リチャード・L・アーミテージ ジョセフ・S・ナイJr 春原剛 『日米同盟 vs. 中国・北朝鮮』 ( p.68 )
アーミテージ氏もナイ氏も、G2には否定的であり、中国もG2には否定的である旨、書かれています。
アーミテージ氏は米国共和党の、ナイ氏は米国民主党の安全保障問題の大御所です。したがって、米国では、共和党も民主党も、米中G2には否定的であることがわかります。
中国もG2には否定的である、というところも興味深いですね。
アメリカも中国も、G2には否定的である以上、現実問題として、田中宇さんが主張していた米中G2体制などは、「あり得ない」ということになります。
一部では「米国の弱体化・覇権の喪失」が主張されています。しかし、かつてほど圧倒的ではなくなったとはいえ、他国に比べ、米国の力はまだまだ圧倒的ですし、かつてほど国力が弱くないとはいえ、中国の力は圧倒的ではありません。米中G2体制論は、米国の弱体化・中国の強大化という「傾向」のみを捉え、「現在のレベル」を無視した論説だと言ってよいと思います。
実際、
田中宇さんのように、米国の弱体化・中国の強大化を主張する人々もいますが、「傾向」としてはともかく、「現在」の情勢判断としては、それらは誇張が過ぎるのではないかと思います。
春原 オバマ政権が発足する頃、米国内では中国の台頭を視野に入れて、「米中G2体制」なる言葉が盛んに取り沙汰されていました。今となってはそれも「幻想」に過ぎなかったと多くの人が認めていますが、改めて米中G2論についてご意見を聞かせて下さい。
ナイ G2体制というコンセプトについて、私は常にあまり良くない考えだと思っていました。というのも、その考え方には、あたかもどんな問題でも(米中の)二ヵ国で解決できるかのような響きがあったからです。つい最近まで世界第二位の経済大国だった日本や、実際には米経済よりも大きな欧州連合(EU)のことを視野に入れていないのです。
アーミテージ 私はその考え方が大嫌いでした。そして中国人も嫌っていたと思います。中国にとって、G2体制は過剰な圧力の素なのです。それに比べ、(インドやブラジルなどを入れた)G20体制は歓迎です。これが使える枠組みとなって満足しています。G2などという言葉は中国の虚栄心をくすぐりはするでしょうが、それは同時に彼らからしてみれば何かを強要されることになるため、実際には忌み嫌うのです。
春原 G2と同義語で「チャイナメリカ(Chinamerica)」というのもありました。そう言えば、かつては「アメリッポン(Amerippon)」などという造語もありましたね(笑)。
ナイ ここで考えなければならないのは中国と協力する方法を学び、中国の意見を聞きとるフォーマットを作ることが有益であるということです。たとえば、主要国首脳会議(G8)には中国が入っていないのですから、G8は中国を含まないがゆえ、かつてほど有効ではなくなりました。しかし、G2は日本もEUも含まないのですから有益とはとうてい思えないのです。
一方、G20というコンセプトは中国を含め、より多くのアジア諸国が含まれていて、それは良いことだと思います。ただ、G20はとても大きいので、今後は何がしかのフォーマットというか、違う枠組みも考えなければならないとは思います。いずれにせよ、G2というのが進むべき正しい道筋だとは思いません。
春原 一番簡単な方法はG8に中国を加盟させて、G9にすることでしょうか? もちろん、中国はそれには消極的なわけですが……。
ナイ それは可能でしょう。中国が同意するかどうかはわかりませんが。加えて、インドやブラジル、南アフリカ共和国なども参加を望むのではないでしょうか。この枠組みはすでに「G8プラス5」ということで成立していますが。今後は新しい国際的な枠組みを時間をかけて考えていかなければなりません。(G8やG2といった)一つの枠組みだけで全ての物事を網羅することなどできはしないのです。
春原 いま言及された「G8プラス5」は実質的には国連安全保障理事会の「拡大版」のようでもありますね。
ナイ そういうことになりますね。
アーミテージ氏もナイ氏も、G2には否定的であり、中国もG2には否定的である旨、書かれています。
アーミテージ氏は米国共和党の、ナイ氏は米国民主党の安全保障問題の大御所です。したがって、米国では、共和党も民主党も、米中G2には否定的であることがわかります。
中国もG2には否定的である、というところも興味深いですね。
アメリカも中国も、G2には否定的である以上、現実問題として、田中宇さんが主張していた米中G2体制などは、「あり得ない」ということになります。
一部では「米国の弱体化・覇権の喪失」が主張されています。しかし、かつてほど圧倒的ではなくなったとはいえ、他国に比べ、米国の力はまだまだ圧倒的ですし、かつてほど国力が弱くないとはいえ、中国の力は圧倒的ではありません。米中G2体制論は、米国の弱体化・中国の強大化という「傾向」のみを捉え、「現在のレベル」を無視した論説だと言ってよいと思います。
実際、
- 米国は「ヒラリー・クリントン国務長官の外交問題評議会での講演」において、他国と協調・協力する姿勢を打ち出しつつも、アメリカが指導的立場をとることを明言していますし、
- 中国は「中国人民解放軍総参謀長の発言(台湾問題)」において、中国の軍備は米国に遥かに及ばない、20年は遅れている、とても悲しい、と語っています。
田中宇さんのように、米国の弱体化・中国の強大化を主張する人々もいますが、「傾向」としてはともかく、「現在」の情勢判断としては、それらは誇張が過ぎるのではないかと思います。