飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

偏在する乱歩・A‐I→乱歩が愛した村山槐多の「二少年図」

2010-01-26 | 江戸川乱歩
今週の日曜日に、渋谷の松濤美術館で「村山槐多」展を見たのですが、そこに展示されていた作品に「二少年図」というものがあります。この作品を見るのは今回が初めてではありません。昨年、横浜の神奈川近代文学館で開催された「大乱歩」展でも見たことがあります。その絵こそは、あの江戸川乱歩が生涯書斎に飾って愛した作品であるのです。それを眺めていると江戸川乱歩にとって、あの少年探偵団の小林少年のイメージの源泉であったように思えてならないのです。その辺りの真偽はわかりませんけれども。兎に角、その美少年っぷりは、どうしても小林少年に見えてしまうのです。そして男色にも通じる秘密の匂いも感じてしまうのですが・・・。以下、その江戸川乱歩が村山槐多の「二少年図」について言及した文章を引用しました。

“私が生まれて初めて、洋室めいた書斎を持った時、そこの裸の壁を見て、たちまちに思い浮かんだのは、村山槐多の絵であった。同じ絵を懸けるなら、ほかのどんな優れた作家よりも、村山槐多こそ好ましかった。・・・・・・それは、二十号ほどの大きさの、藍色の勝った濃厚な感じの水彩人物画で、一九一四年槐多十九歳の、いわば初期の試作に類するものであったが、絵の巧拙はともあれ、その特殊な画題と、画面ににじみ出している槐多の人間と思想とが、大変私を喜ばせた。・・・・・・

この絵を部屋に懸けて、じっと眺めているうちに、私は、そこに描かれたものは、ただ無意味な二少年像ではなくて、その裏に、槐多の一生を支配した、ある美しいギリシャ人の愛が、深くも秘められていることをだんだんと悟るようになった。右側にいる、丸々と丈夫そうな、非常に血色のよい、勝気で腕白らしい少年には、どこかしら槐多自身の面影がある。石井鶴三氏がとった彼のデス・マスクに似ている。イヤ、それよりも、彼の中学時代の写真とそっくりだ。

それに相対して、ウットリと佇んでいる、しなやかに青白い少年は、おそらく槐多のジョコンダであろう。彼は、生前愛着を感じたいかなる男性をも、彼の夢の恋人、レオナルドのジョコンダに比べないではいられなかった。その憧れのモナ・リザが画面の青白い少年の頬にも微笑している。槐多には、中学時代の同性の恋人をそれとなく描いた「光の王子」という傑作があって、その絵は母校京都一中に保存されていると聞くが、それとは別に、その「二少年図」には、もっと普遍的な、抽象的な彼の夢が描かれている点で、私にはこよなきものに思われる。”

※“”部分、「村山槐多」(学研M文庫)から引用

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