植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

農性まひの種苗法 農業の衰退2

2020年06月12日 | 植物
 家内に、熱帯性の果物などの食品アレルギーがあり、柑橘好きなので、狭い果実畑には多くの柑橘類を植えています。自宅用に育てている果樹は、すでに「はるみ・はるか・不知火・清見・せとか・はれひめ」などになっています。
 数年前から、柑橘「カンペイ(甘平)」2007年登録と「紅マドンナ」2005年登録の美味しさを知り、その栽培を熱望しております。甘くてジューシーで食べやすい高級果実です。

 しかしながら、その苗はいまだ入手できません。通常登録してから25年ないし30年は、その品種の育成者権が守られるのです。登録者が苗木の販売を許可しない限り出回ることはありません。ただし法律では、育成者が認めれば、あるいはそれを業としなければ、苗さえあれば個人的には育てられるのです。高くても買うのに、という人は大勢いらっしゃると思いますよ。
 
 上記の2種は、愛媛県立果樹試験場で作出、JA全農えひめの登録商標で相当厳格に保護されています。県外への持ち出しは禁止、当然ネットでも苗木の販売はされていません。どうしても欲しければ、種を見つけて(ほとんどが無種です)そこから栽培する(実生)か、愛媛県の農協直売所で苗を買うか、ということになりましょうか。
 例えばシャインマスカットやりんご「シナノゴールド」1999年登録は、「県外販売許可」付きの限定苗として売られているのをネットで見つけ購入しました。当然ながら、そこらで売られている千円前後の普及品種の果実苗に比べて5~6倍の値段でした。高いのが当たり前です。

 苗木販売を独占・規制して県外流出を防ぎ県内農協と農家が果実販売で潤うのがいいのか、どんどん県外へ株を販売して、苗木の販売収入を得る方が得策なのか、一概には言えないのでしょう。しかし、農協などの組織だけの理屈で、狭い了見で小利を追いかけるようなことになってはしないか、と訝っております。

 まだ百貨店や一流のお店でしか味わえない高級で美味しい柑橘が、どんどん世間に認知されるようになって、柑橘のネット販売が増えるようになったら、それはそれでメリットが大きいような気がします。苗木は恐らく接ぎ木苗で最低でも5千円で売れます。有難がられるうちが花、売れるときに高く売る、開発者利益は出来るだけ広範囲かつ早期に得べかりしものなのです。逆に言うと、偶然かどうかは別にして素晴らしい新品種が出来たとしても、それで30年独占して食べようというのはいささか虫が良すぎるのではありませぬか。一曲ヒットしたら数十年食っていけるというのは、昔の演歌歌手くらいのものでしょう。

 そこで種苗法の改正であります。海外などでの不正な登録品種の育苗栽培を防ぐために、農家さんでの「自家増殖」を抑制する改正案が提出されました。イモでも野菜種でも、果樹苗木までも、翌年以降様に農家さんが育成して利用できなくするというのです。例えば、自分で育成した登録種・種苗の中で、豊産性の強い個体や交配して優秀な植物を、種や挿し木で保管育成して翌年農業に使うのはNG、正規なルートで購入しなさいというのです。益々農家さんの負担が増え、儲かるのは種苗会社と農協なのです。

 種苗法に基づき品種登録されているものは、その定める期間は種苗、収穫、加工品の販売などを独占できるのですが、これまでは例外的には、ちゃんと正規に買った農家さんが翌年用に苗木・種などをとっておいて使うことは認められていました。

 ところが、海外でこれらの新品種を勝手に育苗するという事例は絶えません。正規ルート以外で大量に種や苗を入手し、海外で転売するのです。
 種苗法はあくまで国内法ですし、国外でその権利を主張しようとすればその国で「品種登録」を行わなければなりません。国によってその制度も手続きもばらばら、自国生産物を優先・優遇しますから、日本の品種を持ち込んで登録まで漕ぎつけるのは並大抵ではありません。外国(とりわけ中国韓国などアジア諸国)のよからぬブローカーや農業関係者が、日本から株や種さえ持ち出せれば、実際には野放しで栽培できるので「徒労」となるでしょうね。
 
 農業試験場など公的研究団体や育苗家、農家さんたちが、多額の費用と長い歳月をかけてせっかく素晴らしい品種を作出しても、中国人や韓国人はそ知らぬ顔で盗用して勝手に栽培・販売をおこなうのだからたまったものじゃありません。そこで、種苗法で規制を強化しようと考えたわけです。しかも、販売を許可されるのは海外(アメリカ)の企業も含まれるそうであります。日本の知的財産を、わざわざアメリカに委託販売させ儲けさせるのです。

バカですね。
 
 もともと「ざる法」、人気の登録品種を県外や海外に流出させるのは、こんな程度の改正では防げません。市販されているものを買えば足りるので、一儲けを企む人たちは少し仕入れコストが高くなるにすぎないのです。もしワタシが中国人だったら、夜中に商標登録で守られている果樹園(ミカン山)に行きます。下の方に生えている細い葉茎を切り取ります。あとは、切り花として空輸して接ぎ木にすればいいのです。果実を取られれば怪しまれますが、茎はなかなか気づきませんよ。

 一方生産農家さんはいい面の皮です。例えば、高品質・収穫性の大きいじゃがイモは、出荷規格に満たない小粒・日光に当たった緑化したイモなどは廃棄しなければなりません。種イモには十分使えるのですよ。野菜類など毎年作る作物の苗や種を全てお金を出して買う羽目になるのです。

 さすがに、コロナの予算執行疑惑・黒川の手牌・アベノマスクなどの安倍政権の底なしのチョンボで、検察庁法と同じく種苗法の改正も見送られるようであります。

国民的議論・世間への衆知抜きでいきなり法案だすの・・・やめてもらえませんか



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