ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

古典落語とフランス料理

2007-01-06 16:08:49 | Weblog
 先日、新聞を見ておりましたら、「ザ・ベリーベスト・オブ・落語」という、CD及びカセットの広告が目に飛び込んできました。
 見出しのインパクトもさることながら、大御所たちの錚々たる面子にも目を見張るものがありました。
その中に、「金原亭馬生」師匠の名前もあり、お題目を見ると「目黒のさんま」がランクインされておりました。

「目黒のさんま」、私の中では「まんじゅう怖い」、「時蕎麦」に並ぶ3大古典落語の1つで、自分の心の世界遺産には登録済みの一話であります。
因みに、「ザ・ベリーベスト・オブ・落語」の中では「柳家小さん」師匠のお題目に「まんじゅう怖い」が入っておりました。

 「目黒のさんま」を知らない方のために簡単にあらすじを言いますと、

 江戸のお殿様が、退屈凌ぎに町人の格好をして、お忍びで街中を散策している内に、道に迷ってしまい目黒近辺をうろついておりました。
お腹が空いてきた頃、秋刀魚を七輪で焼いている町人を見つけ

「何をやって居るのだ。」と聞きます。 すると町人は、

「秋刀魚焼いてんだよ。見りゃわかんだろ。」と言い返します。

お腹がへっているお殿様は「それを食べさせろ。」というと、

町人は、変なヤツだと思いながらも食べさせてあげるのでした。
すると、お殿様はそのうまさに感動し、さらに感謝をし、お城へ帰っていくのでした。
お城では、お殿様が居なくなって大騒ぎでしたが、戻って来た為一件落着に思えたのですが、
 お殿様が、「秋刀魚を食べたい。」ということでまた大騒ぎ。
なぜなら、お殿様は、鯛などの高級魚しか食べなかったので、どう調理していいか分からず、「秋刀魚など下品なものは・・・」と言って聞かせても、食べたいの一点張り。
そこで家臣は、秋刀魚を銚子から取り寄せ、3枚に卸し、小骨も抜き、臭みを取る為に一回蒸し上げ、再び焼きを入れるという手の込んだ事をして食べさせます。

「銚子から取り寄せた最高の秋刀魚でございます。」

という前口上の後に、一口食べたお殿様が、一言。

「やっぱり秋刀魚は目黒に限る。」

というオチがあるお話なのですが、この話に出てくる家臣達が苦労して作る秋刀魚の料理は、フランス料理に近いのではないか、と思った次第でした。

もともとフランス料理は、16世紀にイタリアのメディチ家からカトリーヌさんが嫁いでくる際に、自分のお抱えコックさんを引き連れて来た事から発展していった、と言われております。
つまり、オート・キュイジーヌ(宮廷料理)だった訳で、一般市民の食べ物とは
一線を画していてのではないでしょうか。

 フランス革命の後、お抱えコック達は仕事に困り、レストランを開いたそうですが、その前まで庶民の食べ物は、七輪で焼いた秋刀魚のような簡単なものだったのではないか、と想像されます。

どこの国も一緒なのではないでしょうか。

 しかし、「目黒のさんま」の手の込んだ秋刀魚料理は、やりかたを少し変えれば
十分フランス料理になり得ると思えるので、今年の秋にでもチャレンジしたいと思います。

 問題はネーミングかな。「Sanma de Meguro」じゃ、そのまんまだよな。
コメント
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