さても、2020年に入ってからの「新型コロナウイルス」の世界的流行が進行中であり、アメリカでは、これに関連する形で、オバマ政権時代に拡充された医療保険制度の今後のあり方が、きたる11月の大統領選挙の重要な争点と化しつつあるという。
2009年1月には、アメリカにおいて、民主党のオバマ大統領が就任する。この政権が取り組んだのが、後に「オバマケア」と通称される国民保険制度の創設であった。
「ここにきて、政権および民主党は、まず上院で12月に可決した法案を下院で通過させた上で、上院案の内容に不満を持つ民主党議員を納得させるたみに、予算調整法案というかたちでの別個の修正案を上下院で可決させる、という戦略をとった」(久保文明他「オバマ政治を採点する」日本評論社、2010)という。
2012年6月には、連邦最高裁判所が合憲判断を出し、そのことで、2014年1月には、施行関係が整い、本格実施となる。
そこで、こうしてできたオバマケアの柱から紐解こう。その1としては、それが民間会社の提供する保険プログラムであれ、公的保険プログラムであり、国民の医療保険加入を義務化する。
ただし、この時点で、一定の条件を満たす健康保険に加入していない人には、ペナルティーが科される。そうはいっても、歯科保険、眼科保険、介護保険、サプリメント保険、海外旅行者保険、移民用保険、短期用医療保険、生命保険などはオバマケアの対象外にて、これへの加入義務は働かない。
また、低所得者などの一定の条件を満たす人に対しては、かかる保険加入義務が免除される道が通じている。それに、違反には罰金とあるものの、全てについてそうあらねばならぬ、ということではなかった。
その2は、保険料の制限など民間保険会社への規制を敷く。例えば、既往症を理由に加入希望を拒んだり、その分高額の保険料を徴収することは、できない。それというのも、それらの会社は、儲けが目的であるからして、「リスクによる選別」や「患者の医療記録の監視などを通じ、保険金を負担しない方法を探ること」を行いかねない。
(前掲書)ことになる。
その4としては、主に低所得者層を対象に、当該保険に入りたくても経済的にできない人のために、税額控除という形での「補助金」の提供を盛り込む。
こうして船出した制度なのだが、2014年の後半からは、逆風も出てくる。2014年11月に実施された中間選挙では、民主党が上院、下院ともに過半数を失う。
それによると、無保険者が来年1700万人増え、2026年までに3200万人増加するとの見通し、これだと保険料は来年25%上昇し、2026年には倍増する。一方で、連邦政府の赤字は4730億ドル(約52兆9000億円)減少するという。
共和党は、この時点で2回、新たな医療保険制度案の採決に失敗しているが、引き続き、2010年に成立したオバマケアをまず廃止した後、2年かけて代替案をまとめることを提案している。
ところが、2017年7月には、与党内でマケイン上院議員らが造反し法案は否決される。それでも、トランプ政権は2017年末に、保険の加入義務化の廃止にこぎ着ける。こちらは、同年12月に、同保険への加入義務廃止を盛り込んだ税制改革法が成立したことによる。
(続く)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆