僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

ミリンダ…捕獲

2006年08月17日 | SF小説ハートマン
ターゲットが接近する。ミリンダは腰から麻酔液のたっぷりとついた吹き矢を取り出した。およそ10メートルのテリトリーに入ったその時がFOXの最後だ。
ゆっくりと腹式呼吸を繰り返す。ハンターの厳しい訓練の中で特にミリンダを可愛がりヨーガの奥義を授けてくれた老師を思い出す。

この仕事を片付けたら会いに行こう。もう何年も会っていない気がする。現役を退いてからサナトリウムにいると聞いているけど、私を覚えているかしら。

藪草をかき分けるかすかな葉音を立ててFOXが現れた。確か2匹だったはずだ。そのまましばらく待つ。すぐにもう1匹もテリトリーに入った。
ミリンダの腹式呼吸が一瞬止まり。高圧で無音の矢を飛ばした。
FOXは首筋に突き刺さった矢をうめきながら引き抜き、銃を乱射しながら倒れた。慌てた仲間が木陰に逃げ込むより一瞬早く第2の矢がのど元に深々と突き刺さった。

終わったわ。

すっかり弛緩した2匹を確認し、安堵したミリンダが木から飛び降りたその時、蜘蛛の巣状の捕獲ロープが襲ってきた。動物的なカンで地面に這い、絡め取られるのは何とか逃れたがバックパックが引っかかっている。
シュッと音がして矢が突き刺さる。左右にもがきながら足下のサバイバルナイフを引き抜いたミリンダは躊躇なくバックパックのショルダーを切り裂いた。

ちっもう一匹いたのか。

敵の位置は?と振り向いた時、ミリンダの首に何かぬるぬるとした物が巻き付き抗しきれない力で締め付けてきた。ナイフを突き立てるがゆるむ気配がない。のどの奥で何かが潰れる嫌な音が聞こえた。食いしばった口元に血がにじみやがて脱力感が襲ってきた。老師の顔が脳裏をよぎる。

ごめんなさい…何となくそんな言葉が思い浮かんだ。       つづく


コメント
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