ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

地方都市で電子マネーは普及するか

2009年11月25日 | 貨幣、ポイント
仕事の関係で延岡に来ているのだけれど、延岡の駅の様子を見ていると果たして地方都市で電子マネーは普及するのだろうかという疑念が浮かんでくる。先日のEdyの記事にも書いたように、東京にいると定期代わり・切符代わりとして交通系の電子マネー(Suica、PASMO)が浸透していく様子がよくわかる。流通系電子マネーの利便性も分かるのだけれど、まずはこの交通系の電子マネーが市場を引っ張っていくのだろう、と。

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しかしこうして改めて地方の駅を見ると、こうした考えが揺らいでしまう。否、揺らぐというよりは、SuicaやPASMO陣営の拡大に限界を感じてしまうのだ。

延岡の駅では、まぁ、当然のごとくJRの改札口は駅員さんが切符のやりとりをしている。電車のルートも少なく、決まった区間以外の行き来はさほど多くないのだろう。そうした状態では、交通系の「乗り換えや乗り継ぎの清算の簡素化」というものがそもそも不要になってしまう。つまり「交通」という切り口では導入へのトリガーにはならない。

では地方都市では電子マネーは普及しないのか。あるいは普及するとしたらどのようなものがトリガーになるのだろう。

思いつき要素をばっと並べてみた。

ターゲット:高齢者や主婦
利用シーン:日常の生活シーン全般での利便性の向上
交通系:電車よりバスの小銭対策
流通系:近隣のスーパー、現金の代替以外の付加価値(購入履歴による家計簿がわり)
地域通貨:商店街の活性化(ポイント)、地域通貨、エコマネー

東京であれば、まずは「電車の乗り換え」というところが訴求ポイントとして挙げられるが、地方都市ではそうした明確な「柱」が存在しない。また流通系のように「顧客の囲いこみ」が必要なほど他店舗との競争が激しいわけでもない(競合するコンビニが近所にない、という意味で)。そう考えると、利用者も店舗側も明確に「電子マネー」を導入する理由が見当たらない。あったら便利という程度になってしまう。

但し違うアプローチもある。

特定の店舗やグループというよりも、「地域の活性化」「街中商店街の活性化」といった地域振興的なアプローチや、バスなどの公共交通網を含めた「地域通貨」としてのアプローチ、高齢者などの自立支援的なアプローチだ。多少意味合いが違うとはいえ、いずれも「(高齢者をふくめた)住人」がその「地域」や「街」に住みやすくする、商業面も含めて共生できる都市をつくるという観点だといえる。

地域通貨・エコマネーというのは、もともと相互扶助な要素と流通する貨幣(的なもの)をエリア内に閉じる(商圏を限定する)という2つの機能をもっているといっていい。前者は「助け合い」をベースとした「貨幣経済によらない経済圏の創出」だといっていい。それは困っている私を助けてくれれば10ポイントあげます。あなたが困っていた時はそのポイントで誰かの助けを借りることができます、というもの。

そこには通常のお金を媒介とした商品経済圏とは異なる、善意に基づく経済圏が創出されることになる。

こうした善意に基づく地域通貨・エコマネーといったものも、地域の商店街での商品やサービスを購入できる/割引ポイントとして利用できるようになると、意味合いは全く別のものとなる。それはヤマダ電機などのポイント制度と同様に、利用範囲を限定した「通貨(的なものとなる)」となる。

こうした「利用範囲の制約」を逆利用することで、地域内で閉じた商圏を作り出すことができる。同じ商品をネットや隣の県の巨大スーパーで購入されれば、貨幣がその街から逃げ出したことになる。しかし地域マネー中止の経済圏・商圏であれば、その通貨はその街の中で循環する。その街の経済基盤を高めることができるのだ。

事実、そうしたものに注目している電子マネーもある。

NTTデータ イノベーションカンファレンス 2009 Report:電子マネーで地域活性化を支援する――イオンCIO - ITmedia エグゼクティブ

Business Media 誠:神尾寿の時事日想・特別編:地域みんなで使えるICカード「めぐりん」の挑戦 (1/4)


都市部のように特定の企業グループによる「電子マネー」による商圏の囲い込みではなく、地方ではその地方自身の活性化として「電子マネー」が求められるのだろう。仮にそのインフラ面を特定の企業グループの「電子マネー」が実現することが望ましいのか、あるいは地方自治体による「地方活性化」として取り組んでいくことが望ましいのかはわからない。仮に後者の要素がひつようなのだとすると、ICT系の地方への予算をいちがいに切り捨てるわけにはいかないのだろう。

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