豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

ぼくの探偵小説遍歴・その2

2024年02月16日 | 本と雑誌
 
 ぼくの探偵小説遍歴、第2回はラジオやテレビ番組ではなく、いよいよ小説になる。

 ★岩波少年文庫
 中学生の頃のぼくは「岩波少年文庫」を読む「岩波少年文化人」だった。ボール紙の箱に入ったハードカバーの時代だった。箱の中央と表紙の中央にイラストが入っていて、本文の中にも何ページおきかにイラストのページがあった(下の写真)。
 岩波少年文庫の中では、ドラ・ド・ヨング(吉野源三郎訳!)「あらしの前」「あらしの後」が一番好きだった。オランダの片田舎を舞台に、オランダ人の少女と進駐してきたアメリカ兵との淡い恋が描かれていた。軽いタッチで描かれたペン画の挿し絵も好きだった。挿し絵と挿し絵の間を飛び石のように渡りながら文字を読む読書だった。文字だけの書籍は今でも苦手である。
 岩波少年文庫の探偵小説(というか冒険小説)では、エーリッヒ・ケストナー「エミールと探偵たち」(小松太郎訳のもの)、アストリット・リンドグレーン「カッレ君の冒険」、「名探偵カッレとスパイ団」(カッレ君シリーズにはもう1作あったような気がする)、セシル・D・ルイス「オタバリの少年探偵たち」などを読んだ。
        

 ※下の写真は、最近の岩波少年文庫版のケストナー「エミールと探偵たち」。2、30年前に息子に買ってやった本が残っていた。新訳では「エーミール」と表記してあるけれど、ぼくにとっては「エミール」である。「エデンの東」のラストシーンの「ティムシェル」(野崎孝・大橋健三郎訳)を「ティムショール」のほうがヘブライ語の発音としては正しいのだと今さら言われても困るのと同じである。
               

★少年少女推理小説全集(あかね書房)
 中学校の図書館に置いてあった。全10巻程度のハードカバーで、表紙扉の次のページにカラーのパラフィン紙が1枚挟んであった。
 ウィリアム・アイリッシュ「恐怖の黒いカーテン」では黒色のパラフィン紙だった。ガストン・ルルー「黄色い部屋の秘密」、A・A・ミルン「赤い館の秘密」などもこのシリーズで読んだと思う。
 ※ google で検索すると、このシリーズは「少年少女世界推理文学全集」(あかね書房)で、1963~4年に刊行されたというから、まさにぼくが中学2年から3年の記憶と符合している。このシリーズは全20巻で、ホームズ、ルパン、ポー、クイーン、クリスティから、チェスタートン、クロフツ、ヴァン・ダイン、チャンドラー、ガードナー、モーム(アシェンデン)!などまで入っていたらしい。「赤い家の秘密」と「黄色い部屋の謎」は合本で訳者は神宮輝夫、「恐怖の黒いカーテン」は福島正実訳だった。
 全10巻くらいと思っていたのは、ぼくの中学生時代にはまだ図書館には全巻そろっていなかったからだろう。現在は絶版で、ネット上では各巻3000円から3万8000円などというとんでもない値段がついている。「恐怖の黒いカーテン」は後に復刊された際に買った覚えがあるが、あかね書房版だったかどうか・・・。晶文社あたりだったかも。
 ※どうも「黒いカーテン」ではなく、「さらばニューヨーク」(晶文社、1976年)だったようだ。

 中学校の図書館には、別の出版社の児童推理小説シリーズもあった。
 エラリー・クイーンの「色=カラー」シリーズが並んでいて、「青いにしんの秘密」というのを読んだ。死者が遺した「青いにしん(herring=鰊)」というメッセージが実は綴りのミスで、「ニシン」ではなく何か別の物体が解決のカギだったという話だった。翻訳で読む日本の中学生に分かる訳がないだろう。ばかばかしくなって、それ以後エラリー・クイーンは一切読まないことにした。
 ちなみに、ぼくがその論旨に共感するところの多いオックスフォード大学の家族法、医事法の教授に “Herring” という名字の方がいる。

★「中学時代」(旺文社)や「中学コース」(学研)に毎号付録として付いてきた文庫本サイズ、50頁程度の本文はザラ紙の推理小説(抄訳版)も読んだ。
 パット・マガン「探偵を探せ」、同「被害者を探せ」、ジョン・バカン「三十九階段」などはこの手の付録本で読んだ記憶がある。
 イーデン・フィルポッツ「赤毛のレッドメーンズ」もこの手の本で読んだような気がする。後に新潮文庫版の「赤毛のレッドメイン家」(何と橋本福夫訳だった!)を見て、「レッドメーンズ」の「ズ」(s)が(レッドメイン)「家」の意味だということを知った。辞書によると「s」が「~の家」を意味するのは「おもに英国」だそうだ。アメリカにもケネディ一家のように、「~家」はありそうだが。

 ※冒頭の写真は、「探偵を探せ」「39階段」などの創元推理文庫版。残念ながら、旺文社や学研の学習雑誌の付録についた文庫本は手元に残っていない。以前、少年雑誌の付録(や明星・平凡の歌本)などが沢山置いてある神保町の矢口書店や古書会館のミキ書房で探したが、1冊も出会うことはできなかった。  (つづく)

 2024年2月16日 記

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