植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

印材を持って愉しむだけでは物足りない その1

2022年09月03日 | 篆刻
最近、いずれ中国に行かねばならぬ、ぼんやりとそう考えるようになりました。

目的は篆刻印の印材の故郷を訪ねることにあります。ワタシの手持ちの「石印材」をテーマにした書物は3冊、いずれもその多くを実際に現地を訪ねて、調査し実態を見聞した体験記録に割いているのです。論より証拠、百聞はなんとやらであります。福建省あたりにぷらっと出かけ、採掘現場を見学し、点在する印材の専門店を訪ね歩き、傷物・安物の石を買い求め、出来れば篆刻・印泥のメッカ「西泠印社や書道用品の老舗中の老舗「栄寶斎」で買い物をする、というのが目下の夢であります。コロナがいなくなったら是非実現したいなぁ。

篆刻を手掛けるようになって、その印材の持つアヤシイ魅力の虜になっております。石の種類・産地・由来を知り、希少価値が高い種類の石や、美しい細工、古の中国の著名な書人・篆刻家などの側款がある銘石・古玩の来歴に思いを馳せながら手に取って眺め、もてあそぶというのが、石の楽しみ方の王道でもあろうと思います。

ワタシは、書道の研鑽(笑)に励む傍ら、3年ほど前から当地で開かれる月に一度の骨董市に顔を出すようになりました。そこで、ふるぼけた硯や筆、水滴などを1,2個買う事が始まりました。ここに集う骨董業者は、たぶんほとんどが全国を渡り歩いている骨董商や故買屋さん、中には廃品業者さんもいると見えます。廃屋などにうち棄てられたような、およそ価値のなさそうなガラクタをいかにも値打ちもののごとく売る様は、あの寅さんの世界=香具師やテキヤさんに通じるものがあります。

そこで、いくつか買ったのが石に飾りの彫り(紐)がついている古い印でありました。素人目にも美しく彫られた印影のものもあり、一個500円か千円位であったかと思います。その後、よんどころない事情でヤフオクに参加するというターニングポイントがあり、2年前には篆書、「篆刻」そのものに傾倒することになりました。人生は偶然と必然で織りなされる一疋の織物であります。

書道を始めようと思い立った6年前から、篆刻の世界にのめり込む現在まで、何かに導かれているのかもしれません。そして、ヤフオクによる印材集めが日常化し、最初は実際に自分が彫る練習の為だったものが、収集するうちにその種類が無数にあり、美しいもの彫りやすいもの、駄石から美石・貴石まで千差万別であることを知ったのです。

ヤフオクで落札するという行為は、当然ながら一定のリスクを伴います。価格の設定が出品物の実際の価値と大きくかけ離れるということ、贋作・偽物・不良品などが多く紛れ込む、写真だけで判断し自己責任を負う、などであります。

しかし、それ故、世間でネットや店頭で販売される品々より、平均的には安値で落札されるという利点があります。1円から数十万円までの最低落札価格設定がありますが、その中には大変な値打ちものも、かなりの確率で出現しています。(そういう場合、多くは驚くほど高値で落札されますが)。お宝鑑定団で、オークションで入手したものが大変な珍品であったということもレアケースではありません。

例えばガチャや、露店のあてくじは、99%以上がほぼ無価値か支払ったお金の1,2割程度の品物しかもらえません。宝くじは、高額当選は数万分の一で、売り上げ総額の半分は、お上に税金と同じように召し上げられます。競輪・競馬も似たようなものであります。買った券が外れれば何も手元に残りません。

そこに行くと、ヤフオクは①値打ちはともかく自分が欲しいものが入手できる ②どんな落札でもとりあえず現物が届き「空くじ」無し ③万一気に入らないものも、ヤフオクで売れば丸損にならない ④家に居ながらにして、なかなか見つからない珍品や日本中の品物が買える、といった按配で損することの少ない良心的で得難いシステムであります。最悪、落札したものが駄品で思惑がハズレであったとしても、一応は見たままの品物が届くわけですから。

篆刻に必要な印材、印刀・印泥などに恐らくは100万円以上のお金をヤフオクに使ったでしょうか。しかし、消費した(お金が消えた)わけではありません。毎日のように印刀と印材を使っていて、しかも基本的には減りません。石は錆びもせず腐りもしないので在庫がいくら積みあがっても「不良在庫」とはなりません。

そうしてワタシが辿り着いた結論は、どれだけあってもさして邪魔にならない印材、どうせ集めるなら彫りやすい良材、人に差し上げて喜ばれるような美しい石や紐、将来売る破目になる(遺品整理・生活費補填)場合も、高く売れるものにしよう、ということであります。そこで手持ちの篆刻関連書籍で石について学ぶことにしたのです。

一番初めの勉強は、ネットで調べることでした。しかし、例によってコピペの記事や宣伝目的が多く、系統だった書物が必要だと感じました。以後ヤフオクで入手した芸術新聞社季刊の1993~5年発行「墨スペシャル」の「篆刻入門」「石印材の楽しみ」が最初のテキスト、次が先日紹介した山内秀夫さんの1968年発行「石印材-知識と観賞」定価3200円であります。

しかしながら、この2冊をもってしても印材の種類の特定に関する疑問が数多く残るのであります。ワタシが入手するのは、流通品・駄石がほとんどで、超一流の印材ばかりの写真ではピンと来ません。調べてみるとこうした印材専門書などはニーズが少なく研究家も少ないと見えて、最近発行の著書では2010発行橋本吉文著「印石攷 」位のものでした。残念ながら古書販売でも品切れであります。

ググってみて見つかったのが1977年小林徳太郎著 「図説 石印材」でした。幸いにしてAmazonで一冊3,000円で買えました。昨日届いたこの本、定価が15,000円の立派な装丁の図鑑で、使用感や汚れ書き込みも無い完品でした。ネットでは2,500円から17,000円まで売値の差が大きいのは驚きであります。

ヤフオクではありませんが、ともあれ、発売時の1/5の値段で買えたのですから気分が悪かろうはずがありません。贔屓の巨人軍が久々の圧勝、地元ベルマーレは、優勝争いの川崎フロンターレ相手に、6試合ぶりに勝ち点3をゲットしました。小2の孫は、1~3年生のちびっこトライアスロンの大会で11人中3位!となったとLINEが来ました。

滅多にないいいことずくめの一日でありました。飛行機代払わなくても安く楽しめるのです。



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