♦️298『自然と人間の歴史・世界篇』熱と仕事(ジュールなど)

2018-03-10 22:57:42 | Weblog

298『自然と人間の歴史・世界篇』熱と仕事(ジュールなど)


 ジェームズ・プレスコット・ジュール(1818~1889)は、イギリスの物理学者といわれるものの、生涯、大学などの研究職に就くことなく、家業の醸造業を営むかたわら研究を行った。当時はまだ、熱がエネルギーの一種であるとは知られていなかった。そんな時、彼は、なされた力学的仕事と発生する熱のあいだには一定の量的関係があり、したがって仕事と熱は一定の比で互いに転換するのではないか考えた。彼は、独創的な実験を行う。
 その装置においては、羽根車に回転軸が繋がり、その回転軸に左右に滑車が繋がり滑車にはおもりが載せられるようになっている。重りがゆっくり降下する。すると、滑車と回転軸と羽根車が回り、断熱された(熱が外に逃げない)水熱量計の中の水を撹拌する、つまり羽根車を水中で回転させる。その時の摩擦熱によって水温が上がる仕掛けだ。そこで、その上昇温度と重りが動いた距離を測定する。
 その結果は、重り1個の質量を M 、降下した距離をhとすると、重力が重りに対して行う仕事Wは、2個合計でW=2×M×hとなるというもの。当時は、熱量の単位としてカロリ(cal)ーを用いていた。すなわち、1グラムの水を1度(℃)だけ上昇させるのに必要な熱量を1カロリーという。水の質量をM、上昇した温度を Δ(デルタ)tとすると、水の得た熱量Qは、Q=M(グラム)×Δtで求まる。
 彼は、実験を繰り返し、仕事Wと熱量Qの間に比例関係が成り立つのを突き止める。その比例定数が4.19である。彼はこの比を「熱の力学的値」と呼んだ。これは、仕事とこれに等しいエネルギーの熱量との比、つまり2つのエネルギー単位のカロリーからの換算率であって、後に「熱の仕事当量」と呼ばれる。この関係を式でいうなら、W=4.19J/calとおくと、W(仕事)=J×Q(熱量)。これで、熱が仕事と等価であることが明らかとなった。
 ところで、今日ジュールの法則といわれるのは、電流によって生み出される熱についての法則にして、電流から発生する熱量は電流の大きさの二乗に比例するというものであり、Qを1秒あたりの熱量、Rを抵抗、Iを電流とすると、Q=R×I×I=R×Iの2乗となるのをいう。

(続く)

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