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ロンドンから徒然に

22才の別れ

2007-09-23 | 映画・演劇
 昔うちの母親に「かぐや姫ってグループ知ってる?」と訊かれました。『神田川』で全国的に有名になるのはまだ先の話ですが、大分ではメンバー全員が地元出身ということで先行して知名度はありました。
 「知ってるよ」と答えると、「その中に伊勢さんっている?」との次の質問。「その人って、うちに来ている伊勢さんの息子さんみたいよ」
 当時うちは家業がレストランで、時々お客さんとして伊勢正三さんのお父さんが来られていたのです。

 かぐや姫のその後の活躍は言うまでもないことなのですが、伊勢さんの作曲センスが最初に発揮されたのがアルバム『三階建の詩』です。
 それまで南こうせつさんの曲に詩を付けたりしたことはあるものの、曲も自分で作ったのはこのアルバムの中に収録された2曲が初めてらしいのですが、その2曲というのがなんと『なごり雪』、『22才の別れ』という名曲なのです。両方共かぐや姫としてはシングルカットされることなく、それぞれ“イルカ”と(伊勢さん自らが結成したグループ)“風”によってシングルカットされ大ヒットになりました。

 大林宣彦監督が『なごり雪』をモチーフに(僕の故郷でもある)臼杵を舞台にして映画を作ったのが5年前、そして今回『22才の別れ』を伊勢さんの故郷である津久見を舞台に映画化しました。
 この映画、津久見と共に、舞台設定としては主人公の勤務先である福岡でのシーンが多いのですが、その多くが実際には大分市内でも撮られ、最後にはまた臼杵が出て来ます。そのクライマックスの“竹宵”の様子の幻想的なこと!竹ぼんぼりにロウソクを仕込んで、町中に飾り付けるというものなのですが、実はこの催し、僕が故郷を出てから始まったものなので、まだ一度も経験していません。もっとも映画のシーンは、このために普段の何倍もの竹を使っているとのことなのですが。
 
 津久見と臼杵は隣り合った町なのに、その性格と歴史には違いがあります。
 映画の中でその対比を、津久見はセメント工場を中心に経済成長を遂げようとする活気のある町であり、臼杵はセメント工場を作らずに過去の町並みを残し過去に溶け込もうとしている、と表現していました。主人公のふたりがこの違う町それぞれの出身という設定は、その対比を何らかの形で表したかったのでしょうか。

 故郷の懐かしい風景を見ようと軽い気持ちで出かけたのですが、脚本も映画の構成も前作よりも完成度が高く、情感溢れる品位の高いものに仕上がっていました。
 あの終わり方を見る限り、また次の作品がありそうですし(尾道映画も三部作でしたしね)、また臼杵が舞台になる可能性は大です。いつになるかは分かりませんが楽しみにしています。