■製作年:2004年
■監督:キム・ギドク
■出演:クァク・チミン、ソ・ミンジョン、イ・オル、他
キム・ギドク監督の「サマリア」を見ました。この映画は を受賞している作品で、ギドク監督はその力を如何なく見せていると思いました。題材は女子高生の援助交際(=売春)を扱ったもので(韓国でもそうしたことがあるんですね)、単なるその実態を暴くといったレポート的な薄っぺらなものに仕上がっていません。寧ろそうした極端な状況から浮き上がってくる人間のありよう、微妙な心理といったものを独特の感性で描いており、特に後半になるとそれがだんだんと強くなってきて、最後には何とも言えぬ不思議な感情がジワッと湧き上がってきます。
主人公は3人で、お互い連絡先もわからない2人の女子高生の親友と父親1人。中でも女子高生2人は親友なのに連絡先もわからず、普通では理解できないような行動を見せ、それが揺れる思春期からなのかよと想像してもまだわからない、う~ん、なんでそうなんだろうと考えさせられてしまう変な行動を見せるのです。が、逆に父親の行動が一転わかりすぎるほどダイレクトであり、最後に見せるそ親子のの関係性に得も言えぬような感動?(どういう言葉を使えばいいかわかりません)、静かな心のざわめきを起こさせるのでした。この不思議な構成と独特な映像タッチがまるで前衛的な映像詩人のようでもあり、見る側に判断を委ねていく作風はキム・ギドク監督の特徴なんだろうなと彼を作品を3本見て思ったのでした。
天使のような笑顔を見せながら自分の体を売る女子高生、彼女は売春の現場に警察に踏み込まれると下着姿のままホテルの窓から飛び降りてしまい死んでしまいます。この命をあまりにも軽々しく粗末にする感性も不思議なんですが…。その女の子に群がる男は不潔と思いながらもお金と顧客の管理をするもう人の処女の女子高生。その対比。彼女たちはヨーロッパ旅行をしようと売春と顧客&金銭管理を担当しているのですが、お互い実家の連絡先もわからない始末なのです。ですから窓から飛び降りた女の子が危篤状態にあるときに、親の連絡先がわからず、売春の客のところへ助けを求めてしまうのです。ですから彼女らは不思議な絆で結ばれた奇妙な関係性を持っているとなるのです。親友が死に泣き崩れた女の子は、罪の購いとして死んだ女の子の客に会い逆に自らの体を差し出し、本来貰うはずのお金を逆に返していくというわけのわからなさ。これを不思議な行動と言わずして何と言えばいいのか?身も知らぬ男に抱かれその女の子はまるで浄化を求めているようでした。その彼女が男といる現場を見てしまう父親の激情はいかほどだったろう。抑える気持ちを抑えられない父親はついに娘を抱いた男を撲殺してしまいます。そして、親子2人の小旅行に出かけ親子の彼等しかわからない至福の時間を回復していく…。
父親の優しさをある種残酷で突き放した方法で見せたラストシーンは非常に味わい深いものでキム・ギドク監督が一級の映像作家であることを思い知らされたのでした。
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