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ロンドンから徒然に

ベルト・モリゾの強さ

2007-09-19 | アート
 パリに旅行に行った人なら経験しているでしょうが、ルーヴルやオルセー等の人気美術館は時として(特にお店が休みの日曜日などは)人で溢れ、入るだけで随分時間を取ってしまうことがあります。
 こんな時、もしあなたが印象派、特にモネの絵が好きならば、穴場はマルモッタン美術館です。ブローニュの森近く、閑静な住宅街の中にあるこの小さな美術館は、フランス語で Musee Marmottan Monet (ミュゼ・マルモッタン・モネ)の名前が示すように、モネの息子ミシェルからの寄贈作品を始めとするモネの作品を中心に構成されています。

 その中にあって、静かに輝いている印象の絵が女流画家ベルト・モリゾの作品です。
 日本では殆ど知られていなかったモリゾですが、3年前のマルモッタン美術館展で紹介されて以来、日本でも徐々にファンが増えているようで、その後画集も発刊され、今回は単独の展覧会が新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開かれています。

 マルモッタンで最初に観た時の僕の印象は、油絵というより水彩画的、かつ写真的な絵だなという印象でした。夫(マネの弟ウジェーヌ)と愛娘ジュリーを中心とした家族の幸せそうな絵が最初に印象に残ったからかもしれません。
 ところが今回、個人所蔵の作品を中心とした数十点の作品をじっくり観ると、意外と荒々しいタッチや豪快な構図が多いことに気が付きました。
 当時女性が画家になるなんてことが考えられなった時代に、権威あるアカデミーのうるさい決まりごとに逆らって、のちに印象派と呼ばれるようになるモネ等の一派に共感して独自に展覧会に参加した経緯などを考えたら、並みの女性であるはずもなく、良妻賢母の綺麗な主婦の内面は、すごく芯の強い性格に支えられていたに違いないと思います。
 それでもなお、夫や娘を描いた愛情溢れる家族の絵が、僕は一番好きです。

 実は開催初日の15日(土)に展覧会に出かけたのですが、個人所蔵の作品のうち数点が都合で今日からの展示となっていました。もう一度行こうと思っています。