植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

1万円では田黄石は手に入らない 20万円出しても入手できるとは限らない

2022年10月08日 | 篆刻
ワタシが篆刻を初めて以来、そしてヤフオクに手を染めてから体得した鉄則が「田黄石は1万円では手に入らない」であります。田黄石らしきものをヤフオクで見つけ、数えきれないほどの入札を致しました。(ほとんどが、ワタシの自主ルールが1品で1万円以内です)。「大変な値打ちもの」と見て是非入手したいものには例外的に3万円までは行ってみよう、と頑張ったものも相当な回数になっていて、いくつかは実際に落札いたしました。最近落札した約100点で、2万円前後が2回、いずれも書道筆でした。それ以外には、高橋史光画伯の日本画(本物)、徐三庚さんの側款のある篆刻印など通算でも4,5回2万円越えがあったような記憶があります。(都合の悪いことはあまり覚えないことにしています)

そして、田黄石に限って言えば、数千円~1万5千円程度で落札したのが10回ほどあるのです。いずれも、届いたお品は真正の田黄石で無かったのです。半分近くが人造石でした。残ったものは田黄石に似た自然石で、連江黄・黄青田・鹿目格・黄高山凍・牛蛋黄などのいずれかであろうと思います。下の写真がワタシのコレクションで、一個1万円以上すると思います)


印材をまとめて落札したものに、それらしい石があるにはありますが、見事な紐や薄意が施され、七寸角以上のまとまった大きさで印面に「刻字」がある田黄石は、一つもありません。中央の二つが、もしかすると田黄石の安いやつかもしれません。
今5千個ほどある印材に、正統な田黄石をコレクションに加えるには、少なくとも5万円以上を払って落札する覚悟が必要になるだろうと思っています。

しかし、多くの入札者が集中し、入札額が吊り上がっていくからといって、それが本物の田黄石であるという保証はありません。中には出品者と共謀して入札を繰り返し金額を上げていくと思しき輩も散見します。結果として、高確率で偽物をつかまされる田黄石なら、損をする投下金額は少ないに越したことは無い、という貧乏根性が優っているのです。

そして、先日目を付けた印材19本の出品物であります。一目で値打ちものの印材がずらりと揃っており、青い時代がかった絹箱に収められたものは、かなり目利きの収集家のコレクションであることは明らかでした。その写真は残念ながら掲載できませんが、田黄石に準じる色合いで薄意ありの自然石だけで7点が含まれているのです。純然たる田黄とは判じがたいのですが、数点は鹿目格・連江黄という、田黄石には劣後するものの、一級の印材であるのは確実です。

それ以外にも、封門青、楚石(そせき) 、美人紅、広東緑など粒ぞろいの素材ばかりなのです

加えて上記の田黄石ぽい印の一つには「缶翁」という側款があります。これはなんと中国清の時代を代表する書道家・篆刻家呉昌碩先生の雅号であります。これが本物ならば1万2万円の世界ではなく、美術館や博物館収蔵となってもおかしくありません。
で、最低落札価格が「20万円」
ニジュウマンエン!?であります。一本あたり1万円になりますが・・・・・。

呉昌碩さんの印がもし本物ならば、安い掘り出しものでありましょう。しかし、偽物であると考えた時、そして、純正の田黄石が含まれていないとすると、なかなかリスキーで、おいそれと飛びつくわけにはいきません。1万円で田黄は手に入らない、でも20万円出しても入手できるとは限らない、という恐怖に慄いているのです。案の定、皆さん考える事は同じらしく、入札期限前に誰も入札はありませんでした。そして同額で再出品されています。

冷静に考えると、19点の印は安いもので数千円、高いものは最低でも1,2万円程度と見えるので、今までのように田黄石の贋物・人造石をつかまされたのとは訳が違います。決して大損とはならず無駄にはならないはずです。一方で、もし10万円単位で本物の「田黄石」を買い求めるなら、1点買いで探すのが本筋でしょう。とてもとても悩ましいのであります。

こんな魅力的な出品はそうそうあるものではありません。一期一会の4文字がちらつきます。なにせ田黄石は、同じ重さの純金と交換されたという宝石並みの希少品であります。

これまでの人生の中で、十万円以上の「趣味・道楽」のジャンルの物を買うということは滅多にあるものではありません。高級時計やゴルフクラブにせよパソコンなどにせよ品質性能がはっきりした実用のものであります。自分の数か月分のお小遣いを投下するかどうか、その刻限が迫って10月10日の夜であります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする