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待ち遠しいのは心弾む春

2011-01-31 22:08:10 | 編集手帳
  1月20日 読売新聞編集手帳


  活動弁士として活躍した故・丸山章治さんの句に
  〈臘梅(ろうばい)のあわてふためき咲きにけり〉とある。
  ロウバイと「狼狽」を掛けている。
  ロウバイが見ごろを迎えたという便りが、各地から届く季節である。

  きょうは「大寒」、
  一年でいちばん冷え込みの厳しい頃に咲くその花にはたしかに、
  春を待ちかねて小走りになったような「あわてふためき…」の感じが、ないでもない。
  半透明の蝋(ろう)を引いたような光沢のある薄黄色の花びらは春の先触れでもある。

  季節が前のめりでやってくるといえば、プロ野球の話題もそうだろう。
  日本ハムに入団した斎藤佑樹投手(22)(早大)の合同自主トレが世の注目を浴びて、
  “球春”到来も今年は駆け足のようである。

  同じスポーツ新聞には、しかし、入団の喜びもつかの間、
  ひじを手術した新人選手や、過去の栄光に背を向けて育成枠から出直すベテラン選手など、
  冬に耐える人々の消息も載っていた。

  丸山さんには〈立春や出世ののぞみ起りけり〉という句もある。
  こちらは立春と「立身」を掛けている。
  いまはじっと雌伏のときを過ごす人にも、やがては心弾む春の来ることを。

   
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