1月3日 読売新聞編集手帳
<歌舞伎座の前通りけり初芝居 正岡子規>。
着飾った老若男女が、見たばかりの新春狂言の感想を披露し合っている。
子規もまた、そんな年の初めの華やかな光景に加わったのだろうか。
<初芝居見て来て晴着いまだ脱がず〉という句もあった。
この正月は残念ながら、東京・東銀座の歌舞伎座は建て替え中である。
まだ基礎工事の段階で、数十メートル四方の空間がぽっかり広がるのみだが、
周囲を覆う鉄板壁から、何を建設しているかはおのずと分かる。
普通なら武骨なだけの鉄板に、
定式(じょうしき)幕を模して黒、柿、萌黄(もえぎ)の3色をあしらっているからだ。
歌川豊国の役者絵パネルなども目を引く。
楽屋話で恐縮ながら、
読売新聞東京本社が近所に移転したため、建て替え現場をながめつつ出勤している。
長年親しまれた桃山風の建物が消えたのは寂しいものの、
新たな殿堂が姿を現す過程を見守るのも幸せなことであろう。
もちろん、公演は近隣の劇場に引き継がれているのだけれど、
<初芝居>の季語は、やはり歌舞伎座が一番似合う。
建築の進行と共に日本が元気になるよう祈願し、
また晴れ着であふれる時を待ちたい。
<歌舞伎座の前通りけり初芝居 正岡子規>。
着飾った老若男女が、見たばかりの新春狂言の感想を披露し合っている。
子規もまた、そんな年の初めの華やかな光景に加わったのだろうか。
<初芝居見て来て晴着いまだ脱がず〉という句もあった。
この正月は残念ながら、東京・東銀座の歌舞伎座は建て替え中である。
まだ基礎工事の段階で、数十メートル四方の空間がぽっかり広がるのみだが、
周囲を覆う鉄板壁から、何を建設しているかはおのずと分かる。
普通なら武骨なだけの鉄板に、
定式(じょうしき)幕を模して黒、柿、萌黄(もえぎ)の3色をあしらっているからだ。
歌川豊国の役者絵パネルなども目を引く。
楽屋話で恐縮ながら、
読売新聞東京本社が近所に移転したため、建て替え現場をながめつつ出勤している。
長年親しまれた桃山風の建物が消えたのは寂しいものの、
新たな殿堂が姿を現す過程を見守るのも幸せなことであろう。
もちろん、公演は近隣の劇場に引き継がれているのだけれど、
<初芝居>の季語は、やはり歌舞伎座が一番似合う。
建築の進行と共に日本が元気になるよう祈願し、
また晴れ着であふれる時を待ちたい。