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【cinema】『ブリュレ』(試写会)

2008-10-08 23:07:50 | cinema
'08.10.05 『ブリュレ』(試写会)@キネアティック

シネトレさんにて試写会当選。全く予備知識はなかったけれど、あらすじに惹かれたので応募した。

「東北で暮らす日名子のもとに13年間離れて暮らしていた双子の水那子が祖母の遺骨を抱いてやって来る。2人は両親を火事で亡くし祖母と叔父別々に引き取られた。日名子は心を閉ざし、孤独から放火を繰り返してしまう。水那子は末期の脳腫瘍だった。2人は悲しい旅に出る…」という話。これは結構好きだった。正直に言うとこの映画から得るものはあまりない。少女達の年齢はとうに越えているし(笑)

何か伝えたいことはあるのだろうとは思うけれど、特にコレと具体的になるものはない。ロードムービーと言えばそうだけど、そのわり人と関わらない。唯一「みちのくキック」の足を骨折中のキックボクサーに会うくらい。彼女達が願うのは残された時間を一緒にいたいという事だけ。別に旅を通して成長する話しではない。悩んでいる事の少しは打ち明けるけど、それもきっと全てじゃない。だからみちのくキックの池澤が唐突に「彼女達を見ていたら、もう一度チャレンジしたくなった」と、2人を日名子の同級生、山元に託して去ってしまうのはちょっと変な気がする。絶望している彼女達の姿から前向きな気持ちになるのは難しくないかな。まぁ、彼女達より恵まれてる自分が頑張らないのは不甲斐ないという、やる気になり方もあるとは思うけれど・・・。それにしても叔父さんを除けば、主要な役の中で唯一大人である池澤が、男子とはいえ高校生に2人を託して去ってしまうのはどうかと思うし、そもそも山元くんは免許を持っているのか?などツッコミどころは結構ある(笑) だけど、それでもこの映画が好きだと思った理由は、その現実味のなさと"孤独"を見事に映し出した美しい映像。

少女達には辛い過去があるようで、それはほんの少しのセリフで語られるけれど、両親の死はそれが関係している事も分かる。水那子を引き取った祖母の事はほとんど語られないけれど、叔父を嫌っていたというセリフから、祖母の気難しい感じや孤独が感じられるし、洋菓子店を営みながら味覚障害である叔父もまた、孤独な人物のようである。山元しかアドレス登録のない日名子も、1人死と向き合う水那子も孤独。この映画には孤独な人しか出てこない。重くて暗いテーマなのに映像の美しさで、とても現実感のない、何かアニメとかそういう作り物を見ている感覚。うまく言えないけど・・・。

それは少女達の美しさのせいでもある。主演の2人、中村梨香と美香は双子の姉妹。正直、セリフなどには拙さがあるけれど、透明感のある感じや、少女期特有のエロティックさなどを感じさせる。2人でいたいということは、実は"2人だけていたい"という、他を寄せつけない無意識の身勝手さでもある。その少女独特の感じも良かったと思う。そして2人の過去にも、叔父さんとの暮らしにも少し性的なものを感じるのは考えすぎかな・・・。そのくらい2人がいい意味でエロティック。これは少女期特有のエロさなのでいやらしくはない。この時期の姿を残せたのは2人にとっても良かったんじゃないかと思う。余計なお世話だけど(笑)

ただ、全体的に美しい"映像"を見たという印象。少女達の物語も、彼女達の悩みも苦しみも2人が抱える問題も全て"映像"のためのものという感じ。上手く言えないけど・・・。少女期特有の苛立ちや葛藤なんかも伝わったし、彼女達だけでなく叔父さんの孤独も感じられた。辛い過去、引き離された2人、放火、不治の病、叔父さんの障害、ケガをしたボクサー、これでもかというくらい不幸を盛り込んでいるけれど、韓国映画のようなクドさはない。まぁ、韓国映画はあれはあれでありだと思うけれど。これだけ盛り込んでいるのにサッパリした印象なのは、正直、散漫になった事もあるとは思うけれど、リアリティーのなさなんだと思う。それは少女達の危うい感じと、寒々としてどこか突き放したような美しい映像によるものなんだと思うけれど、それがとても良かった。

この感じって監督が狙ったというか目指したところなのか、それとも図らずもこうなって私が勝手にそこを好きになっただけなのか・・・。なんとなく後者の気がしないでもない。チラシによると監督は"心の叫び"を感じて欲しいようなので・・・。彼女達の気持ちは伝わってきた。だけどそれは彼女達の中でもハッキリ形になっていない。それをそのまま投げつけられた印象。そういう所も狙いなのであれば成功しているし、そういう感覚的な映画もいいと思うけれど、本当のところは分からない。重複するけれど、少女達の物語というよりも、それを含めた"映像"と思って見ると、とても良かったように思う。少女達の物語はそのまま"物語"としては心に入って来なかった。"映像"のために演じている印象。バーチャルというか・・・。その感じが好きだった。

映像が美しい。2人が辿り着いた海の寒々しい画が良かった。スタッフやキャスト達は機材と共に車で撮影しながら日本を縦断したのだそうで、その風景は美しいけれど、どこか日本じゃない印象。海外っぽいというのとも違って、やっぱり現実の世界じゃない感じ。見る人を選ぶとも思わないけど、合わない人はいるかもしれない。

終演後、林田監督の挨拶があった。だいぶ緊張していた印象(笑) ロケ地の中に市川市とあったけれど、どこのシーンだったのだろう? 質問コーナーもあったけれど、やっぱり聞けなかった



(C) 2008CINEVITAL

◆2008年10月25日(土)より、ユーロスペースにてレイトロードショー

『ブリュレ』Official site

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6 コメント

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Unknown (rose_chocolat)
2008-10-09 01:58:42
TB&コメントありがとうございました^^

描きたかったことが、どことなく消化不良だったのか、あるいは、「最初に双子ありき」になっちゃったのか? などと考えちゃいました。
プロモーションビデオ的な感覚ならよかったのでしょうが、映画として観るのなら、詰めの甘さはどうにも救えなかったかもしれないですね。
返信する
Unknown (はらやん)
2008-10-09 23:09:47
maru♪さん、こんばんは!

少女期特有の子供でもない大人でもない所在無さげな感じを狙いたかったのだろうなあとは感じました。
「心の叫び」も狙いはわかるけど、そこまで表現できていない感じがしました。
意図はわかるけれど、観ていてもどかしい感じといいましょうか。
もっとねちっこくてもよかったかな。

みちのくキックはちょっとどうかなーって感じしましたね。
なんのために出てきたんだろ。
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Unknown (maru♪)
2008-10-10 00:32:10
>rose_chocolat サマ

双子の姉妹の少女特有の擬似恋愛のような感じを描きたいのかなと、
見ている間は思ってたんです。
その感じは中村姉妹の個性と映像の美しさで伝わったのですが、
「心の叫び」と言われると・・・
もう少し具体的に叫んでくれると分かりやすかった気がします(笑)
分からなくはないのですが・・・
返信する
Unknown (maru♪)
2008-10-10 00:41:20
>はらやん サマ

勝手な想像なのですが、多分「心の叫び」をサラリとやりたかったんじゃないかと思います。
でも、サラリと見せるのって実はすごく計算が必要なんですよね。
ナチュラルメイクと同じです(笑)

もう少し伏線とか掘り下げがないと伝わらないですよね。
でも、確かに人に伝えるのって結構難しいですよねぇ{涙}
新人ちゃんの教育担当をして痛感しました(笑)

映像は良かったと思うので、これからも頑張って欲しいと思いました。
エラソウですが・・・
返信する
Unknown (咲太郎)
2008-11-20 00:19:36
こんばんは!
風景の美しさはホント格別でした。
少女特有のエロス、私も確かに感じました。
あの感じを映像に残せたのは良かったんじゃないでしょうか。
私はラストの長回しが好きでした。
返信する
Unknown (maru♪)
2008-11-21 00:33:05
>咲太郎 サマ

こんばんわ♪
コメントありがとうございました。

あの感じは少女期独特のものですよね。
寒々とした映像も好きでした。
でも、その感性に脚本が追いついていない印象でした。

監督が亡くなってしまったのは残念でした・・・
もう少し経験を積んでいい作品を撮って欲しかったです。
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