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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

「水木しげるの遠野物語」(原作・柳田国男/漫画・水木しげる)を読む

2012-05-11 | Weblog

水木しげるが、柳田国男の「遠野物語」をもとに漫画を描いているものを読みました。「遠野物語」は当地出身の佐々木喜善の訛りのある話を柳田国男が聞き、それを文語体に書きなおしたものではあるのですが、書かれたのが明治のことなので、本で読んでも難しい部分があります。それを水木しげるが漫画にしたことで、よりわかりやすくなっているように思いました。「遠野物語」は座敷わらしや河童、天狗に山男など、いわゆる魑魅魍魎、妖怪の類が登場するので、水木しげるの真骨頂のジャンルです。あの独特なタッチがまさに合っているという感じです。

 

「遠野物語」の原文を読んでいる時にも思ったのですが、それはエピソードの羅列といったふうで、そこには大きな物語、ストーリーというものはないように感じました。どこそこの誰其が山で見たことのない女に出会ったとか、そうした割と単純な話が多い。水木しげるの漫画を読んでいてもそれはそうで、水木の場合はそれをもっと簡略化させて描いているので、意外とあっさりしている印象なのです。不可思議な話でもオドロオドロシイという感じではありません。「遠野物語」を読むと、よく怪談などに見られる情念の絡み合いによるオドロオドロシイ展開は、人が後から脚色したもので、人が自然の中で感じるスーパーネイチャーな現象はもっとシンプルなのだと思うのでした。スーパーネイチャーは、人の日常の営みの中に溶け込んでいるという感じです。

 

基本的に水木しげるの絵は、そこにエロティシズムを感じるというものではなく、どこか別の世界を描いたような精神的な暗部を描いたような、あるいは浮世絵のタッチの流れにそれを足したような絵で、妖気が絵に流れているような感じに思えるのですが、オシラサマを描いたところは強烈なエロティシズムを感じました。この水木しげるの本の読み物の部分によると、元来、遠野では人と馬が同じ一つ屋根の下で生活し、厠(トイレ)と浴場は外にあったというスタイルであったそうで、馬が生活の中で重きをおかれていたそうです。オシラサマはの由来として「遠野物語」は、馬と家の娘が性的な交わりをしたことによって父親が激怒し、馬の首を切ってしまう。そうすると馬の首と娘が天空へと飛んでいったという話が信仰のもとにあるといいます。その話を描いた水木は、四つん這いになった女の絵を描き、馬との性的な交わりを想起させるようにしたのでした。水木の絵は無意識の暗部(妖怪は無意識の暗部ではないのか)を描いたようなタッチなので、同じく馬はそこでは男性の性的な象徴と見ることができないでしょうか。私はそこに動物的な欲情としてのエロティシズムを感じてしまうのでした。

 

まあ、そんな変なところに反応してしまう私の感想はともあれ、この漫画により「遠野物語」はより身近に感じることができるんだと思います。

水木しげるの遠野物語 (ビッグコミックススペシャル)
水木 しげる
小学館
水木しげるの遠野物語 発刊100周年オフィシャルキャラクター かたるくん (塗装済み完成品)
宇超天
宇超天
遠野物語 (集英社文庫)
柳田 国男
集英社

 

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