■製作年:2003年
■監督:キム・ギドク
■出演:オ・ヨンス、キム・ジョンホ、ソ・ジェギョン、他
キム・ギドグ監督の「春夏秋冬そして春」を見ました。信じられないような美しい自然を背景に静かに人間ドラマが展開されます。もっと言えば、人は生きているだけで劇的なのだと感じさせられる映画です。この映画はカメラが湖に浮かぶ不思議な庵(寺)とその周辺の山々の美しい自然から基本的に出ることはなく、ただその映像だけを見ていると一体いつの時代の話なのかわからないと思うのですが、そこを訪れる訪問者から、それは現代の話なのだとさとるのです。それにしても東洋的世界というか東洋的時間というか、悠々たる時間が自然とともに流れそれを映像としてみせたキム・ギドク監督は見事としか言いようがありません。この自然の中でひっそり暮らす僧というのは、仏教的世界というよりは、まさしく水墨画の神仙思想の世界であり、自然と一体化するアミニズムの思想に近いのではないかと思いました。その庵にある仏像は一体化のための一つの手段にしかすぎない。つまり、それ自体に御利益があるのではなくて、ひとつのトリガーとして仏像は機能しているように見えたのでした。
夏の項で見せる青年修行僧と少女の恋。彼にとっては子供のころから人とほとんど接することなく生きてきたわけだし、人間関係において集団の中で揉まれ育成させてきたわけではありません。さらに体は本人の人間的な成長に反して、大人になっているため目の前に同世代の女性が現れれば当然気になるし、押さえられない性的衝動も湧き上がってくるのは、まったく健全なことであります。青年修行僧は目の前の女性に夢中になってしまい、やがて四六時中一緒にいたいという気持ちは押さえようもなく、先に庵を出た女性を追っかけて出ていってしまいます。やっぱり人は人としての通るべき道、経験を経ないとなかなか<教え>の境地にたどり着くことは困難なのだと思わされるエピソードです。なぜならこの純朴な青年は、数年後、裏切ったとして追っかけた女性を殺害してこの庵に戻ってくるのですから。つまり彼は理想的空間にいわば純粋培養されて育ってしまい、ある意味で感情のコントロールが効かない人間になってしまったとも見ることができるのです。
いずれにせよ、時代は中島みゆきの歌ではありませんが、回り回り繰り返す、哲学的な命題さえ抱いたのがこの映画と言えそうです。韓国映画を見ると毎度のように思ってしまうこと、日本ではここまでシンプルかつ説得力のある映画をつくれるのだろうか?嗚呼・・・。
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キム・ギドク,オ・ヨンス,キム・ジョンホ,キム・ヨンミン | |
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