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歌舞伎座の「初芝居」

2011-01-08 22:27:27 | 編集手帳
  1月3日 読売新聞編集手帳


  <歌舞伎座の前通りけり初芝居 正岡子規>。
  着飾った老若男女が、見たばかりの新春狂言の感想を披露し合っている。
  子規もまた、そんな年の初めの華やかな光景に加わったのだろうか。
  <初芝居見て来て晴着いまだ脱がず〉という句もあった。

  この正月は残念ながら、東京・東銀座の歌舞伎座は建て替え中である。
  まだ基礎工事の段階で、数十メートル四方の空間がぽっかり広がるのみだが、
  周囲を覆う鉄板壁から、何を建設しているかはおのずと分かる。

  普通なら武骨なだけの鉄板に、
  定式(じょうしき)幕を模して黒、柿、萌黄(もえぎ)の3色をあしらっているからだ。
  歌川豊国の役者絵パネルなども目を引く。

  楽屋話で恐縮ながら、
  読売新聞東京本社が近所に移転したため、建て替え現場をながめつつ出勤している。
  長年親しまれた桃山風の建物が消えたのは寂しいものの、
  新たな殿堂が姿を現す過程を見守るのも幸せなことであろう。

  もちろん、公演は近隣の劇場に引き継がれているのだけれど、  
  <初芝居>の季語は、やはり歌舞伎座が一番似合う。
  建築の進行と共に日本が元気になるよう祈願し、
  また晴れ着であふれる時を待ちたい。

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