HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

鎌倉の邸宅美術館

2007-09-22 | アート
 気品に溢れた空間を独り占めするのはなんと贅沢なことでしょう。今日は何年ぶりかに鎌倉に出かけ、鎌倉大谷記念美術館に行って来ました。
 ここはホテルニューオータニ前会長の故大谷米一氏を偲んで、10年前に遺族によって開館されたのですが、故人の居住していた鎌倉別邸を改装した邸宅美術館で、当時の趣がそのまま残されているため、豪邸に招かれて個人のコレクションを観ているような(実際そうなのですが)気分になります。
 観光の中心地からは少し離れた閑静な住宅街の中にあって訪れる人もそう多くはなく、ずっと贅沢な空間を独り占めできて幸福でした。

 創業者の米太郎翁のコレクションであった日本近代絵画も数多いのですが、洋画の方は米一氏のデュフィ・コレクションが有名で、デュフィの三大テーマと言われている『海、音楽、競馬』のそれぞれで名作を所蔵しています。その他にもモディリアーニ、キスリング、ユトリロ等いわゆるエコール・ド・パリの名画が存在します。
 但し、広いとはいえ個人の邸宅ですから、これら全てが常時展示されるわけではなく、四季に応じた展示替えを行い、さらには年に何回かの特別展示を催しています。

 今月の11日からは『ヴラマンク展』が開催されています。油彩とエッチングそれぞれ10点余りのこぢんまりした展覧会です。
 初期のフォーヴィズムから次の段階に移る過程に描かれたと思われるセザンヌ風な絵もあったりして興味深かったのですが、やはり円熟期の重く孤独感の漂う絵の迫力は凄かったです。
 それにしても、ヴラマンクが貧しい家庭に生まれたというのは有名ですが、生活を支えるためにヴァイオリンを弾いたり、競輪の選手までやっていたというのはご存知でしたか?

 さて、まだまだ暑いですが、暦の上では芸術の秋。東京ではこれからフェルメールやムンクを始めとして、面白そうな展覧会が目白押しです。