HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

インランド・エンパイア

2007-09-16 | 映画・演劇
 「観る者は、直観力を駆使することを恐れてはいけない。とにかく感じ続けること。内にある知識を信じることだ。.....(中略).....シネマは言語を超えたものだ。シネマと音楽は似ていて、美しく知的な旅のできる素晴らしいものだ。言葉なしに語りかける。だから違う世界を開き、ぜひ体験してほしい。」
 昨年のベネチア映画祭で栄誉金獅子賞を受賞することが決まり、『インランド・エンパイア』のプレミアム上映に先立っての記者会見でのデイヴィッド・リンチ監督の言葉です。

 そうだよね、文学的・論理的な解釈をやめて感じ取ればいいんだよね。とでも開き直らざるをえない今日の『インランド・エンパイア』体験でした(笑)
 何しろこの映画の中で、主人公の女優ニッキーが出演することになった映画『暗い明日の空の上で』は、いわく付きのポーランド映画『47』のリメイクという設定で、さらには50年代風の部屋に3人のウサギ人間が登場し、これらの劇中劇が並行して進行する中で現実が映画と重なり、その現実さえ夢なのかどうか分からず、さらにはその全体を見ながら涙を流している謎の女がいて..........
 もう途中からは、というより殆ど最初から、何も考えずにリンチ・ワールドに身を任せていました。

 それにしてもデイヴィッド・リンチの映画は『音』に埋め尽くされています。彼自身が作曲もこなすのですが、過去の音楽を新鮮なシチュエーションで使います。そしてその間を埋めるのがノイズ。導入部からして、古い蓄音機の針がSP盤の溝を走るノイズです。
 彼は絵画の方でも有名で、今年パリのカルティエ財団美術館で3ヶ月近くの長きにわたる展覧会『Air is on fire』が開かれました。これまでの作品の多くを集めた回顧展の様相を呈していたそうで、面白い展覧会だったとの評判です。
 映画が総合芸術だとすると、彼は文字通りの総合芸術家ですね。

 映画の帰りに渋谷に寄ったら、福田康夫氏と麻生太郎氏の街頭演説会の最中で、皮肉なことに安倍首相の街頭演説でさえこれほどは、というほどの集客ぶりでした。
 こちらは“感じる”だけでは済まない世界ですので、しっかり説明をお願いしますね。