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映画の今昔物語

2011-01-27 13:04:48 | 編集手帳
  1月17日 読売新聞編集手帳


  「(高倉)健さんの映画なんか有楽町より新宿で見る方がハマる」。
  映画通でも知られるイラストレーターの和田誠氏の弁である。
  (『今日も映画日和』文春文庫)
  強くて不器用な男に向き合うには、
  お高くとまった劇場より猥雑な街の場末の小屋が確かにふさわしい。

  白昼の往来から暗闇に身を潜め、銀幕に没頭する。
  そこで出会った何気ない場面やセリフを心に焼き付けたファンは多かろう。
  そうした「映画体験」の場も、時代とともに変わっていく。

  都内で、ミニシアターの閉鎖が相次いでいる。
  古今東西の佳作を地道に上映してきた小さな映画館に代わり、
  台頭著しいのが大小複数のスクリーンを持つシネマ・コンプレックスである。

  観客の好みに応じた作品を並べ、館内は明るく快適だ。
  斜陽化していた日本映画の復権にも、一役買っている。
  昨年の興行収入は過去最高に達したという。

  昨年は池部良、小林桂樹、高峰秀子ら名優たちが世を去り、
  まばゆい「昭和」に重なる映画の黄金期はさらに遠のいた。
  だとしても、人生を変える一本に巡り合える幸福な時間は、
  これからも映画館にこそあるのだろう。

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