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たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

水沢山経由で船尾滝

2020年04月01日 | 近所じゃない群馬県の山
◎2020年3月28日(土)

水沢観音駐車場(10:02)……林道を離れる(10:14)……お休み石(10:42)……石仏群の展望地(11:17)……水沢山(11:29~11:47)……電波塔だか無線中継所(11:57)……反対側の登山口(12:09)……林道を離れる(12:17)……船尾滝(13:12~13:34)……水沢観音(14:08)……駐車場(14:14)

 吉岡町の船尾滝の立入禁止が4月1日に解除されるとのこと。この滝は最近になって意識した滝だが、落差72m(吉岡町のHP)もある巨大な滝が前橋市に離接する吉岡町にあること自体が不思議だった。地図で調べると、この町は東西に横長で、西端は榛名の麓になっていて、滝のあるあたりは伊香保と接していることがわかった。
 立入禁止とはいっても、ここ一年で滝見に行かれた方の記録は多く、どこが立入禁止の部分なのかよくわからず、これはどうも、車道の通行止めということらしい。つまり、船尾滝は観光滝のようで、4月に入ればお気軽に滝見に来る人もかなりいるだろう。解除前に見ておくことにした。だが、通行止めまで車で入って、滝まで歩いて行ったのでは物足りない感じもし、水沢山を経由して行くことにした。その方が観光滝見の気分も少しは薄れるだろう。この歩きルートは何も珍しくはない。調べれば、多くの方が歩いている。ちなみに、自分にとって水沢山そのものが初めての山だ。

(駐車場から水沢山。山頂は右奥のピークになる)


 今日の天気予報は午後の遅い時間から崩れるようで、午前中は何とか持ちそうだ。そんなことを知っていながらグズグズしていたら出発が遅れ、水沢観音の駐車場に着いたのは10時近くになっていた。駐車場には車が一台もなかった。新型コロナによる不要不急の外出控え(これを律義に守る人は少ないだろうが)と天気予報でハイカーもいないのかと思っていたら、先にも駐車場があり、そこには30~40台ほどの車があった。水沢観音に来たのは何十年も前のドライブだから、この駐車場の存在は気づきもしなかった。

(登山口までの歩きがかったるい。坂道状になっているので、ここの歩きだけでも汗をかいた)


(実質の登山口)


 水沢山は目の前に見えている。あの尾根を登って行くのかと思うとちょっとひるんだ。やけに急で、上り一辺倒じゃないの。そして、上部の傾斜はきつそうだ。登山口までどうやって行けばよいのかわからず、取りあえず、広い駐車場を横切ると、ハイキング姿の方が上の林道の方から下って来る。あの林道を行けばいいらしい。林道は舗装から未舗装、そしてまた舗装になる。その間に標識を見つけて安心する。前方を歩いている人は3人だが、圧倒的に下って来る人が多い。早い時間に登れば、そんな時間帯なのだ。
 林道から離れて山道になる。ここには杖が置かれている。二人連れの女性の方が一本取り出した。この二人連れとは山頂まで前後して歩くことになる。見上げるとやはり長いきつそうな上りになっている。ためらわずにストックを一本出した。

(階段が続く。これでも結構、急だ)


(時間帯として、下る方が圧倒的)


 すぐに息切れ状態になった。そして汗が流れる。暑い。風はない。メガネに汗が落ちる。ウイドブレーカーを脱いだ。下はトレパンだが、ステテコを履いている。これも脱ぎたかったが、ハイカーはどんどん下りて来るし、後ろからも抜かれる。こんな状態では脱げるわけもない。せめて綿製にしておけばよかった。もしかしたら寒いかもと履いたユニクロの化繊ステテコは失敗だった。この暑苦しい状態は山頂まで続いた。
 しかしきついねぇ。筑波山の長い階段もきつかったが、後で思うと、こちらの方が傾斜がある分しんどい。たまに緩いところがあってもすぐに終わる。行き交う方々のスタイルを見て気づいた。この山、ローカットのトレッキングシューズというか、昔風に言えばズック靴の方が多い。そしてザックも小さい。中にはタオルを首に巻いてペットボトルを片手に持っただけの空身の方もいる。常連さんが多い山と見た。みー猫さんのブログだったろうか。雪の時季に登って、大方が長靴だったというのはこの山だったっけ。登山道が急だという点を除けば整備され、ズック靴でも長靴でも問題なく歩けることは確かだ。
 抜かれる一方という情けない状態ではない。こちらもほぼ同数の先行者をかわしている。自分が抜いた方々は常連さんではないのだろう。全員、普通の登山靴だった。そんなことはともかく、今のところ展望も花もない景色の中を、黙々と、立ち休みを続けながら登って行くのは気が滅入る。ハイカーが少なかったら、適当なところで腰をおろしたくなる。杖の置いてあった登山口には山頂まで1.7kmとあったが、ここのところ2時間歩きを続けている身にとってはたかが1.7kmも苦行に似たものを感じる。苦行といえば、脱いだウインドブレーカーをザックに入れる際、タバコがないことに気づいた。途中のコンビニで買っておきながら、ザックに入れ忘れていた。ハイカーが多い中、山頂までなら我慢もできようが、その先の無煙状態に自信はない。これもまた苦行といえば苦行だ。

(お休み石)


 「お休み石」というところに着いた。どこに石があるのかと思えば、確かに腰をかけられそうな石がいくつか並んでいるだけ。ここに標識があり、<270m/全580m>とある。つまり、まだ310mも登らなきゃならないということ。うんざり。
 ここで立ち休みをしていたネエチャンに質問を受ける。「いつも地下タビですか?」。「まぁ、時と場所によりけりですよ」。濃いサングラスをしていたので顔つきは不明。あるいは妙齢、おネエさんかも知れないが、臀部の張り具合からしてネエチャンと判断した。このネエチャンも上りである。地下タビのことを聞いて登りを再開し、こちらがここで休むとでも思ったのか、すぐに後ろを歩き始めると、「どうぞお先に。私、歩くのが遅くて、後ろにつかれるとプレッシャーを感じてしまうんですよ」とおっしゃるものだから、「いやいや、私もノロ足で、すぐに離されますからすぐにプレッシャーは感じなくなりますよ」と返し、ネエチャンの7~8mほど後ろに付いて歩いた。

(前を歩くネエチャン。つまらない写真を撮っている間に離された)


 しばらく楽だった。このままずっと行こうかと思ったが、後ろからどんどん追い抜かれる。そして、接近しそうになると、見下ろして、どうでもいいような写真を撮って間をとったりする回数が多くなる。オレを追い抜きざまに立ち止まったオバチャンから「あら、地下タビいいわね。昔はみんな地下タビで歩いたのよ。私の主人もずっと地下タビを履いていたわ」と言われる。ついこちらも「ご主人、今は登山靴ですか?」と聞くと返事がなかった。悪いことを聞いてしまったようだ。
 ネエチャンが休みを入れた。仕方がない。「プレッシャーを交代しましょう」と追い越す。このネエチャン、もしかしたら自分の臀部に鋭い視線を感じて重苦しくなり、これがプレッシャーになっていたのかもしれない(笑)。
 また自分のペースになってしまった。さっさと登っては立ち休みの繰り返し。振り返ると、ネエチャンとの距離はどんどん開き、先行したオバチャンとの距離は近づくが、結局は、やはり常連さんなのか、そのうちに姿は見えなくなってしまった。歩きながら、自分の左足のかかとが地に着いていないのに気づく。もう無意識のうちにこんな歩きになってしまっている。意識してかかと着けで歩くようにしないといけないなぁ。

(山頂が近づいた感じ)


(山頂の肩には石仏がズラリ。山の上にこれだけのしっかりした石仏が並んでいるのは見事としか言いようがない)


(こんな感じの石仏)


(展望地から1。子持山。背後は武尊だろう)


(展望地から2)



(水沢山山頂が高く見える)


 石がゴロゴロし出した。そして上の空間が開けてきた。そろそろ山頂が近づいたか。一時的に平らになると、石仏がずらりと並んでいるところに出た。後で読み返したハイトスさんの記事には「十二神将」としてあるが、欠けたのも含めて十五体の石仏があった。ここからの展望は、ここまで恵まれなかっただけにすこぶる良い。しばらく休んでいたかったが、山頂はまだ先のようだし、ここから見える山頂はまだ高さがありそうなので、ゆっくりもできず先に行く。ピストン歩きなら、帰路はここでしばらく休みたい。ただ、素晴らしい展望とはいいながらも、これから雨になるのが確実な空模様。薄い雲が立ち込めている。

(岩々してくる)


(右手に見えた平地が気になった)


(山頂直下)


 一旦、下る。嫌らしい。どこまで下るのかと思ったらそれほどでもなかった。すでに階段はない。山頂の方からさっきのオバチャンがやって来た。あれっと思い、「山頂に行ったんですか? ずいぶん早いですね」と聞くと、「山頂に行って、景色眺めて水を飲んだだけだから」と。これが常連さんスタイルなのだろうな。ここからの右手の景色も良い。下にヘリポートのようなものが見えるがあれは何だろう。
 岩場を登ると狭い道。そしてまた最後の岩場。ロープもあるが、ストックを収納せずともつかむ必要はない。途中で二方向に分かれる。直進がよく歩かれているようだが、逆らって右手に登った。ふと左の直進方向の上にオバチャンがいて、オレが登って来るのを待機していたみたいだった。失礼しましたと声をかける。「いいえ」の返事には恐縮した。どうでもいいことだが、こういうズック靴で登れる山ではコンニチワも必要もないかと思っていたが、常連さんとはいえ挨拶と待機だけはしっかりとする。ファミリーの園児っぽい子供ですら挨拶をする。その点は感心した。

(供え物がやたらとある石祠二基)


(石仏群のあった肩の部分)


(水沢山山頂)


 余計な話だった。登ると石柱と石祠が二基あり、石柱の頭には×印があったから、ここが三角点かなと思ったりしたが、右に迂回した分、まだ先があった。何か石祠があったらしき跡があり、その前には木箱があって、一円玉がいっぱい入っている。これは賽銭だろう。積み重なった石を登るとようやく山頂。ここに三等ながらも立派な地理院三角点標石があった。
 山頂には、オバチャンが一人、景色を見ながら食事中。山頂そのものは狭い。20人が限度だろう。ちょっと先に行って休むことができるといった山頂でもない。行き交った人たちの数からして、一時的に満員になっていたとしても不思議ではない。取り急ぎセルフを撮ろうとセットしてじっと突っ立っている間に3人上がって来て、セルフ撮りに気づかないお邪魔な人が入り込んでしまい、後で見た写真は台無し。登山口で出会った二人連れもやって来た。ここまで2~3回は抜きつ抜かれつだった。

(山頂から1。子持山の左は小野子三山。左端が先日行った十二ヶ岳。後ろが谷川となる)


(展望盤以外にこんな重宝するものが何枚かあった。これを手に360度見回したかったが、どんどん上がってくるハイカーで次第に落ち着かなくなってきた)


(山頂から2。日光男体山だったかと思う。その右手前に赤城山が見えるはずだが雲の中)


(山頂から3。特にコメントはない。まぁ、広々とした風景を望めるといったところ)


(榛名連山。山頂に置かれた写真では、左から相馬岳、榛名富士、二ツ岳の雌・雄、烏帽子岳となっていた)


 展望盤を見ては山を特定すべく眺めていたら、オジサンが声をかけてきた。展望盤の下の箱に写真があるよと。何を言っているのか知らずにアドバイスのまま下の箱を開けると資料がいろいろあって、その中にカラー写真で撮られた山々のそれぞれに山名を記したのがあった。それを写真に収める。後で照合すればいい。ありがとうございます。
 ここで菓子パンを食べる。途中で何度か水を飲んでいたから、今日は500㎖で足りるかなと心配していたが、これからは下りだから十分に足りる。いつも都度に飲んでも一口だけだ。ここまで水沢観音からのコースタイムは1時間20分。かかった時間は+5分ほど。途中で休憩は入れてもいないが許容だろう。それよりも気になるのは天気。雲がいくらか黒ずみ、低くなってきたような気がする。先に下るか。タバコはあったとしても、この山頂では吸えない。例のネエチャンは自分が山頂にいる間に上がって来ることはなかった。

(結構な下り)


(下りで右手方面の景色。八ヶ岳、南アルプスの方だろう)


(振り返って水沢山)


 下る方向はマイナーコースで、そちらにも登山口があって駐車場もある。そこの標高は地図の等高線を見る限りは1060m程で、水沢山山頂との標高差は135mくらい。だったら、水沢観音側からの580mに比べれば格段の差なのだが、よくは知らぬが、登山口までの車の利便性が悪いのだろう。さらに、尾根はヤセていて、両サイドは切れているところもある。それぞれ単独の、登って来るオバチャン一人に出会い、早い足取りのオバチャンに抜かれた。この山、なぜかオジチャンやらオッサンの存在はおとなしく、単独のオバチャン歩きが目立って元気が良い。やはりかかあ天下の気質なのか。

(電波塔)


(ここの石ころで滑って転んだ)


(平らになった。間もなく林道か)


(林道に出た。右手に駐車場がある。ここを突っ切れば二ツ岳。左に行く)


 土がむき出しで岩混じりの急なところを下って行くと、ピーク状のところに電波塔が見えた。だれかのブログに「無線中継局」とあったので、今回のGPS軌跡図には中継局と記したが、ここでおかしなことに気づいた。上武国道から前橋方面に向かうと、右手の赤城山が過ぎたあたりから正面に榛名連山が見えてくる。連山の右端にあるの山がいびつな乳房の形をしていて、それを榛名に行った際、同行の高校の後輩が「おっぱい山」と言い出したことから、これまでは意識もせずに眺めていて、以降、自分もまた無理に乳房に見えるようになったのだが、その山の乳首にあたる先の肩というかコブに、よく見ると電波塔が見えていた。いつも、眺めながら何と言う山なのか気になっていたが、それが水沢山だったわけだ。いびつな手前の肩が十二神将が置かれた高台で、乳首は水沢山のピーク、そして奥の肩がこの電波塔のある位置となる。続いて左に二ツ岳、相馬岳か。これまでの疑問が氷解した感じだ。
 電波塔を過ぎて、ようやく傾斜も落ち着いたが、今度は泥濘が出てきて、さらに砂礫状の軽石のような石がある坂道が続く。これが歩きづらく、足を滑らせて尻餅をついた。
 間もなく舗装道に出た。右手先には駐車場が見え、3台ほどの車。そのうちの1台に、さっき抜かれたオバチャンが乗り込もうとしている。このまま道路をはさんで直進すれば二ツ岳となる。その時は二ツ岳に行く知恵もなく、後でみー猫さんの記事を拝見し、行っていればよかったかなと思いもしたが、おそらく行っていれば雨にあたっていたはずで、現に、帰路に前橋市内に入ると雨がぱらついてきた。知らないままでいてよかったようだ。

(ここから林道を離れて左に。立入禁止の標示が目立つ)


(ロープ内に入るとこんな標識。左の「船尾滝」は何とか読めたが、右は読めなかった)


 ここから今回の本題となる船尾滝に向かう。標識はないが、見当をつけて林道だろう車道を左手・南に行く。車が2台ほどやって来る。林道は先で左にカーブしている。そこが林道から外れるところかと思う。案の定、「榛名県有林」の標柱があり、入口にはロープがめぐらされ「土砂流出で通行止め」とある。ここへの入り込みに際し、ハイトスさんは「調査」という言葉を使われているが、自分は解釈上の問題とした。つまり、ここからさらに分岐林道が出ていて、別方向に向かう登山道もある。登山道はOKで、分岐林道は×とした。現に、板にブツブツの穴を開けた「船尾滝」と読める標識が置かれている。

(明瞭。テープは目印なのか作業用なのか)


 整備された道ではないが、明瞭な踏み跡が続いている。薄暗い感じになってきた。少し不安になり、スズを出し、クマ除けスプレーをポケットに入れて歩き出す。せめて、ここでタバコを吸ってから出発したかった。思えば無性に吸いたくなる。大分前、ぶなじろうさんのブログに、先輩だったかと山を歩いていて、途中でタバコを忘れたのに気づいて山行を中止して下山したというエピソードが記されていた。自分は短時間でこのザマだから、長時間なら、戻ることはせずとも、おそらく、枯葉を細かくし、メモ用紙に巻いて吸いかねない。幸いにしてライターはある。過去に枯れたスズタケだったかを短く切って火をつけて吸ったら、滅茶苦茶に咳き込んで吐き気を覚えたことがある。立ち休みも含めて休憩は禁物だ。
 道に沿ってテープが目立つ。これが目印なのかはわからない。地図では尾根上に破線路があり、破線はやがて沢沿いに下り、船尾滝の西側に出ることになっている。問題はそこから滝にどうやって出て、滝見の後はすんなりと車道に出て水沢観音に戻れるのかということになる。地図にそれを結ぶ線はない。まさか滝の上で立ち往生ということにはなるまい。どこかに地図にはない道があるはず。現に歩いている人はいるのだから。

(標高点1000mあたりから水沢山)


(標識に合わせて右に折れる。これがやがて、どこにあったのかわからずの破線路に続いている)


(一時的に幅広の道。かつては車も通れる作業道だったのか)


(手前からやって来た。左に下る)


(ここも立ち入り禁止)


 ちょっとした丘のようなところに出た。左に水沢山ピークと電波塔ピークが見えている。ここでGPSを見てみると、1000m標高点にいた。沢に下る破線路はすでに通過している。気づかなかった。踏み跡は明瞭だし、間違ってはいないと思うが。このまま行く。ここから見る水沢山は特におっぱい山といった形には見えない。
 やがて「水沢山社営林」の鉄杭が出てきて、すぐに標識が置かれていた。ほっとした。右方向に「船尾滝 駐車場方面」とあり、やって来た方に向けて「見晴の森 伊香保森林公園」とある。尾根は直進だから、ここから尾根外れということになる。
 すぐに階段が現れ、一時的に幅広の道になる。だが、利用する人は多くはいないようで、荒れた感じがする。そしてまた標識。直進は「水木の森 展望の森」、左折が「眺望の森 船尾滝」。展望と眺望の違いがわからないが、肝心の船尾滝方面はロープでガードされている。こうなったら、調査も解釈もない。突っ切るしかない。水木の森がどこに出るのかわからないし、そんな名称は地図にもない。

(めったに歩く人はいないだろう)


(年に何人かにしか見られない標識)


(かなりの急坂)


 ヤブ状になり、朽ち欠けた階段を下って行く。ここでまたブツブツの「たきの駐車場」の標識を見かける。この辺から急斜面になっていく。それもあたりまえ。水沢山の山頂から300mも下っていない。どこかで急で長い下りがあると思っていた。何せ人が通らない廃道を歩いているようなもので、慎重に下る。

(下りきっての立入禁止。先に沢が見えている)


(沢を越えて崩壊地)


 ようやく沢に下りた。ここにも「立入禁止 法面工事の為云々」と張り紙がある。ここまで来て戻るわけにもいかない。見上げると、上は林道になっているのか、法面がかなり崩れてブロック状の分厚く大きなコンクリの破片が散乱している。同類がいた。反対方向から慎重に下って来る。滝の様子でも聞こうかと思ったが、あいにく、自分の行きたい方向とは違うところを歩いているので、それきり見失い、声はかけられなかった。彼もこちらに気づいたろう。ところで、立入禁止解除とは、あくまでも滝までのことで、その先は自然に任せて修復なしということなのだろう。ここの工事が31日までに完了するとは思えない。

(林道歩きになる)


(この辺の木を切ったら、滝見の良いスポットになるのに)


(少女像)


 特に緊張もせずに林道に上がった。滝はこのまま林道を行けばいいのだろう。カーブを過ぎると、早速右上に滝が見えた。なるほど、あれが船尾滝か。今いる場所が眺めるにはベストスポットかと思うが。いかんせん、密集した灌木が邪魔になる。下って行くと、右手に着物姿の少女の座像。吉岡町の看板があるから町で造ったのだろうが、説明書きは読まなかった。滝を早いとこ見たかった。雨降り前に見られて幸いだった。

(東屋があって)


(堰堤越しに船尾滝)


 東屋が二棟あった。渡しの板も含めて確かに新しい。4月1日に間に合わせたのだろう。目障りなものが目に入った。東屋で学生風の男女が肩を寄せ合っている。下の駐車場から歩いて来たのか荷物はない。向こうも気づいたのか、逆に目障りなジジイがやって来たと思ったろう。お互い様だ。だれもいなけりゃ、まずは東屋のベンチに腰かけるなり、二人から離れたところで一服してから滝の探索に入りたいところだが、一服する物がないのではそれができない。ザックとストックを置き、カメラだけ持って滝の方に向かう。

(自己責任)


(この橋はいくら何でも渡る気になれない)


(河原に下りる)


(下段から見上げる。これでは上段の滝の高さの感覚がつかめない)


(下段の左滝)


(同じく右滝。ステップがある)


(前傾の横撮りを縦撮りにしただけだが)


(反対側から見た橋。これを渡るのは、滝の上段に上がるよりも危険だ)


(橋を入れて)


(上段アップ。青年がいるのではこれが限界。ところで、下の滝も含めて72mもあるとは思えない。まさか堰堤も入れての落差ではあるまい)


(おさらば)


 また看板。こんどはきつい文句になっている。これも新設したものだ。<警告!! この先落石の危険あり 通行を禁止します。吉岡町役場>。こうなったら自己責任。いくら何でも二段構えの堰堤まで入れた写真は撮りたくもない。石段を登る。落石はない。堰堤の上に出る。目の前には橋。この橋の欄干には「滝沢川」と「おんべこおり」の銘板があって、先はテープでふさがれている。つまり渡るなということ。確かに、この吊橋風の橋はいくら基礎がコンクリートでも渡れない。橋の板は苔が付き、穴も開いている。通行止め解禁も、結局は東屋から眺めるだけで終わりの、車道とその間の遊歩道整備だけだったらしい。
 橋を渡れないのでは河原に下りるしかない。足は地下タビだし、できるだけ濡らさないようにジャンプしたりする。見上げる。二段になっていて、下段は左右の小滝。時期的に水量は少ないのか。ここまで来たら、小滝を越えて上まで行きたい。右の小滝の段差をステップ代わりにして這い上がるか、左から大回りして上の滝の下までは行けそうだ。
 ふと、背後に人の気配がしたので振り返ると、東屋にいたカップルの男が近くにいた。おそらく、オレが警告無視で滝の方に行ったので、真似してやって来たのか。あるいは彼女にいい格好を見せたかったのかは知らない。青年の気持ちはわからないでもない。別に滝を間近に見たいわけでもないだろう。ジジイが立入禁止の警告を無視して入り込むのを見て、もしかしたら冒険心にかられたのかもしれない。だが、手練手管とまでは言わないが、危うい滝を見に行こうとして骨折までし、自分のレベルをわきまえたジジイに気力で勝るわけがない。見るからにど素人で、足はスニーカーだ。それでは無理だろう。真似されてケガでもされたら、原因を作ったのはオレということになる。ヤメにした。というか、自分には体の良い理由ができて自重したといったところもある。ただ、だれもいなければ、きっと、安全コースで左から回って滝つぼまで行ったろう。
 彼氏はフェイントをかけられたような顔つきに見えたが、下の滝でうろついていただけだった。その間に、さっさと堰堤脇を通ってザックを拾って、林道に戻る。上の滝の真下まで行けたのにと、もったいない気分になっていた。この滝、水量がある時は結構な豪瀑かもしれない。

(船尾像。観音様か?)


 船尾像を見て林道下り。下り途中に駐車場がいくつかあって、遊歩道も整備し終わっている。ハイトスさんのブログ記事では遊歩道も崩れていたらしい。その当時のことを知ったのは帰ってからのことで、この先、林道歩きを続けるわけにもいかず、いずれは水沢観音への山道に入らなければならないので、遊歩道は歩かず、標識を見おとさないに林道をそのまま歩いた。遊歩道そのものは駐車場からの船尾滝へのチョイハイキングコースであって、水沢観音への標識を見落としかねないと思ったからだ。このまま舗装林道歩きでも行けるだろうが、それでは遠回りだし、足も痛くなる。

(その時時点ではここまで車が入れるようだ)


(まただ)


(確かに崩壊しているが)


(階段を行ける)


(階段の下にこれが括り付けてあったが、崖崩れとはここのことだろう)


 右下に車の数台置かれた駐車場が見えた。地理感覚がどうもすっきりしない。林道はこの辺で分岐しているのか、駐車場から出る二本の林道ともに、まだ通行止めになっている。ここから標識のある水沢寺に向かう山道に入る。もちろん通行止めエリア内だ。そのまま先に行くと、今度は「この先水沢寺方面崖崩れのため通行できません」とある。確かに、沢の斜面は崖というか土砂崩れになっているが、脇に鉄の階段があって、これを使えば問題なく沢の上に出られる。

(水沢観音に近づいた雰囲気で)


(水沢観音で1)


(水沢観音で2)


(水沢観音で3)


 上に出ると静かな道が続いていた。整備されているというわけではなく、平らなところに階段が敷かれたところもあったり、小さな植林も通過したりと、次第に里が近いことが実感できる。この道を使って滝見のハイキングに人はあまりいまい。大方は、車で行くはずだ。
 墓地と顕彰碑を過ぎると、いつの間にといった感じで水沢観音の敷地に入った。ハイキング姿の方も多い。高いところに観音堂のようなものが見え、階段を登って行く人もいたが、ああいうところは、息を切らせて登ったわりにはふ~んで終わることも多いので行きたいとは思わなかった。
 水沢観音の賑わいが、いつものこの時期の土曜日がどんなものかは知らない。まして、そろそろ雨が落ちてきてもおかしくない空模様になっている。人出はまばらといった感がしないでもない。

(最寄りの駐車場)


(自分が車を置いた寂しい駐車場)


 駐車場に到着。出発時と同様に、自分が置いた駐車場には他に一台もない。すぐにドアを開けてタバコを取り出し、ようやくの一服。4時間歩きか…。ここのところ2時間歩きばかりしていたから、その感覚からして5~6時間は歩いたような気がしたが、そんなものだったか。あるいは無煙状態で歩いたから長く感じたのか。
 出がけに見たふみふみぃさんのブログにはもうアカヤシオ情報が記事になっていた。今年は早いだろうなと思っていたが、予想以上に早いようだ。これを見て気が急いてきた。今季の雪山歩きは結局、赤城一回で終わってしまった。せめてアカヤシオで挽回したいところだが、休日には何かと用事があって、果たして何回楽しめるものやら。

(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」

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Unknown (瀑泉)
2020-04-04 12:37:48
船尾滝,25年以上前に,一度だけ,水沢観音からの遊歩道を利用して,最後は小滝を越えて,滝下まで行ったことがありますヨ。
往時は,スラっとした美しい直瀑だったんですケドねぇ。画像を拝見すると,随分と落ち口が変わってしまったようで,落差自体も5mほど低くなったような気がいたします。それに,昔は滝の両側も土壁だったんですケドね。今は,随分と岩がむき出しになっていますネ。
昨今の大雨の影響で,滝が姿を変えてしまうのは,仕方のないことなのでしょうが,やはり美しい姿が見られなくなるというのは,残念でなりませんヨ。
それはさておき水沢山,たそがれオヤジさんがお初というのは,少々,意外でした。まぁ,かくいう自分も,榛名山は榛名富士しか登ったことが無いので何ですが,いかんせん,榛名山群は,周回しずらい上に,車道や林道歩きとなるので,足が向かないんですよネェ。。。
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Unknown (ふみふみぃ)
2020-04-04 21:51:29
水沢山は榛名山群の山でしたか。私も榛名富士しか登ったことがなくさっぱり縁がなくて。
延々と急な階段の登山道でうんざりしそうですが次々とハイカーがくるとはアクセスの良さなのか展望なのか。
普段なら挨拶してくる子供に感心するところなのですがこの大コロナ時代だと躊躇うところもありますね。挨拶しないのは感じが悪いし、でも解放空間とはいえ至近距離で見知らぬ人と次々挨拶してそれでコロナに感染して山に行けなくなったらと思うと。そんな面倒なことを考えているのでいつも以上に山で人と会わないように神経質になっています。
しかしたそがれさんは相変わらず水の必要量が少なくて羨ましいです。同日私は6時間足らずの歩きで2L飲み干してました。
学生風カップルも滝を見に来たんでしょうがこんなとこでいちゃつかなくても(笑)と思いますが三密を避けて開放的なところに来たんでしょうか。まあ密着しているわけですが。
下段からでは滝のスケールがよくわかりませんね。
堰堤も含めての遠望ではスケールはわかるもののやはり興ざめで。やっぱり瀧見も人の手が入らない奥地の方がいいのかなあと。
今年のアカヤシオは確かに早いですが結局のところ低山のアカヤシオは標高高いところのアカヤシオと比較すればどうしても見劣りするのでまだ焦らなくていいんじゃないでしょうか。見ごたえ出てくるのは来週くらいかなあと思っています。
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瀑泉さん (たそがれオヤジ)
2020-04-06 16:03:40
瀑泉さん、こんにちは。
水沢山が意外と言われても、私も瀑泉さん同様に榛名はさほどに歩いていないのですよ。人が多いし、かなり上まで車で上がれる。そんな気安さは赤城に近いものがありますが、赤城に対してはさほどに違和感が出ないのが不思議です。
ただ、何に魅力を感じたのか知りませんが、息子が榛名に連れて行ってくれと言うものですから、いずれはまた榛名のどこかの山には行かなきゃなりませんが、榛名富士は一回で十分だし、ちょっと気が重いです。
船尾滝のこと、私はその25年前の姿を知りませんから、比較のしようもありませんが、「名瀑」と呼ぶには遠い感じがしました。タイミング的に水量が多い時期ならどうなのか、見ごたえがあるようならもう一度でも豪快な滝の姿を見てみたいとは思いますが、どうなのでしょう。やはり、いくら水沢山を経由して見に行っても、観光滝といったイメージは拭えないですね。見物客がいる時に、自分だけ立入禁止を無視して滝つぼまで行くわけにもいきませんし。
返信する
ふみふみぃさん (たそがれオヤジ)
2020-04-06 16:04:49
ふみふみぃさん、こんにちは。
ふみふみぃさんのアカヤシオ前線を期待して昨日、桐生奥に行ったら、まったく冴えませんでした。500mから登って900mで一株見たきりで、そのうちに雪になったりしてね。どうも、桜が早かったから、他も同様に早いんじゃないかといった期待は、場所によっては持たない方がいいですね。
水沢山の魅力は山頂からの展望に尽きるかと思います。正直のところ、私の趣味ではなかったです。ハイカーが多過ぎです。榛名富士もしかりです。赤城と同様に、ある程度の高さまで車で入れることは同じですが、榛名はマニアックなルートをとれないといった欠点があるし、どうしてもコース歩きをせざるを得なくなり、必然的にハイカーが多くなるといったところでしょう。
コロナといえば、水沢山では、あれだけハイカーがいながら、マスクをして歩いている人は見かけなかった。確かに三密ともに揃った条件ではないものの、対向者がいればどうしても身体が触れるぎりぎりのところですれ違ってはコンニチワを言い合う。危険といえば危険ですが、私とて同様のこと、大方の人は、自分は感染しないと思いながらも、志村けんが亡くなったら急に我が身の危機感を抱くようになる。こういう賑やかな山を歩くハイカーやら滝見のカップルはのんきといえばまさにそれですが、一週間経った土日でも水沢山のハイカーが多かったとすれば、平和なものです。
私の水量摂取が少ないのは悪循環に因るものです。若い頃、水を飲み始めると絶え間なく飲み続ける。この悪循環がよくないと自制したところにあるのではないでしょうか。まして、多ければ重くなるし。昨日はハイトスさんと歩いたのですが、私は水を飲みましたが、ハイトスさんが飲んでいる姿は最後まで見ませんでしたよ。
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