ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

ビットワレット子会社化、楽天はEdyの成長エンジンとなるか

2009年11月07日 | 貨幣、ポイント
Edyは生き残れるのか--楽天が電子マネー「Edy」を運営するビットワレットを子会社化すると発表。「楽天市場」などでのEdy決済を可能にするほか、コンビニエンスストアなどとの連携を強化。自社の「楽天スーパーポイント」の普及にもつなげるとのこと。電子マネーを引っ張ってきたEdyであるが、これまでも何度も増資を行い、9期連続の赤字と未だ収益基盤が成り立っていない。果たしてEdyは生き残れるのか。

楽天、電子マネーに参入 「Edy」運営企業を子会社化へ
楽天、電子マネー「Edy」を買収、 使いやすいポイント付き決済ツール提供へ:日経ウーマンオンライン
楽天、「Edy」のビットワレットを子会社化 - ITmedia News


そうはいってもEdyの利用者というのは決して少なくない。カードとおサイフケータイをあわせた発行枚数は、5000万枚を超えており(うちモバイルは980万枚)、SUICAの2710万枚、PASMOの890万枚、nanacoの890万枚を大きく上回っている。また利用できる店舗なども、マクドナルドやセブンイレブンなどでの利用ができるようになったこともあり、20万ヶ所に達しようという勢い。

ただし認知度では、「SUICA」の80.5%、「PASMO」の70.3%と鉄道系についでの3位(65.0%)。またリアルな店舗をもつ「nanaco」(64.9%)、「WAON」(63.2%)に急追されている状況。Edyの認知度が伸び悩みnanaco、WAONが伸びてきている状況だ。

NRIの「電子マネーに関するアンケート調査(第3回)」によると、電子マネー全体の1回あたりの平均利用単価は890円、EDYは833円と若干下回っているものの、Suica(642円)、PASMO(687円)、nanaco(686円)よりは高い。ただしこれを月間利用金額に直すと、Edyの5198円に対し、Suicaは6183円、nanacoは5541円と下回っている。潜在的な利用者数(発行枚数)、店舗開拓力も業界No1でありながら収益が伸び悩んでいるのは何故だろうか。


「電子マネーに関するアンケート調査(第3回)」を実施~保有率と買い物利用率が続伸、女性の支持が成長のキーポイント~


理由は大きく分けて四つ。

1)利用金額に対しての手数料料率の低さ
2)店舗開拓に伴うコスト
3)決済端末のコスト
4)独立系としての弱さ


電子マネーはそもそもクレジットカードなどと比べて小口決済向けといわれている。仮にEdyの加盟店でお客さんが何かを購入したとしてその手数料収入は2~3%、1回の利用金額が833円だとすると17円~25円程度。月に2500万回程度利用されているとするならば5.25億/月くらいの収入にしかならない。とはいえ、加盟店の側からすると、小口決済である以上、これ以上の手数料というのもなかなか難しいだろう。Edyに限らず、電子マネー事業の構造的な課題がここにはある。

利用者を増やすにも、1回当たりの利用単価を上げるにしても、魅力的な店舗開拓が欠かせない。そのために発生するコストが2つ。1つは店舗開拓のための営業コストであり、もう1つが加盟店が参加しやすくするために、決済端末をビットワレット側で負担するためのコストだ。

最近ではEdyだけでなく複数の電子マネーに対応した決済端末やレジを独自に導入するような場合も増えてきたのだろうが、新規の加盟店がEdy単独の決済端末を導入しようと思った場合、数万程度の端末を用意する必要がある。Edyを導入することでそれを回収するだけの増収効果が期待するというのも難しい以上、そうした端末費用をビットワレット側で負担せざろうえなくなる。

こうしたコストは店舗の拡大が一段楽するまでの一時的な投資だという見方もあるが、交通系や流通系の電子マネーのようにベースとなるものを持たない以上、店舗の「量」で差別化が必要であり、拡大均衡を目指すうえでは簡単にやめることができないのだ。

こうした課題はSuicaやPASM0、nanacoでも同様のはずだ。しかし彼らとEdyとは根本的な違いがある。それはEdyが独立系だということだ。

SuicaやPASMOのような交通系にしろ、nanacoやWAONのような流通系にしろ、それらの電子マネーはそれ単体で事業収支を判断する必要がない。例えば交通系の場合、当然、電車の利用者が中心となるわけであり、普及すれば、電車料金の未払いの防止や駅職員の人件費の削減が可能となる。電子マネーとしての投資は発生するものの、利用者への利便性を保ちながらコスト削減が見えているのだ。その上で、電子マネーによる決済手数料収入がアドオンされる。

これは流通系も同じだ。電子マネーやポイントと組み合わせることで、自社への顧客囲い込みをはかりつつ、同時にレジの回転率を高めることで人件費の削減につなげていく。将来的にはそこからのマーケティング情報などを自社への販売につなげていく。そうした絵が描きやすい。

しかしEdyはそうではない。単体の手数料収入だけで店舗開拓、投資~回収を行わねばならないのだ。

また利用者にしても、交通系なら通勤通学の延長で電子マネーを導入しそのまま買い物にも利用するという流れは障壁がない。流通系であれば普段の買い物がスムーズになる、ポイントがたまりお得であるといった入り口は分かりやすい。しかし独立系のEdyの場合、もう1つEdyを選択する理由が見当たらないのだ。いろいろな所で使えます、では押しが弱い。

では、今回の「楽天」との提携・子会社化でEdyは成長できるのだろうか。

2008年度の楽天市場の流通額は6638億円。この巨大市場の決済手段としてEdyがその一角に食い込めばそれはEdyにとっては大きな成長エンジンになりえるだろう。しかし問題は相性だ。ネット上の決済にEdyを利用しようとした場合、i)事前にその支払うだけの金額をEdyにチャージしておく必要があり、ii)PCのFelicaボードや外付けのICリーダーを利用する必要がある。

楽天市場での1回あたりの平均購入単価は7600円程度。これに対して現状のEdyの月間の利用金額が5198円であり、それ以上の金額を楽天では1回の購入で使うことになる。もともと小口決済向け決済手段であり、果たして楽天で利用するくらいの金額を常にチャージしているだろうか。クレカやネット口座の方が相性がいいだろう。

さらにEdyを読み取るためのFelicaボードやICリーダーをどれだけの人がもっていて、またどれくらいの人が利用しているだろうか。もちろんネットブックではそんなものついていないし、Felicaボード付のPCをもっている人の中でもそれを利用することに慣れている人はほとんどいないだろう。

楽天市場でEdyが流通するためにはハードルが高いのだ。

ビットワレットの子会社化は楽天にとっては、株価対策としては即効性のある施策だろうが、それがそのままEdyにとっての成長戦略に寄与するとは限らない。Edyにとっては、楽天ポイントをどれれだけEdyに変換させることができるか、そこがポイントになるのだろう。


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