晴、22度、54%
香港から深圳に向かう電車が「九龍鉄道」と呼ばれていた頃、香港サイドの駅のキオスクには小袋のポテトチップスやえびせん、お水と一緒に「チキンパフ」が売られていました。小さな店でした。「チキンパフ」つまり「チキンパイ」とは呼ばずに「チキンパフ」という所はいかにもイギリスらしいと思いました。中国に返還されるずっと以前のこと、イギリスの統治下のことですから当たり前です。
三口程で食べられるサイズの「チキンパフ」は折りパイの生地にカレー味のチキンが入っていました。そのカレーの味が中華風でした。ほろほろと崩れるパイに中華の味がするカレーチキン、まるで香港そのもの、洋の東西が渾然と一体化していました。美味しいという代物ではありませんでしたが、時に懐かしく思い出します。「チキンパフ」の姿を近年見かけることが少なくなりました。
秋になると「パイ」を食べたくなります。残り物のパイ地で「チキンパフ」を焼きました。もちろん中のチキンはカレーで味付けしました。香港のキオスクで買った「チキンパフ」は一回り大きく癖のある香りでした。バターで作ったパイではなくラードだったのかもしれません。
残った切れ端のパイ地にドライイチジクを巻いて食後のおやつにしました。 空がうんと高くて暑いけれど秋風が吹いています。香港の秋は気候が安定してこんなふうだったなあと、「チキンパフ」を食べながら空を見上げました。