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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(監督:若松孝二)

2012-07-20 | Weblog

■製作年:2007年
■監督:若松孝二
■出演:坂井真紀、井浦新、並木愛枝、地曵豪、大西信満、菟田高城、タモト清嵐、他

総括しろ!自己批判しろ!自己を共産主義化しろ!…まるで砂場の棒倒しのように回りの砂を削ぎとっていく破滅へと至る道。逃げ場のない山の中は極限状態をいやがおうでもうむ。自らの追い詰められていく不安を覆い隠すために、さらに自己批判はどんどんエスカレートしてゆくしかない。やがて、砂場の棒は立っていられなくなる。そしてその総括、自己批判の嵐はやがてリンチ、死刑と称した殺人へと至らしめていく自己矛盾の暴力のサイクル。その過程は、絶対的立場にある者が先導してしまった歪んだイデオロギー解釈に支配された一種の集団ヒステリー状態といえるのかもしれません。恐怖政治がはびこっている様子は小さな世界でもありながら、実はいろいろなメタファーとしても見ることができるように思いました。

 

事件を起こした彼らは、最初はおそらく純粋な気持ちで世の中をよくしたいと思ったにちがいありません。しかし、多様性こそが世界であるならば、一つの思想に支配されそれを現実の中で貫徹しようとするならば、どうしてもどこかに無理が生じてしまう。それを恐怖、暴力で押さえ込もうとするし、恐怖、暴力でアピールしようとする。それは人間としてのもしかしたら普遍的な行為として見ることができるのかもしれません。集団をある一方向に向けた強力な行動を指揮しようとするならば、集団構成員の価値観の統一をはかり、それを操る権力機関が必要となってきます。戦士と名をつけることによってあるミッションを遂行するために集団を鼓舞する。それは会社社会においても企業戦士などと名付けられ、ここでは利潤追求のためのミッションを遂行するために世界中を夜となく朝となく駆け巡るわけだ。そしてそれもミッション遂行のための戦いなのだということなのだろう。ここでミッション遂行のためには指導者の資質が問われることになる。リーダーの条件とは?しかし、往々にしてそのリーダーは他者からの批判の視線に耐えられず、また、それで得た既得権益をさらに強化しようとする。強化するためには暴力による恐怖がもっとも早く効果的であるのだ。しかしそれによる権力は歴史が証明しているように、錯覚であり、矛盾であり、独占であるのだ。連合赤軍の森も永田も、殺人さえも大儀のためという恐ろしい考え方、自己を省みない過激という名の超保守、見えていない自分を正当化する落とし穴にはまってしまったのではないのか?と思うのでした。

 

映画では連合赤軍の兵士が人質に語る「我々は共産主義者です。我々の目的は資本家の利益のために民衆を抑圧する政府権力の打倒にあります。つまり、戦争や不平等をこの世の中からなくす革命のために戦っているのです。」と。ああ、はたしてその理想はどうだったのか?粛清、リンチ、処刑、戦後日本史において稀有な結果をうんだ大事件。さらに映画では、山荘にたてこもった若い男に「俺達みんな勇気がなかったんだよ!俺も!あんたも!あんたも!勇気がなかったんだ!!」と粛清、リンチ、処刑を止めるすべがなかったその現場に居合わせた彼らに泣きながら語らしめたのでした。衝撃的で目が離せない、すごい映画でした。

 

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]
坂井真紀,ARATA,伴杏里,地曵豪,並木愛枝
CCRE
若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
「実録・連合赤軍」編集委員会+掛川正幸
朝日新聞社

 

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