ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

NFCの普及でおさいふケータイ(FeliCa)は生き残れるか

2011年02月12日 | モバイル

NFCをめぐる主導権争いが激しくなってきている。KDDIとソフトバンクが日韓でモバイルNFCの共同実証実験を開始しを発表したその日に、DoCoMoとKTとの相互利用の検討に合意したと発表。日本では「おさいふケータイ」の名称で普及しているFelicaサービスだが、このNFCの台頭でどのような影響を受けるのだろうか。

 KDDIとソフトバンクモバイルら、日韓でモバイルNFCの共同実証実験を開始 - CNET Japan
 NTTドコモとKT、2012年末のNFCサービス相互利用提供を目指す - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

NFC(Near Field Communication)とは、NXPセミコンダクターズ社とソニーが開発した近距離無線通信規格。androidに搭載されたり、iPhone5への搭載が噂されたりとこのところ急速に注目を集めている。

日本でICカードというと「おさいふケータイ」の名で通っている「FeliCa」が有名だけれど、これは必ずしもメジャーな規格ではない。世界標準として認定されている規格としては「Taspo」で採用されている「Mifare」(TypeA)と「住基カード」で利用されているTypeBがある。

この3つの規格は互換性はない。そのため「FeliCa」をプラットフォームとする「Suica」や「Edy」「nanako」はおさいふケータイ上で共存できるが、「Mifare」を利用するTASPOは共存できない。仮に「TASPO」が「Felica」上のアプリケーションであれば、おさいふケータイをかざすだけでタバコが買えたのだ。

NFCのすごいところはこれら3つの規格を1つにモジュールで通信可能にしてしまうところ。NFCに対応したリーダー/ライターがあれば、FelicaだろうがMifareだろうが通信できてしまうのだ。

じゃぁこれで3つの方式が統合されたかというとそういうわけではない。NFCがカバーしている領域はあくまで無線通信の部分。実際のFelicaやMifareの規格は無線通信の部分だけではなく、ICカードシステムとしてのOSがあり、ファイル管理やデータの保全、セキュリティ管理を行っている。SuicaやEdyといったアプリケーションはこうしたICカードOS上で動くアプリケーションであり、NFCが無線通信の部分で3規格と互換性を実現したからといって、いきなりアプリケーションまでが対応できるわけではない。


(出典:トッパン・フォームズ)

日本では多くのケータイが「おさいふケータイ」に対応しているので、こちらについてはいきなり大きな変化が現れるということは考えにくい。ただしいったんケータイにNFC対応モジュールが搭載され始めるとじわじわと変化が訪れるかもしれない。

日本でICカードを使ったサービス(交通機関のチケットや電子マネー、ポイント、個人認証など)を始めようとした場合、それ専用のICカードを作るというのも手だけれど、カード配布のコスト、普及させるためのスピード、運用コストを考えると、誰もが持っている「おさいふケータイ」上のアプリケーションとして提供する方が効率的な場合も少なくない。物理的なカードを発行するという運用が不要となるし、おさいふケータイを利用すればICカードの基盤部分の開発は不要となり、アプリケーション側だけに特化できる。

おさいふケータイがPFとして機能しているからだ。

これがandroidやiPhone/iPadのようなスマートフォン+NFCだと、こうしたICカードのPF的な役割をスマートフォン側で提供する可能性が出てくる。あるいはアプリベンダー側が直接自分たち固有の方法で暗号化やデータ保全を行うこともあるだろう。交通機関のように大規模なものであれば既存のICカードの規格にのっとって開発することになるだろうが、長期的にはFelicaのPFのシェアは下がっていくかもしれない。

またICカードの規格の場合、カード側(ICチップ)にデータを保存できるようになっている。EdyやSuicaも「ケータイ」側にチャージされた「お金」の情報を持つことになっている。仮にケータイが盗難にあったとしても、無制限に電子マネーが使われるわけではなく、チャージされている分の損失ですむのはこうした理由から。

こうした制御のためには当然、ICカード側でセキュリティやデータ保全の堅牢な仕組みが必要だ。しかし仮にカード側ではなく、サーバ側でこうした情報を管理した場合はどうだろう。レジでカードリーダにかざした時に、カードリーダを通じてサーバにアクセスし、そちらで決済情報や残金管理を行うとしたら、カード側に必要な機能はICカードの規格ほど高くなくてもよい。

そうなるとクレジットカードやPaypalのように都度、センター側で決済処理をするような決済サービスでは、必ずしもICカードのPFを利用する必要はなくなるのかもしれない。

NFCをめぐるポスト「おさいふケータイ」の争いは、Felica NetworksのようなPFerと決済事業者、サービサーを巻き込んでの主導権争いになっていくのだろう。


Taspo(タスポ)に「ガラパゴス化」を越えたメリットはあるのか - ビールを飲みながら考えてみた…


コメントを投稿