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ロンドンから徒然に

ラウル・ミドン再び

2007-09-04 | 音楽
 アリフ・マーディンという有名なプロデューサーがいました。アトランティック・レーベルを中心に数々の有名なアーティストをプロデュースして来ました。ダイアナ・ロス、アレサ・フランクリン、ロバータ・フラック、チャカ・カーン、あるいはビージーズ、ホール・アンド・オーツ、フィル・コリンズ、etc.......ちょっと挙げただけでも錚々たるメンバーばかりです。
 残念なことに昨年の夏、膵臓癌で亡くなりました。74歳でした。

 晩年に手がけたアーティストとして最も成功したのはノラ・ジョーンズでしょう。では、本当に最後の最後に世に送り出したアーティストは?
 実はこれが息子のジョー・マーディンと共同プロデュースしたラウル・ミドンなのです。驚異的なテクニックの盲目のギタリストでシンガー&ソング・ライター。ハイ・トーンのファルセットとバリトンを自由自在に使い分けるヴォーカリストでもあり、おまけに自分の口をまるでトランペットのように鳴らすことまでやってのけます。

 昔、同じく盲目のギタリストでシンガー&ソング・ライター長谷川きよしさんの演奏を聴いた時に、そのテクニックとリズムの凄さに驚愕しましたが、その後に改めてすごいなぁと思ったのが、そのギター・テクニック以上の歌の表現力でした。あんな驚異的なギターを弾きながら、歌の隅々まで気持ちが行っているのに感動しました。
 
 ラウルもそう。昨年1月に渋谷AXで見たライヴは最高でした。たったひとりの2時間近くのステージに客席は皆ずっと興奮状態でした。
 打楽器のようにギターを叩き、ハーモニクスを効果的に使い、早弾きでメロを取り、時にはループを使い、ソウルフルながらも、ポップだったり、ラテンの要素があったり、そこに例のバリトン、ハイトーン、マウストランペットと縦横無尽なヴォーカルが乗ります。

 そのラウルのセカンド・アルバムが出ました。今1回流してみましたが、第一印象はちょっと前より落ち着いた感じかな?変にテクニックの強調がない分、より曲としての重みみたいなものがあるような。
 重みと言えば、今回はけっこう歌詞が意味深な気がします。(ボーナス・トラックを除けば)最後の曲“peace on earth”なんて『希望も未来もない』と言い切った歌詞から始まって、終わりには『全ての人が武器を持てば平和が来る』なんて歌っています。反語的表現だとは思いますが、過激な!
 さて、もう1回聴いてみることにします。