。
まあ、最低と比べても仕方ないか。

馬総統は、過去のインタビューで「私は任期中に最もやりたいことは、台湾を法治国家として残したいことだ」との趣旨の発言をしております。過去の黒金政治(暴力団や政治と金の問題)の反省を踏まえてのことと思いますが、私は、この点だけは高く評価します。馬総統は西欧型の民主主義国家を目指しているようです。

但し、私は、来年の総統選挙に限って言えば、蔡英文を支持します。
台湾にとっての本当のベストは王金平なんですけどね。

ところで、何故、中国政府が台湾人(与野党問わず)最も嫌がる「中国台湾省」を強要し続けるのか、理解できません。これを続けていけば、台湾人は更に、中国を嫌いになり、台湾の民心が中国から離れていくだけの、「愚策」以外の何物でもないからです。中国内部の良識派からも、さすがにもうやめたら、との意見が出てきていますが、当分は続きそうです。

しかし、台湾人の民心が中国から離れていくことは、日本にとって、マイナスではありませんので、日本の姿勢としては、「さあ、もっとおやりになって、もっと台湾人から嫌われてください」でよいでしょう。

あと、マーガレット・チャン事務局長(香港)は、ニュートラルであるべき立場を履き違えており、事務局長に相応しくないです。即刻、解任すべきです。

例えば、国連のパンギムン事務総長が、国連加盟国すべてに対し「竹島は韓国領土だ」という文書を送りつけるようなものだからです。

以上
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Unknown (memo26)
2011-05-18 18:33:22
> 素晴らしい。

 ありがとうございます。馬総統も大変でしょうが、中国も大変でしょうね。中国としては、反中派が抗議するなら対応が「たやすい」ですが、親中派が抗議する場合、「どう対応するか」が難しい問題になってきます。そのあたりも注目に値すると思います。

> 但し、私は、来年の総統選挙に限って言えば、蔡英文を支持します。台湾にとっての本当のベストは王金平なんですけどね。

 なぜですか?

> 何故、中国政府が台湾人(与野党問わず)最も嫌がる「中国台湾省」を強要し続けるのか、理解できません。これを続けていけば、台湾人は更に、中国を嫌いになり、台湾の民心が中国から離れていくだけの、「愚策」以外の何物でもないからです。

 誰にでも「譲れない一線」というものがあります。中国としては、「台湾は中国の一部である」という部分は、まさにその「譲れない一線」にあたるのではないかと思います。
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台湾の政界 (四葉のクローバー)
2011-05-19 12:06:45
>中国としては、反中派が抗議するなら対応が「たやすい」ですが、親中派が抗議する場合、「どう対応するか」が難しい問題になってきます。そのあたりも注目に値すると思います。

親中派といえども、とりわけ外省人は、「中華民国」国民としての強い誇りを持っています。
中国は、彼らを「独立派」と同列に扱う傾向がありますが、これは台湾の真実が見えないこと、あるいは見ようともしない、ことによるものです。
この政策は、必ず失敗するでしょう。

>但し、私は、来年の総統選挙に限って言えば、蔡英文を支持します。台湾にとっての本当のベストは王金平なんですけどね。
なぜですか?

1)王金平氏について
台湾の政界は、国民党、民進党という二大政党で成り立っております。
また、113議席の内、73議席が小選挙区からの選出で、少数政党が議席を獲得するのは殆ど不可能な状況です。
しかし、これが必ずしも、台湾の民意を正確に反映しているとは言えず、政界再編が必要だと考えます。
例えば、現状では、
国民党…①統一派+②現状維持派
民進党…③独立派+②現状維持派
というように、一種のねじれが存在します。
従って、国民党と民進党の②現状維持派が合流して、第三の勢力を結集するのが望ましいです。
その際、第三の勢力を率いるリーダーに最も相応しいのが、王金平氏です。
王金平氏は、現在、国会議長ですが、与野党双方の議員からも幅広く尊敬を集めています。

2)蔡英文氏について
今回、蔡英文氏が、民進党の総統候補に選出されました。
もし、民進党内の予備選挙で、蔡英文氏以外の候補が選出されたのなら、私は、支持しなかったかもしれません。
というのは、蔡英文氏以外だと、陳水扁氏から連綿と続く悪しき伝統「政治と金の問題」が出てくる可能性があるからです。蔡英文氏ならその心配はありません。
蔡英文氏はまだ若く、学者肌で、統治能力に未知数な部分がないとは言えませんが、極めて優秀ですので、基本的に心配はありません。政策的にも、穏健な路線を取るでしょう。
それと、東南アジアでは、既に、フィリピンやインドネシアで女性指導者が誕生していますが、東北アジアでは未だです。この機会に、東北アジア初の女性指導者が誕生して欲しいです。

>誰にでも「譲れない一線」というものがあります。中国としては、「台湾は中国の一部である」という部分は、まさにその「譲れない一線」にあたるのではないかと思います。

中国は、言っても聴く耳を持たないようですので、この際、好きなだけ、納得するまで、息が切れるまで、やらせてみてはどうでしょうか。
但し、失敗しても他国のせいにしないこと、を条件に。

以上
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Unknown (memo26)
2011-05-20 11:15:32
 ご返事ありがとうございます。勉強になります。

 ただ、読んでいてやや疑問に感じたところがありますので、それについてコメントします。

 一種のねじれが存在する、とのことですが、現状は、

  ・外省人(に近い人々)の
     統一派と現状維持派、
  ・本省人(に近い人々)の
     独立派と現状維持派、

に分かれているのではないでしょうか。とすれば、現状は「自然な状況」で、とくに「ねじれ」ているとはいえないと思います。

 四葉のクローバーさんがおっしゃるように「第三の勢力を結集」するには、時間がかかるのではないでしょうか。台湾人のなかで、外省人と本省人の区別がなくならないかぎりは、すくなくともこの区別が重要でなくならないかぎりは、「第三の勢力」結集は難しいと思います。
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第三の勢力 (四葉のクローバー)
2011-05-20 11:27:19
あなたがおっしゃるように、
外省人(に近い人々)の現状維持派と本省人(に近い人々)の現状維持派、は微妙に違います。

現状維持後のイメージが少し異なります。

しかし、「王金平氏なら」なんとかまとめる力があると思います。
私の知る限り他の政治家では無理ですが。

そういえば、日本も別の意味で、政界再編が必要ですかね。








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国民党も主流は本省人 (四葉のクローバー)
2011-05-20 14:08:04

(追記)

国民党=外省人(に近い人々)の統一派と現状維持派、とも言い切れません。

国民党にも、民進党の本省人(に近い人々)の現状維持派、と同じ勢力が存在します。

例えば、前回(2008年1月)の立法委員選挙では、国民党当選者(81人)の内、本省人(71人)、外省人(10人)、という内訳でした。

また、国民党の党員の約7割は本省人です。

いずれにしても、主流は本省人なのです。

王金平氏は特に、上記の本省系議員(71人)、に対して強い影響力を持っています。

ですから、外省人と本省人の区別、について言えば、もう以前ほどには重要ではなくなりつつあります。

以上、ご参考まで
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Unknown (memo26)
2011-05-20 14:50:47
 いえ、私が言っているのは、

  外省人に近い人々
   =外省人と「利害関係・立場の近い人々」、

  本省人に近い人々
   =本省人と「利害関係・立場の近い人々」

です。台湾の人口のほとんどは本省人ですよね。

 ところで、前から疑問に思っていたのですが、外省人と本省人が結婚した場合、子供は「何省人」になるのでしょうか?
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外省人と本省人が結婚した場合 (四葉のクローバー)
2011-05-20 15:12:19
>ところで、前から疑問に思っていたのですが、外省人と本省人が結婚した場合、子供は「何省人」になるのでしょうか?

これについては、自信を持ってお答え出来る、ほどではありませんが、

確か、父親の省籍に合わせる、と聞いたことがあります。

正確な所は、ご自身で調べられた方が良いかと思います。

以上

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Unknown (memo26)
2011-05-21 14:32:22
 そういえば外省人(男)と本省人(女)との間に生まれた子供は外省人になる、という話があったようななかったような。。。

 結婚は外省人と本省人の区別を小さくする(なくす)決定的な要素だと思います。正確なところが判明すれば、ブログに記載しておきます。
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