飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

NHK追悼番組「プロフェッショナル 仕事の流儀・石岡瑛子」

2012-02-02 | Weblog

今週の月曜日にNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で先日がんで亡くなった世界的な衣装デザイナーの石岡瑛子さんを取り上げた回を追悼として再放送していました。あらためてその番組を見ると石岡さんが残した業績は我々日本人が誇れるすごいものだと認識させられたのでした。番組で紹介された実績をざっと見てもポール・シュレイダー監督の映画「MISHIMA」のセットデザインで1985年にカンヌ国際映画祭芸術貢献賞を受賞、ジャズの巨匠マイルス・デイビスのアルバム「TUTU」のジャケットのデザインで1987年に米グラミー賞、フランシス・コッポラ監督の映画「ドラキュラ」で1993年に米アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞。つい数年前の記憶に新しい2008年の北京五輪の開会式では、式全体となる50種、2万着の衣装デザインを担当と輝くばかり。凄すぎます。

 

番組ではケタ外れの予算のブロードウェイ・ミュージカル「スパイダーマン」の衣装を担当した石岡さんを密着し、その<仕事の流儀>を紹介していました。当時の年齢は71歳、失礼なのですがこんな若々しく活動的でクリエイティブなおばあちゃんはどこを見ても見当たりません。それが2年後に他界されてしまうとは人の命とはわからないものです。映像は石岡さんのニューヨークのアトリエを映すのですが、全面的に白井部屋で過去の作品は飾ることなく収納、アカデミー賞のオスカーでさえしまわれていました。一つの仕事が終わるとゼロにしたいということらしい、71歳にしてその前向きな精神には驚かされました。

 

その石岡さんが仕事をするにあたって心の中でとなえる言葉は

 

①Original誰にもまねができない

②Revolutionary革命的

③Timeless時代を超える

 

この言葉に象徴されているように常に高みを目指す、妥協しない精神が彼女を世界的なクリエイターとしたのかもしれません。おもしろいのは石岡さんのこだわりでデザインをする際に使う色えんぴつは長年同じものを使用しているということ。デザインにおける色えんぴつは、道具であり野球選手におけるバットでありグローブのようなもの。以前イチローは自分のバットを誰にもさわらせないとテレビで見たことがあります。超一流は道具にもこだわりがあります。

 

石岡さんの休日は散歩、特にアメリカ自然史博物館によく行くそうで、動物を見ているとイマジネーションが広がる、脳の引き金を引くのだと言ってました。超一流は一見関係ない現象でも自分の養分に取り入れていくということなんでしょう。見習いたいです。石岡さんは日本でのデザイナーとして得た成功を捨てアメリカに渡ったとき、映画館で1本の映画をみたときに。黒沢明監督の「七人の侍」、観客は見終わった後、黒沢の映画を観客が熱く語っているのを目撃した石岡さんは圧倒的な本物を作れば時代や国境を越えて評価される姿をそこで感じとったそうです。妥協を許さない姿勢、簡単ですがとても難しいことと思います。

 

この徹底した姿勢は<1ミリが世界を変える>というスタイルにも見ることができます。石岡さんは、1ミリにこだわってきたそうで、その1ミリによってパフォーマーがしっくりきて役を大いに活かすことができれば演技も変わってくるのだと。パフォーマーの演技がよくなればパフォーマンス全体もよくなってくる。それが作品の評価にも結果として反映される。この凄まじいプロ魂、確かにそうなのかもしれません。個々のプレイヤーが最高のプレイを実現し、チームワークの連携にも反映されればそれは常勝の強い集団ができあがるからです。

 

ニューヨークに渡り30年、誰もが羨む成功をおさめたが、誰にもまねができないデザイン、革命的なデザイン、時代を超えるデザイン、さらなる高みを目指すには<自分のすべてを燃やし尽くす>しかないという石岡さん。番組の映像には71歳にはとても思えないエネルギッシュな一人が映っていました。「ずっといつまでも無我夢中で目隠しした馬が走るように走っているようなものですよ。寝ていたいと思う人には物好きな生き方だと思うけれどもまだ途中だからね。旅のね。」誰にもできない大きな旅をした石岡さん、今は安らかにお眠りください。合掌。

 

 

Eiko on Stage
Eiko Ishioka
Callaway

 

 

石岡瑛子 ggg Books 68(スリージーブックス 世界のグラフィックデザインシリーズ68)
石岡 瑛子
ギンザグラフィックギャラリー

 

 

私 デザイン
石岡 瑛子
講談社

 

 

 

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