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大正を知る人

2012-01-17 12:55:29 | 編集手帳



  1月10日付 読売新聞編集手帳


  新橋、京橋、数寄屋橋…「橋」といっても、
  川や掘割はない。
  東京では多くが戦後の高度成長期に埋め立てられ、
  姿を消した。

  「大正というのは、東京にまだ水があった時代ですね」。
  30年ほど前に発行された『大正および大正人』という雑誌の座談会で、
  挿絵画家の風間完さん(大正8年生まれ)が語っている。

  明治と昭和が激動の大河であるならば、
  モダンで伸びやかな“大正浪漫”には、
  街の灯を映す東京の川を思わせるところがある。
  明治から大正に年号が改まったのは1912年の7月30日、
  今年は改元から満100年を迎える。

  大正に生まれ合わせた子供は不幸だと思う――と、
  国文学者の池田弥三郎さん(大正3年生まれ)が同じ座談会で述べていた。
  「スペイン風邪に関東大震災、
  やがて兵隊にとられて…」。
  日本が敗戦の焦土から見事に立ち上がったのは、
  震災をはじめとする数々の苦難を肌で知る世代が、
  一家の父として母として奮闘してくれたおかげだろう。

  大正生まれの100歳も誕生する。
  喜びと悲しみをこもごも映した川の流れを知る人たちに、
  教えていただきたいことはたくさんある。
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