皆さん、PCは当然コンピュータ部門が扱うものと、何の疑いもなく、思いますよね?
ところが、ここ日本で一世を風靡した88,98シリーズを世に出したNEC(日本電気)のPCを製造したのは、コンピュータ部門ではなく、半導体部門であったのです。そう、半導体の販売のために、PCを製造していたのです。そのため、IBMとか、富士通のコンピュータとは設計思想がかなり異なっていました。例えば、安全にPCを停止させるためにPOFF命令が富士通にありましたが(MS-DOS版)NECにはありませんでした。またIBM、富士通は周辺機器の電源をどのタイミングで入れても、コンピュータ本体はそれを認識しますが、NECでは、初めに周辺機器の電源を入れておかないと、コンピュータ本体がそれら周辺機器を認識できなかったのです。例えば、NECだと最初からマウスをポートに接続しておかないと、後から接続しても、それと認識してくれなかったり、プリンターに関しても、全く同じことが起きました。
(現在ではもう改善されています。念のため。)
しかし、コンピュータのいわば、素人たちが、何とか半導体を売ろうとして考え出したPCだからこそ、コンピュータ部門の専門家でない発想が随所に見られました。例えば、テンキー(数字入力キー)はいまではほとんどのPCには初めから付いています。(ノートパソコンはテンキー別売りですが。)以前のコンピュータにテンキーは全く付属してはいませんでした。世界で最初にキーボードにテンキーを付けたのはNECのPC-8000シリーズです。当初NECの発売予定のPC(BS-COMPOだったかな?)にはテンキーが付属していなかった。それをある若者の提案で、急遽テンキーをキーボードに付ける事になったのです。(発売直前の提案であったが、わずか2ヶ月で間に合わせた。)
その若者の発案で「コンピュータに電卓と同じ配列のテンキー」が標準でキーボードに付いたのです。これなどはPCが若者中心の文化から生まれたものを示す格好の具体例です。ところで、みなさん、その若者は誰だか分かりますか?皆さんへの宿題としておきます。
皆さん、素人を馬鹿にしてはいけません。素人ほど怖くて恐ろしいものはいないのです。
i-pod,-phone,i-pad2を連発するアップル社。この会社は今でも若々しい会社であって、若者文化のリーダー的な会社です。なぜなのか、分かりますか。これはあくまでも私の推測ですが、社長に復帰したスティーブン・ジョブスがコンピュータのど素人だからなのではないかと思っています。あったらいいなこんな機械、こんなソフト、こんなシステム。この素人考えを社員に提示して、それを製品として実現させる才に長けているのが、ジョブスなのです。
実は、アップル社は2人の若者によって創業された企業なのです。2人のスティーブンと言って、現社長のスティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアック・の2人でアップル社を創業し、往年の名機(appleⅡ)の爆発的な成功によって、アップル社を発展させたのです。この2人のうち、コンピュータの専門家は、実はウォズニアックのほうだったのです。今ではジョブスのほうがそのカリス性によって有名です。お分かりですね、もう。ど素人の強みを遺憾なく発揮し続けているのがスティーブ・ジョブスなのです。
社長→会長(CEO)→退社→平の取締役(無給)→社長→CEOに復帰という離れ業を見せてくれた、スティーブ・ジョブス。ここまでドラスティックではないけれど、同じような目にあったソフトバンクの孫正義社長。孫さんのアップル社への肩入れは、お互いの経験の類似性に基づいているのかと思います。