知らない携帯電話から電話がかかってきた。出ると「和尚さん元気かね」と
聞き覚えのある嗄れ声に老友Oさんだと分かった。彼は私より4~5才年長で
いつも「元気かね」が挨拶の最初である。
前回お会いしてまだいくらも日が経ってない早い誘いに私はおや!と思った。
「今日は携帯電話を買ったのであんたに連絡しておこうと思ってね」
「そう遂に買いましたか良かったね」と私。目が離せない細君と暮らしている
O氏に私は携帯電話が便利と頻りに勧めてきたのだ。
「久し振りに何時もの店に行くかね」と彼
「えツ 免許証あるの?」と私。
「そうだねえ、6月に切れてそのままだよ」と落ち着いたもの、
「では奥さんの通院の送迎とか買い物はどうしているの?」
「うん、ま、いろいろ有ってね、ん、まあ会ってから話すよ、迎えに来て欲しい
のだが」と結んだ。
今度は私の番
「・・・という訳で最近は酸素ボンベを曳いて暮らしてるよ」
と車で迎えに行けない訳をいうと
これがO氏の好奇心に火が着いたらしい。
彼は次々と質問を繰り出して時々、自分が奥さんの面倒を見ていることの苦労話を織り交ぜて
相づちを打ったり助言みたいなことも言った。
結局30分位の長電話になった。疲れた。
それにしてもO氏の用件はなんだったのか。また電話が掛かるような気がする。
お わ り