植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

 鶏血もどきを鑑定する(前編) 石を集めるようになったらお迎えが近い

2022年12月01日 | 篆刻
今日からもう12月、今年もあっという間に終わろうとしております。
何も得ることなく、何事も成し遂げず、馬齢を重ねているのを恥じております
少年老い易く学成り難し
光陰矢の如し でありますな。

若い頃に読んだ本の一節に、人間が石ころに興味を持って集めるようになったらお迎えが近いのだ、という記述がありました。小さい頃は虫に興味を持ち、そのうちペットを欲しがり、子育てが一段落すると園芸や菜園などのガーデニングにシフトします。最初は草花、果樹・バラなどに夢中になっているうち、だんだん扱うことが難しくなると動きがほとんどなく消毒も害虫駆除も不要な盆栽に走ります。そうして最後は流木やら石ころを拾って集める、という流れになるのです。自分の状態にあった管理できるもの、持て余すことのない事を普段の生活に取り込む、というのが自然の営みと言うものでありましょう。

そういえばこのブログの最初か2番目の記事が「海岸で拾った流木」でした。そして今は、篆刻から派生した石印材にハマり「病膏肓に入る」という状態になっております。まず、先日一泊旅行で出かけた堂ヶ島、ここの荒磯で丸石を拾ってきました。
何の変哲もない石で、海岸にはほぼ全部がこうした礫岩で、荒波に洗われて丸くなった石しかありません。無価値であってただの思い出作りの石ですね。まぁ、これは盆栽などには使えるかもしれません。

それはそうとして、ヤフオクの石印材蒐集は、どうやら自分的にはペースやステージが上がっております。先だって18千円で大変お得な掘り出し物があったので気を良くしていたのです。しかし、調子に乗ったせいで、その後に落札したのがかなり「微妙」で、ほぼ失敗であったと、言えるかもしれません。

例えばコレ

2個で16千円の巨石のカタワレが写真左です。重さ1.4㎏で、置物にも印材にも不向きなのです。これは大きさ(重量)をろくに確認せず入札したワタシのミスであります。石そのものは滑石・凍石系の自然石で、多分大量に採掘できる安い普及材でしょう。これが3㎝角くらいだったらなかなかの品物に見えるはずなのです。加えて、右の二つは、拡大すると細かな紐(持ち手の彫り)があって古材と見たのですが、幅1㎝ちょっとの小石(´;ω;`)でありました。うー-ん、各2千円ほどの値段でしたが、その値段に見合うかしら?、これも大きさをチェックしなかったのが敗因であります。

因みに大きな石とセットのもう一つがこちらの石でした。

これも700gくらいの大きい石ですが、原石は寿山系で長い歳月の間に地表に露出し、雨風にさらされて崩れた岩塊が、川に流れていったり土中に埋もれたものでしょう。半透明の丸石に全面にびっしりと薄意(浅く風景などを彫るレリーフ)があって、十分鑑賞に堪えうるレベルの印材(置物)であります。これに、もしきちんとした漢印などが彫られ、側款が入れてあったなら結構なお宝と見られるでしょう。何しろこれだけの手彫りには、相当な技術と時間を要するのですから。

そして、いささか自分の判断の甘さによる「散財」が続いたのを気に病んでいるところに届いた「鶏血石もどき」3本まとめて、の印材です。このところ自分にとっては、高額な落札価格が残念な結果になったので、高そうなものに手を出さず、競合したらすぐ下りる、としていたのです。わずか3,600円で落札出来たのは、どうみても人造石ぽい「鶏血」で、美術商や蒐集家さんは「偽物」と断じてスルーしたからでしょう。

かく言うワタシも、安っぽい箱に入った真っ赤な石、プラスチックに模様を描いたみたいな妙に奇麗な品物は作り物で、色の悪い自然石の小さな石だけが質が悪くて安い本物の鶏血と踏んで、その一個の値段を考えて5千円の値をいれたのです。

それがこれであります。

一番下のが、やはり本物の中でかなり安いレベルのもので、これはとても硬く、典型的な「刻」に適さない種類の鶏血石(昌化石系)に間違いありません。

問題は上の二つの角印材でした。4000個位の印材、60本ほどの鶏血石を所蔵しているワタシなので、少なくとも人造か否かは分かります。鎌倉の篆刻家雨人さんによれば、中国の印材屋さんお土産物屋で売られているものの90%が偽物だそうです。
その手口は、①普通の石に赤い塗料を塗る ②普通の印材石に赤い模様を印刷したフィルムを張り付ける ③人工物の樹脂などを固めてそれらしく見せる(中に鉛を入れて重くする)などだそうです。印面を磨けば地の色(素材)が出て来るし、フィルムも剥がれて来るのですぐわかります。持って見て自然の石はひんやりするし、自然石そのものの、かっちりとした硬さを感じます。

手元にある二つの石、左の石はどうということのない布製の印箱に入っていましたが、多分前の持ち主が手近な箱で間に合わせたものです。見た目は「全紅」と言われる90%以上が鮮血のような赤です。これが、本物の鶏血石ならば20万円を下らない大変な価値であります。希少で「大紅袍鶏血石」と呼ばれる銘品中の名品に見えるのです。

ワタシはいささか震える手で、この石の側面に印刀を当てました。角の部分を削って中の状態を見たのです。もし中が赤く無ければ、表面に厚く赤い樹脂などをコーティングしたことになります。また、削った跡をペーパーで磨いて石本来の艶が出るかを試したのです。

さて、予定稿を上回ったので続きは「後編」にて
乞うご期待。
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