◎2021年7月17日(土)
15日の出来事だ。朝の犬散歩時のこと。途中で雨が降り出したので急ぎ足で家に戻った。玄関を前にして、ふいによろめき、左足の感覚がなくなり、前につんのめって転んでしまった。左膝を打撲。終日痛くてびっこをひいていた。階段の上り下りがつらかった。両手で手摺り頼り。骨にヒビでも入っているのではと気になったが、あいにく木曜日は病院の休診が多い。腫れはなかったので、鎮痛剤を含んで我慢していたら、翌朝は軽い痛みレベルになってほっとした。さすがに、普段1.5kmほどの散歩は1kmで終わりにした。こんなことはこれまでにも何度かあった。散歩中、突然歩けなくなり、立ったまま、時にはしゃがんだりと、足の感覚が戻るのを待つことがあった。老化現象も、とうとう頭のみならず、身体の随所に露呈化しつつあるようだ。ちなみに、後日20日に整形外科に行ったら、ただの打撲だった。それでもまだ手摺りにつかまっている。
ということで、今回は今月初の歩きになったが、梅雨の晴れ間に山歩きに出向いたら、山は雨でスゴスゴと戻って来たというのが2回あった。梅雨明け後は猛暑続きだろうと、当初から沢歩き、滝見のつもりでいた。その候補はマニアック系な嬬恋村の滝二本だったが、左膝がこのザマでは行き着けやしないだろう。予定変更で、手軽に楽しめそうな嬬恋村宇田川の石樋の滝、そして長野原町に転じて熊川の浅間大滝に行くことにした。その間に、玉だれの滝を組み込もうとしたが、沢歩きはないに等しそうなのでやめた。大沢滝はネット情報ではどうも場所がはっきりせず、中には途中のキャベツ畑に柵があって入り込めなくなってしまったような記述もあったので、これもパス。古滝は有料見物になるから論外。浅間大滝とて観光滝の典型だが、下流の魚止めの滝から通せば、少しは沢歩きも楽しめるだろう。それをやってしまった後だから敢えて記すが、現地の看板には「川には入らないでください」と注意書きがあった。
【石樋の滝】
キャベツ畑が延々と続いていた。車道沿いに柵はない。野菜泥棒も日常的に出るだろう。向かう先は東海大学嬬恋高原研修センター。ここが駐車地になる。さすがに涼しい。到着した9時の時点で19℃。センター前には標高1400mの表示板があった。関係者以外立入り禁止の構内駐車場に知らぬふりで車を置くわけにもいかず、ネット情報で確認していたこともあり、センターのフロントに行き、出されたメモ用紙に、氏名、車ナンバー、電話番号を書き込んだ。滝の入口は知らないので職員さんに教えてもらった。準備をしていると、ワンコを2匹連れた夫婦がやって来て、自分と同じように駐車を伝えに行った。ワンコ連れで散歩できる程度の遊歩道、見られる滝なのだろうか。ちょっとがっかり。
沢靴はハイパーV<忍>。去年入手し、ようやく履く機会がやってきた。効果の程の不安はある。現に普通のハイパーVソールのズックで沢歩きをして滑ったし、ズック型では小石や砂も脇から入った。滝だけ見て終わりのつもりはさらさらなく、滝の上流にナメ床の沢が続いているようで、「龍の壺」と呼ばれるスポットもあるらしい。そんなナメ沢歩きなら、岩登りもないだろうし、<忍>の試し履きにはよかろうと選んだ。初めて足を通したわけではなかったが、今日になって、留めのマジックバンドの余りが長いのが気になった。甲高者向けなのだろうか。これがすぐに外れるといったウイークポイントにならなきゃいいが。
(石樋の滝への入口)
(最初のうちは歩きやすい遊歩道)
入口はすぐにわかった。手書きの標識が置かれていた。静かな森の中の歩き。かすかに沢音が聞こえる。緩い上り気味の遊歩道。嬬恋村で5月に渓流釣りの方が熊に襲われたことを知っていたし、先日も黒保根で登山者が熊に頭をやられたばかりだ。用心してヘルメットを持参しているが、ヤブから熊が出てきてもおかしくない雰囲気なので、あわててスズだけはザックに付けた。ヘルメットは入渓してからでいいだろうが、今は普通の登山でも、ヘルメットは熊防御用には必携品かもしれない。
(この水溜りは流れている)
(石樋の滝分岐)
(東屋が見えた。滝はその手前を左に下る)
道が左右に分岐した。標識はない(確信はない)。左に行きかけたが、違う気がしたので回れ右になった。半信半疑で歩いている。そのうちに遊歩道は水が流れて沢になりかけ、大股で左右、小股でヘリ歩きになった。あのワンコ連れの夫婦はどうすんだろうと思った。2匹ともに小型犬だった。足だけではなく腹も泥んこになる。何となく、かなりのヤマビルにたかられそうな雰囲気になった。
水が消えた遊歩道に戻ったら、標識が置かれていた。やはり、こちらで正解だった。ここで道が分岐し、右が「源流の道」に続き、直進は「石樋の滝」、来た方向には「バラキ湖」とあった。いつもの方向音痴歩きでなくてほっとした。ほどなく、東屋が見え、その手前に左に下る道があり、これが滝下へのルートらしい。
(石樋の滝)
(右岸側から)
(左岸に戻って)
(上にナメが続いているのが見える。東屋に戻らずとも、簡単に左から巻いて登れそうだった)
木の階段を降りていくと、まさに石樋の滝があった。ここまで出発から15分。この限りでは観光滝かもしれない。躊躇なく滝下から川を渡って正面に出た。落差は7mほどだが、落ち込みは豪瀑の部類だろう。移動しながら写真を撮った。だが、どうしても後で結果を見ると周囲の緑が水にも濃くかぶって写っている。今日はコンデジだからといった言い訳にはならず、コンデジながらもシャッタースピードと絞りの調整は可能なカメラだ。おそらく、内心、「滝の写真を撮れればいいや」的なものがあって、それ以上のきれいさを追求する旺盛心はないようだ。我ながら、結果を見ての他人事的な感想。実は、滝よりも、その上のナメ床の沢歩きをしたいのが本望だった。滝の写真はまずいが、とはいっても、上の沢写真もまた同様だが、帰路で改めて撮った滝動画の方が少しはましに撮れたかと思う。
上流に行こうと東屋の方を見上げると、夫婦連れのダンナだけが歩いている姿が見えた。それでいて滝に降りて来る様子はない。それきり見かけることはなく、駐車場に戻った時点で車はすでになかった。滝を見ずして何をしに来たのだろう。
(ということらしい)
(嬬恋カルタ。どうも、群馬の人たちは景勝地をカルタ文章にしたがる傾向があるようだ)
東屋に寄る。嬬恋カルタが掲示されている。<素足で遊ぶ石樋の滝>。少なくとも滝下を素足では危ないんじゃないですか。この上のナメ沢ならともかく。ここで「石樋」の説明も掲示されていた。なるほどと思っても当たり前的なことが記されているだけ。
(苔むした滝上のナメ沢)
(落ち口)
川に下り、ヘルメットをかぶり、まずは石樋の滝の落ち口を眺める。やはりそういうものかもしれないが、上から目線では、落差がさほどに感じられないが、沢水は落ち口近くになって急な流れになって落ち込んでいる。
さて、上流を見ると、ナメ床の沢がずっと続いている。説明板には250~300mとなっているが、実際に歩いてもっとあったような気がする。もっとも、写真ばかりを撮っていたから、時間は長く感じてもその程度の距離だったのかもしれない。
(ナメ床はずっと続いている。きれいに撮れないのが残念)
(小滝もアクセントで加わる)
さすがに好みのナメ。気持ちがよく、歩いていての苦痛はまったくない。ただ、難を言えば、倒木だろう。何か所かにあって、またいだり、くぐったりした。水はきれいで、流れは強い。深みもあるにはあるがあっさり避けられ、水位も基本的には膝とくるぶしの中間くらいだろう。たまに岩登りでの巻きもある。<忍>が滑りはしないかと恐る恐る登ったが、岩が乾いているためか、滑ることはなかった。この時点では、やさしい沢には問題なく使える。もっとも、難しい沢なんぞに用はないが。
結果として、この<忍>だが、このレベルの沢ではコケ、乾いた岩場には問題はなかったが、ヌメりには抜群に弱かった。ヌメった黒い石とは知らずに上に乗ったら、あっという間に滑って転倒しかけた。以降、注意して歩いたが、その事実が後々まで気になり、いくらナメでもかなり慎重な歩きになってしまった。比べれば、やはり、フェルト底の沢靴が無難かもしれない。
(きれいな流れ)
(まだまだ続く)
(大きめな段差)
(ナメは消えかけているが)
(つい見とれて先に行く)
(復活)
(自己満足だが好みだ)
(小滝も大きくなってきたが、これが「龍の壺」だろうか)
(横から)
(上から)
(まだ行ける)
(倒木が多くなり)
(この先はおもしろくもないようだ。引き返そう。ヌメりも多そうだし)
しばらくナメを楽しんだ。ちょっとした段差のある流れがあった。そこを過ぎてしばらく行くと、ナメも終わりなのか、石ゴロの沢になった。この先に行っても楽しくもないようなので引き返す。スポットの「龍の壺」は、もしかして、さっきの段差のある流れだったのだろうか。ネット情報では、ナメ床の延長上にあると記されていた。
ここで、未練もなくというか、<忍>履きのままで下るのが何となく恐い感じがあって(留めのマジックバンドは何も問題はなかった)、沢筋に通っているらしい「源流の道」で帰ろうとヤブをかき分けたが、10mも進んであきらめた。背丈の密なササヤブが続き、先を垣間見ても切れている様子は見えず、沢に引き返した。
(下りで龍の壺)
(この辺が最高だったかなぁ)
(下りで)
下りで、ようやくここが「龍の壺」だろうと確認したが、それは、上りで段差のあったところで、別に標識があるわけでもない。ネットで調べても、龍の壺は、参考にした記事にあるのみで、出所も地元の通称なのかもわからない。それはともかく、その先に、遡行時には気づかなかった「源流の道」が接しているところが見えた。<忍>にヌメリに信用できないところがずっと続いていて、ましていくらナメでも恐い思いをしたくもないことがあって、ここは源流の道、つまりは遊歩道歩きを選んだ。
(源流の道。どこまで続いているかは確認しなかったが、沢歩きの方が楽しいに決まっている。右に沢)
(木の階段で楽は楽だ)
源流の道そのものは整備されていた。これは過去完了形。階段や橋もしっかり設えてある。ただ、木も腐りかけ、滑るところもある。修繕もされている様子はない。往時に比べて、歩く人はさほどにいないのではないだろうか。
石樋の滝に寄る。若い二人連れが滝を見ていた。上に行けるのかと聞かれ、しばらくは楽しめると答えた。おそらく行ったろう。
(もう一度、石樋の滝に寄り)
(駐車場に戻る)
(楽しかった。もっとナメ床が長かったらなぁ)
駐車場に戻る。すでに暑くなっていた。車は自分のを入れて2台。二人連れの車だろう。地元ナンバーだった。出発から一時間半ののんびり歩きだった。ここに来るのに、高速利用で二時間半かけている。帰りは一般道のつもりだから、これから浅間大滝で遊んだとしても、運転タイムをオーバーすることはあるまい。<忍>を脱ぎ、スニーカーに履き替えて長野原町に向かう。幸いにも、ヤマビルにやられることはなかった。浅間大滝でも同じくだった。それ以上に、歩いているときには感じなかったが、汗は流れ落ちても暑さは感じないでいられたのが最高だった。
【魚止めの滝・浅間大滝】
車での移動にほぼ一時間要した。標高はどんどん下がり、したがって暑さも加わる。すでに30℃近くになっている。ドアを開けると同時に5、6匹のアブに襲われた。だが、おとなしいもので、払ったらすぐに飛んで行った。石樋の滝でも、今回はヤマビルも含め、害虫にうっとうしい思いをせずに済んだのは幸いだった。
魚止めの滝と浅間大滝の駐車場は同じで、車が7台ほど。浅間大滝の方から戻って来る人たちは見るからに観光客で、空身が多い。カメラを持つ人はいず、おそらくスマホで撮っているのだろう。前日に知ったことだが、浅間大滝の遊歩道は流されていたらしく、滝前に出る簡易橋も崩落していたのが、修復も最近済んだらしい。こちらには別にどういう状況であっても問題はない。
今度は今ひとつ全信頼を預けられない<忍>はやめ、フェルト底の沢タビにした。脚絆の類は出がけにどこを探しても見あたらず、石樋の滝でもそうだったが、ズボンの裾を出したままで、濡れるにまかすままになる。
(まずは魚止めの滝へ)
魚止めの滝への標識に合わせて熊川の下流に向かう坂を下る。そこで「川には入らないでください」の表示板を見たという次第。話は前後するが、魚止めの滝から浅間大滝への通し歩きについては、参考にしたいくつかのネット記事にはなかなか面白く、スリリングっぽく記されていたので、それを真似しただけのことだが、自分自身の感想を先出しすれば、大しておもしろい歩きを楽しめたわけではなかった。特にヒヤッとしたところもなく、その点では物足りないものでもあった。
(魚止めの滝。ここからでは全体像が見えず、下~中段部になる。しかし、すごい水量だ)
坂を下るとすぐに右に魚止めの滝が見えた。水量が多く、水煙が上がっている。遊歩道は川沿いにそのまま下っている。二人連れが滝を眺めて遊歩道を下って行った。それを見はからってから川に入る。滝の正面から写真を撮った。幾段もの段差のある滝で観光滝としては見応えはある。ただ、また撮影技術の言い訳に過ぎないが、光の関係で、カメラに収めると、明暗がどうしてもはっきりして、日陰のは黒く、陽のあたる本流だけが真っ白になる。どうもきれいには写せない。それはともかくとして、この位置からして、普通なら、段瀑のさらに上が気になってしょうがない。滝好きなら、さらに上に行きたくなるのが素直な気持ちだろう。
(左から上がって)
(この時点では水流が強いのできれいな流れに見えている)
(どうも明暗がはっかりし過ぎて撮れている)
水流が強いので、正面突破は流される可能性もあって、弱そうな左側から登る。コケもヌメりもなく歩きやすい。左にカーブすると、下からの視界からは見えない段瀑もまだ続く。心地よい歩きになったが、どうも気分がすっきりしない。その理由は、水が濁っていること。浅間大滝の滝つぼから続いているのか、さらに上流からなのかわからぬが、川底が見えない。見えない以上は、深みがわからないから慎重にならざるを得ない。
(この辺になると、下からでは見えない)
(魚止めの滝を登りきる)
(間もなく右上に遊歩道。幸いにだれにも見られてはいなかった)
(水の汚れ具合がわかるだろう。濁っている)
(浅間大滝の遊歩道が終わる)
(ここも流れは強い)
魚止めの滝を登り切ったようだ。川は水平になり、嫌らしくも、右側には、パイプを通した浅間大滝に続く遊歩道が見え、どこからでもそちらに上がれる景色になってしまい、これでは茶色の川を歩く物好きが見世物でかなり興ざめになった。観光客の姿が見えないのがせめてもの救いだが、これではただの川歩きと変わらず、やがて浅間大滝は見えてくる。
(浅間大滝)
(正面から。かなりの水煙)
(この位置からのがいいか)
轟音が聞こえ、浅間大滝の前に出た。ここにも二人連れ。川の中に入ってはいず、遊歩道の延長で、水に濡れないぎりぎりのところで眺めている。水しぶきがすごい。10m近くまで飛んでくる。よく見ると、滝の水も真っ白ではなく茶色が混じっている。表現はまずいが、薄汚れた滝だ。まぁ、いつもこうであるわけがなく、たまたま、こんな日もあるということなのだろうが。
この滝もまた、魚止めの滝もそうだったが、周囲の緑がかぶってしまい、ろくな写真が撮れなかった。むしろ、皮肉にもコンデジのお任せモードで撮った写真の方がきれいに写っていた。写真のことはもういい加減にやめておこう。
(あっけなく終わってしまった。暑さのピークタイムのようで、30℃は確実に超えている)
(石像がずらり)
(これだもんね)
(駐車場到着)
もういいか。魚止めの滝から遡行して浅間大滝まで来たわりには、たいした満足感もなかった。遊歩道で駐車場に向かう。かなり暑くなってきている。
駐車場の片隅にあった日陰の石に腰かけてスニーカーに履き替える。ついでに上半身だけTシャツに着替える。菓子パンを食べ、一服して帰路に就く。帰りはいつものように一般道。信号あたりが悪く、ひっきりなしにクラッチ踏みのギアチェンジをしていたら、そのうちに左膝が痛くなり、かえって悪化してしまったようだ。
(付録。浅間山)
オリンピックにはほとんど興味がない。「人類がコロナに打ち勝った証」、「夢や希望」、「世界が団結」だって? 東洋の魔女とアベベには苦笑した。バッハに踊らされた能面顔の総理大臣が吐く重みのない言葉には、この程度のものかとがっかりする。支持率低迷を挽回したい宗教団体の政党は、この時ばかりは弱者の味方のポーズでパラリンピックの有観客まで言い出している。これもまた無節操としか思えない。羽田だか成田までおっかけに行くおバカさんもいるし、中に入れるわけでもないのに、国立競技場の回りには人だかり。目に見える感染拡大の責任はだれがとるのだろう。だが、せっかくのありがたい四連休。遠出して滝見でも行きたいが、孫たちが来るのでは出かけることもできない。せいぜい、一日くらいは沢歩きをしたいと思ってはいるが。
15日の出来事だ。朝の犬散歩時のこと。途中で雨が降り出したので急ぎ足で家に戻った。玄関を前にして、ふいによろめき、左足の感覚がなくなり、前につんのめって転んでしまった。左膝を打撲。終日痛くてびっこをひいていた。階段の上り下りがつらかった。両手で手摺り頼り。骨にヒビでも入っているのではと気になったが、あいにく木曜日は病院の休診が多い。腫れはなかったので、鎮痛剤を含んで我慢していたら、翌朝は軽い痛みレベルになってほっとした。さすがに、普段1.5kmほどの散歩は1kmで終わりにした。こんなことはこれまでにも何度かあった。散歩中、突然歩けなくなり、立ったまま、時にはしゃがんだりと、足の感覚が戻るのを待つことがあった。老化現象も、とうとう頭のみならず、身体の随所に露呈化しつつあるようだ。ちなみに、後日20日に整形外科に行ったら、ただの打撲だった。それでもまだ手摺りにつかまっている。
ということで、今回は今月初の歩きになったが、梅雨の晴れ間に山歩きに出向いたら、山は雨でスゴスゴと戻って来たというのが2回あった。梅雨明け後は猛暑続きだろうと、当初から沢歩き、滝見のつもりでいた。その候補はマニアック系な嬬恋村の滝二本だったが、左膝がこのザマでは行き着けやしないだろう。予定変更で、手軽に楽しめそうな嬬恋村宇田川の石樋の滝、そして長野原町に転じて熊川の浅間大滝に行くことにした。その間に、玉だれの滝を組み込もうとしたが、沢歩きはないに等しそうなのでやめた。大沢滝はネット情報ではどうも場所がはっきりせず、中には途中のキャベツ畑に柵があって入り込めなくなってしまったような記述もあったので、これもパス。古滝は有料見物になるから論外。浅間大滝とて観光滝の典型だが、下流の魚止めの滝から通せば、少しは沢歩きも楽しめるだろう。それをやってしまった後だから敢えて記すが、現地の看板には「川には入らないでください」と注意書きがあった。
【石樋の滝】
キャベツ畑が延々と続いていた。車道沿いに柵はない。野菜泥棒も日常的に出るだろう。向かう先は東海大学嬬恋高原研修センター。ここが駐車地になる。さすがに涼しい。到着した9時の時点で19℃。センター前には標高1400mの表示板があった。関係者以外立入り禁止の構内駐車場に知らぬふりで車を置くわけにもいかず、ネット情報で確認していたこともあり、センターのフロントに行き、出されたメモ用紙に、氏名、車ナンバー、電話番号を書き込んだ。滝の入口は知らないので職員さんに教えてもらった。準備をしていると、ワンコを2匹連れた夫婦がやって来て、自分と同じように駐車を伝えに行った。ワンコ連れで散歩できる程度の遊歩道、見られる滝なのだろうか。ちょっとがっかり。
沢靴はハイパーV<忍>。去年入手し、ようやく履く機会がやってきた。効果の程の不安はある。現に普通のハイパーVソールのズックで沢歩きをして滑ったし、ズック型では小石や砂も脇から入った。滝だけ見て終わりのつもりはさらさらなく、滝の上流にナメ床の沢が続いているようで、「龍の壺」と呼ばれるスポットもあるらしい。そんなナメ沢歩きなら、岩登りもないだろうし、<忍>の試し履きにはよかろうと選んだ。初めて足を通したわけではなかったが、今日になって、留めのマジックバンドの余りが長いのが気になった。甲高者向けなのだろうか。これがすぐに外れるといったウイークポイントにならなきゃいいが。
(石樋の滝への入口)
(最初のうちは歩きやすい遊歩道)
入口はすぐにわかった。手書きの標識が置かれていた。静かな森の中の歩き。かすかに沢音が聞こえる。緩い上り気味の遊歩道。嬬恋村で5月に渓流釣りの方が熊に襲われたことを知っていたし、先日も黒保根で登山者が熊に頭をやられたばかりだ。用心してヘルメットを持参しているが、ヤブから熊が出てきてもおかしくない雰囲気なので、あわててスズだけはザックに付けた。ヘルメットは入渓してからでいいだろうが、今は普通の登山でも、ヘルメットは熊防御用には必携品かもしれない。
(この水溜りは流れている)
(石樋の滝分岐)
(東屋が見えた。滝はその手前を左に下る)
道が左右に分岐した。標識はない(確信はない)。左に行きかけたが、違う気がしたので回れ右になった。半信半疑で歩いている。そのうちに遊歩道は水が流れて沢になりかけ、大股で左右、小股でヘリ歩きになった。あのワンコ連れの夫婦はどうすんだろうと思った。2匹ともに小型犬だった。足だけではなく腹も泥んこになる。何となく、かなりのヤマビルにたかられそうな雰囲気になった。
水が消えた遊歩道に戻ったら、標識が置かれていた。やはり、こちらで正解だった。ここで道が分岐し、右が「源流の道」に続き、直進は「石樋の滝」、来た方向には「バラキ湖」とあった。いつもの方向音痴歩きでなくてほっとした。ほどなく、東屋が見え、その手前に左に下る道があり、これが滝下へのルートらしい。
(石樋の滝)
(右岸側から)
(左岸に戻って)
(上にナメが続いているのが見える。東屋に戻らずとも、簡単に左から巻いて登れそうだった)
木の階段を降りていくと、まさに石樋の滝があった。ここまで出発から15分。この限りでは観光滝かもしれない。躊躇なく滝下から川を渡って正面に出た。落差は7mほどだが、落ち込みは豪瀑の部類だろう。移動しながら写真を撮った。だが、どうしても後で結果を見ると周囲の緑が水にも濃くかぶって写っている。今日はコンデジだからといった言い訳にはならず、コンデジながらもシャッタースピードと絞りの調整は可能なカメラだ。おそらく、内心、「滝の写真を撮れればいいや」的なものがあって、それ以上のきれいさを追求する旺盛心はないようだ。我ながら、結果を見ての他人事的な感想。実は、滝よりも、その上のナメ床の沢歩きをしたいのが本望だった。滝の写真はまずいが、とはいっても、上の沢写真もまた同様だが、帰路で改めて撮った滝動画の方が少しはましに撮れたかと思う。
上流に行こうと東屋の方を見上げると、夫婦連れのダンナだけが歩いている姿が見えた。それでいて滝に降りて来る様子はない。それきり見かけることはなく、駐車場に戻った時点で車はすでになかった。滝を見ずして何をしに来たのだろう。
(ということらしい)
(嬬恋カルタ。どうも、群馬の人たちは景勝地をカルタ文章にしたがる傾向があるようだ)
東屋に寄る。嬬恋カルタが掲示されている。<素足で遊ぶ石樋の滝>。少なくとも滝下を素足では危ないんじゃないですか。この上のナメ沢ならともかく。ここで「石樋」の説明も掲示されていた。なるほどと思っても当たり前的なことが記されているだけ。
(苔むした滝上のナメ沢)
(落ち口)
川に下り、ヘルメットをかぶり、まずは石樋の滝の落ち口を眺める。やはりそういうものかもしれないが、上から目線では、落差がさほどに感じられないが、沢水は落ち口近くになって急な流れになって落ち込んでいる。
さて、上流を見ると、ナメ床の沢がずっと続いている。説明板には250~300mとなっているが、実際に歩いてもっとあったような気がする。もっとも、写真ばかりを撮っていたから、時間は長く感じてもその程度の距離だったのかもしれない。
(ナメ床はずっと続いている。きれいに撮れないのが残念)
(小滝もアクセントで加わる)
さすがに好みのナメ。気持ちがよく、歩いていての苦痛はまったくない。ただ、難を言えば、倒木だろう。何か所かにあって、またいだり、くぐったりした。水はきれいで、流れは強い。深みもあるにはあるがあっさり避けられ、水位も基本的には膝とくるぶしの中間くらいだろう。たまに岩登りでの巻きもある。<忍>が滑りはしないかと恐る恐る登ったが、岩が乾いているためか、滑ることはなかった。この時点では、やさしい沢には問題なく使える。もっとも、難しい沢なんぞに用はないが。
結果として、この<忍>だが、このレベルの沢ではコケ、乾いた岩場には問題はなかったが、ヌメりには抜群に弱かった。ヌメった黒い石とは知らずに上に乗ったら、あっという間に滑って転倒しかけた。以降、注意して歩いたが、その事実が後々まで気になり、いくらナメでもかなり慎重な歩きになってしまった。比べれば、やはり、フェルト底の沢靴が無難かもしれない。
(きれいな流れ)
(まだまだ続く)
(大きめな段差)
(ナメは消えかけているが)
(つい見とれて先に行く)
(復活)
(自己満足だが好みだ)
(小滝も大きくなってきたが、これが「龍の壺」だろうか)
(横から)
(上から)
(まだ行ける)
(倒木が多くなり)
(この先はおもしろくもないようだ。引き返そう。ヌメりも多そうだし)
しばらくナメを楽しんだ。ちょっとした段差のある流れがあった。そこを過ぎてしばらく行くと、ナメも終わりなのか、石ゴロの沢になった。この先に行っても楽しくもないようなので引き返す。スポットの「龍の壺」は、もしかして、さっきの段差のある流れだったのだろうか。ネット情報では、ナメ床の延長上にあると記されていた。
ここで、未練もなくというか、<忍>履きのままで下るのが何となく恐い感じがあって(留めのマジックバンドは何も問題はなかった)、沢筋に通っているらしい「源流の道」で帰ろうとヤブをかき分けたが、10mも進んであきらめた。背丈の密なササヤブが続き、先を垣間見ても切れている様子は見えず、沢に引き返した。
(下りで龍の壺)
(この辺が最高だったかなぁ)
(下りで)
下りで、ようやくここが「龍の壺」だろうと確認したが、それは、上りで段差のあったところで、別に標識があるわけでもない。ネットで調べても、龍の壺は、参考にした記事にあるのみで、出所も地元の通称なのかもわからない。それはともかく、その先に、遡行時には気づかなかった「源流の道」が接しているところが見えた。<忍>にヌメリに信用できないところがずっと続いていて、ましていくらナメでも恐い思いをしたくもないことがあって、ここは源流の道、つまりは遊歩道歩きを選んだ。
(源流の道。どこまで続いているかは確認しなかったが、沢歩きの方が楽しいに決まっている。右に沢)
(木の階段で楽は楽だ)
源流の道そのものは整備されていた。これは過去完了形。階段や橋もしっかり設えてある。ただ、木も腐りかけ、滑るところもある。修繕もされている様子はない。往時に比べて、歩く人はさほどにいないのではないだろうか。
石樋の滝に寄る。若い二人連れが滝を見ていた。上に行けるのかと聞かれ、しばらくは楽しめると答えた。おそらく行ったろう。
(もう一度、石樋の滝に寄り)
(駐車場に戻る)
(楽しかった。もっとナメ床が長かったらなぁ)
駐車場に戻る。すでに暑くなっていた。車は自分のを入れて2台。二人連れの車だろう。地元ナンバーだった。出発から一時間半ののんびり歩きだった。ここに来るのに、高速利用で二時間半かけている。帰りは一般道のつもりだから、これから浅間大滝で遊んだとしても、運転タイムをオーバーすることはあるまい。<忍>を脱ぎ、スニーカーに履き替えて長野原町に向かう。幸いにも、ヤマビルにやられることはなかった。浅間大滝でも同じくだった。それ以上に、歩いているときには感じなかったが、汗は流れ落ちても暑さは感じないでいられたのが最高だった。
【魚止めの滝・浅間大滝】
車での移動にほぼ一時間要した。標高はどんどん下がり、したがって暑さも加わる。すでに30℃近くになっている。ドアを開けると同時に5、6匹のアブに襲われた。だが、おとなしいもので、払ったらすぐに飛んで行った。石樋の滝でも、今回はヤマビルも含め、害虫にうっとうしい思いをせずに済んだのは幸いだった。
魚止めの滝と浅間大滝の駐車場は同じで、車が7台ほど。浅間大滝の方から戻って来る人たちは見るからに観光客で、空身が多い。カメラを持つ人はいず、おそらくスマホで撮っているのだろう。前日に知ったことだが、浅間大滝の遊歩道は流されていたらしく、滝前に出る簡易橋も崩落していたのが、修復も最近済んだらしい。こちらには別にどういう状況であっても問題はない。
今度は今ひとつ全信頼を預けられない<忍>はやめ、フェルト底の沢タビにした。脚絆の類は出がけにどこを探しても見あたらず、石樋の滝でもそうだったが、ズボンの裾を出したままで、濡れるにまかすままになる。
(まずは魚止めの滝へ)
魚止めの滝への標識に合わせて熊川の下流に向かう坂を下る。そこで「川には入らないでください」の表示板を見たという次第。話は前後するが、魚止めの滝から浅間大滝への通し歩きについては、参考にしたいくつかのネット記事にはなかなか面白く、スリリングっぽく記されていたので、それを真似しただけのことだが、自分自身の感想を先出しすれば、大しておもしろい歩きを楽しめたわけではなかった。特にヒヤッとしたところもなく、その点では物足りないものでもあった。
(魚止めの滝。ここからでは全体像が見えず、下~中段部になる。しかし、すごい水量だ)
坂を下るとすぐに右に魚止めの滝が見えた。水量が多く、水煙が上がっている。遊歩道は川沿いにそのまま下っている。二人連れが滝を眺めて遊歩道を下って行った。それを見はからってから川に入る。滝の正面から写真を撮った。幾段もの段差のある滝で観光滝としては見応えはある。ただ、また撮影技術の言い訳に過ぎないが、光の関係で、カメラに収めると、明暗がどうしてもはっきりして、日陰のは黒く、陽のあたる本流だけが真っ白になる。どうもきれいには写せない。それはともかくとして、この位置からして、普通なら、段瀑のさらに上が気になってしょうがない。滝好きなら、さらに上に行きたくなるのが素直な気持ちだろう。
(左から上がって)
(この時点では水流が強いのできれいな流れに見えている)
(どうも明暗がはっかりし過ぎて撮れている)
水流が強いので、正面突破は流される可能性もあって、弱そうな左側から登る。コケもヌメりもなく歩きやすい。左にカーブすると、下からの視界からは見えない段瀑もまだ続く。心地よい歩きになったが、どうも気分がすっきりしない。その理由は、水が濁っていること。浅間大滝の滝つぼから続いているのか、さらに上流からなのかわからぬが、川底が見えない。見えない以上は、深みがわからないから慎重にならざるを得ない。
(この辺になると、下からでは見えない)
(魚止めの滝を登りきる)
(間もなく右上に遊歩道。幸いにだれにも見られてはいなかった)
(水の汚れ具合がわかるだろう。濁っている)
(浅間大滝の遊歩道が終わる)
(ここも流れは強い)
魚止めの滝を登り切ったようだ。川は水平になり、嫌らしくも、右側には、パイプを通した浅間大滝に続く遊歩道が見え、どこからでもそちらに上がれる景色になってしまい、これでは茶色の川を歩く物好きが見世物でかなり興ざめになった。観光客の姿が見えないのがせめてもの救いだが、これではただの川歩きと変わらず、やがて浅間大滝は見えてくる。
(浅間大滝)
(正面から。かなりの水煙)
(この位置からのがいいか)
轟音が聞こえ、浅間大滝の前に出た。ここにも二人連れ。川の中に入ってはいず、遊歩道の延長で、水に濡れないぎりぎりのところで眺めている。水しぶきがすごい。10m近くまで飛んでくる。よく見ると、滝の水も真っ白ではなく茶色が混じっている。表現はまずいが、薄汚れた滝だ。まぁ、いつもこうであるわけがなく、たまたま、こんな日もあるということなのだろうが。
この滝もまた、魚止めの滝もそうだったが、周囲の緑がかぶってしまい、ろくな写真が撮れなかった。むしろ、皮肉にもコンデジのお任せモードで撮った写真の方がきれいに写っていた。写真のことはもういい加減にやめておこう。
(あっけなく終わってしまった。暑さのピークタイムのようで、30℃は確実に超えている)
(石像がずらり)
(これだもんね)
(駐車場到着)
もういいか。魚止めの滝から遡行して浅間大滝まで来たわりには、たいした満足感もなかった。遊歩道で駐車場に向かう。かなり暑くなってきている。
駐車場の片隅にあった日陰の石に腰かけてスニーカーに履き替える。ついでに上半身だけTシャツに着替える。菓子パンを食べ、一服して帰路に就く。帰りはいつものように一般道。信号あたりが悪く、ひっきりなしにクラッチ踏みのギアチェンジをしていたら、そのうちに左膝が痛くなり、かえって悪化してしまったようだ。
(付録。浅間山)
オリンピックにはほとんど興味がない。「人類がコロナに打ち勝った証」、「夢や希望」、「世界が団結」だって? 東洋の魔女とアベベには苦笑した。バッハに踊らされた能面顔の総理大臣が吐く重みのない言葉には、この程度のものかとがっかりする。支持率低迷を挽回したい宗教団体の政党は、この時ばかりは弱者の味方のポーズでパラリンピックの有観客まで言い出している。これもまた無節操としか思えない。羽田だか成田までおっかけに行くおバカさんもいるし、中に入れるわけでもないのに、国立競技場の回りには人だかり。目に見える感染拡大の責任はだれがとるのだろう。だが、せっかくのありがたい四連休。遠出して滝見でも行きたいが、孫たちが来るのでは出かけることもできない。せいぜい、一日くらいは沢歩きをしたいと思ってはいるが。