豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

ルイス・ナイザー「私の法廷生活」

2024年06月15日 | 本と雑誌
 
 ルイス・ナイザー/安部剛・河合伸一訳「私の法廷生活--弁護士の回想」(弘文堂、1964年)を読み始めたのは数週間前のこと。しかし第1章を読んだところでしばらく放置したままになっていたが、結局これ以上読み続けるのは断念することにした。

 第1章は名誉棄損事件、第2章は離婚事件を取りあげていて、テーマ自体に興味はあるのだが、残念ながら今のぼくにとってその内容は面白くなかった。臨場感というか、ダイナミックさがないのである。登場人物も知らない者が多い。自分が担当した裁判の訴訟記録か何かを読みかえしながら、書いているような印象を受けた。
 弁護側の証拠調べ手続に向けての証拠の収集、証人との打ち合わせなどの公判準備や、反対尋問の手法など、法廷技術に興味のある人なら参考になるだろうが、過去の裁判事件を興味本位で知りたいぼくにとっては期待外れだった。
 訳者は二人とも、アメリカ留学経験を持つ法律実務家だが、新刑事訴訟法を英米流に運用することを目ざして翻訳したのではないか。“Law and Tactics” なんてケースブック(全5巻だった)が出るくらい、英米では法廷技術をマスターすることが重要らしいから、本書のような有名弁護士による法廷の思い出話、自慢話も後輩弁護士たちに有用なのだろう。

 なぜか、この本の原書(といってもペーパーバック版)も持っていた(下の写真の左側)。
 Louis Nizer, “My Life in Court” (Pyramid Books, 1963)95¢ とある。東京泰文社のラベルが貼ってあった。懐かしい神保町の古書店である。今もあるのだろうか。もちろん読んでいない。その表紙の宣伝文句には「175万部を売り上げた」とある。

   

 ナイザーの本と一緒に、P. Packer et al. “The Massie Case--The Most Notorious Rape Case of the Century” (Bantam Books, 1966)というのも出てきた(上の右側)。同じく東京泰文社のラベルが貼ってあった。いずれもかなり汚れているが、1980年代まではアメリカ兵(?)が残していったような洋書がけっこう神田の古本屋にも並んでいた。
 “Massie Case” は1931年に(!)ハワイで起きた殺人事件である。海軍少尉の妻が、5人の原地人によって強姦されたと夫に訴えた。夫の少尉はそのうちの1人を拉致したうえで殺害したとして、妻の母親とともに起訴された。母親はセオドア・ローズヴェルトの親戚という社交界の名士であり、有名な弁護士クラレンス・ダロウ(C. Darrow)が2万5000ドルの報酬で弁護人となったこともあり、全米に一大センセーションを巻き起こした事件だったらしい。1963年にヒロイン(?)の Massie 夫人が薬物中毒で亡くなったのを機に執筆されたようだ。
 実際に強姦があったのかも争点となったようだが、なぜこのような事件をダロウが受任したのかも興味が湧く。表紙によれば、ダロウは被告らの弁護によって「ハワイの白人優越主義者たちの英雄になった」とある(ということは被告側が勝訴したのだろう)。著者は当時のハワイにおける白人優越主義をテーマにしているようで、「強姦と殺人と人種的偏見とが、楽園の島ハワイを暴力の噴火山に変えてしまった」という表紙の惹句に魅かれて4、50年前に買ったのだろうが、今となってはもう読む気力はない。
 これも永遠の未読書の1冊になるだろう。

 2024年6月15日 記
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