飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

僕は知らない寺山修司NO.114⇒市街劇「人力飛行機ソロモン」(演劇公演戯曲)

2008-12-10 | 寺山修司
松山で見た寺山修司がかつて仕掛けた市街劇、時代遅れ?の「人力飛行機ソロモン」。その印象は記事に書いたとおりです。その市街劇のボクを含む観客は松山市民会館へと集約され、そこの舞台上でもさまざまなパフォーマンスが繰り広げられました。そこでとても寺山的と言っては語弊があるかもしれませんが、そんな台詞に出会いました。寺山の言葉は、まずカッコイイし挑発的なんだけどどこか人間存在の宿命的に纏わりつく孤独さを痛切に感じさせ、その中での叫びは問答無用に琴線に触れてくるものがあるのです。それにJ・A・シーザーの呪術的音楽があまりにもマッチする。それがボクが観ることができなかった天井桟敷の魅力のひとつであるような気がします。松山から帰宅後、本棚にある寺山修司の戯曲集を探してみるとその台詞がありました。


松山市で上演された「人力飛行機ソロモン」

“ぼくにとっての日本は、一枚の日の丸の旗であった。風にひるがえる日の丸の旗を仰ぎながらぼくは思ったものだ。なぜ、国家には旗がありながら、ぼ自身には旗がないのだろうか、と。国家には「君が代」がありながら。ぼく自身には主題歌がないのだろうか、と。夏に死にそこねたセミが、この飛行機の翼弦にとまって鳴いていたが、思えばセミも又ひろげた翅を旗としてその鳴き声を歌とし、国家と釣合うほどの象徴をもっていた。月光仮面も自分の歌をもっていた。赤銅鈴之助も自分の歌をもっていた。だがぼくにはオンボロの旗もたった四少節の歌もなかったのだ。なるほど国家主権はもはや妄想となってしまった。そして、ぼくらは政治国家を単なる管理機関としてしか見なくなり、自己確証として、死滅した国家にとってかわるものを自らのうちに求めようとした。「ひとが誰でも、じぶんの作ったものの中にしか住むことができない」とするならば、自らをして国家たらしむるほかはないだろう。つまりもっと規模の小さな共同体は、ぼくにとってはぼく自身の存在であり、ぼくを構成する肉体と支配、同一化と分極、必要とされる管理と支配、それらこそまさに日本問題ではなかったのか、と。ぼくはぼく自身にとっての国家であり、そのことはあなたの、あなたの、あなたの、あなたの、あなたの、百万人の問題でもある。ヘーゲルは国家を理性の現実態であると言い、人倫の担い手が国家であるといったが、いまやぼくにとってぼくの論理を現実化してゆくのはこの眼であり、腕であり、そしてこの喉からほとしばしり出る声の機関車である。血はぼくの肉体、ぼくの国家を走り抜ける鉄道であり、そのすべての始発駅は心臓である。ぼくはぼくの心臓駅のプラットフォームから、ぼく自身に向かって日本論をぶちまけよう。事物も人間も、あらゆる世界の現象も、思い出せば日々の「命令」によって創造されたのであった。命令は四散した事物を回収し、一家を集合せしめ、眼には光を、群集には国家を創造させる。だが一体、誰がその命令をおくり出したのか?誰がエイハブ船長に鯨狩りをつづけよと命じ、誰がジンギスカンからトロッキーにいたる人びとに絞刑吏たれと命じ、誰が平原に雨を降らせよと命じ、誰が沓掛時次郎に旅立てえお命じ、カラスにとべと命じ、サビンコフに爆弾を投げよと命じたのか?言葉は忽ちぼくの肉体を集合体として扱い、国家を幻想した。見よ。ぼくはぼく自身の国家である。ぼくはぼく自身の国家である。ぼくはぼく自身の国家である。―そしてぼく自身の歴史は未だに記述されたことはなかった。”※“”部分「寺山修司の戯曲7/人力飛行機ソロモン」(思潮社)より引用

昭和精吾による寺山修司の国家論。独特の節回しが最高だ。(今はなきジャンジャンにおける公演)



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寺山修司の戯曲 7 (7)
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